尿路感染症にょうろかんせんしょう
尿路感染症は、尿道から膀胱・尿管・腎臓へと細菌が侵入し炎症を起こす疾患です。膀胱炎や腎盂腎炎などが含まれ、排尿時の痛みや発熱、腰痛などが見られます。早期の抗菌薬治療と再発予防が重要です。
尿路感染症とは?
尿路感染症とは、尿の通り道である尿道、膀胱、尿管、腎盂などに細菌が感染して炎症を起こす疾患の総称です。感染の部位により、下部尿路感染症(主に膀胱炎や尿道炎)と上部尿路感染症(主に腎盂腎炎)に分類されます。
女性は男性に比べて尿道が短いため、細菌が膀胱へ侵入しやすく、尿路感染症にかかりやすい傾向があります。高齢者や糖尿病患者、尿路カテーテル留置者などでは重症化しやすく、特に腎盂腎炎や敗血症に進展することがあるため注意が必要です。
大半は細菌感染が原因であり、大腸菌が最も一般的な原因菌です。早期の診断と適切な抗菌薬による治療が予後を左右します。
原因
尿路感染症は、腸内細菌を中心とした細菌が尿道から逆行性に侵入し、尿路内で増殖することで発症します。解剖学的要因や基礎疾患、医療的処置が発症リスクに影響します。
主な原因菌
- 大腸菌(Escherichia coli):全体の約70〜90%を占める
- クレブシエラ属、プロテウス属、腸球菌、黄色ブドウ球菌など
- 耐性菌(ESBL産生菌、MRSA)も増加傾向
誘因・リスク因子
- 女性(尿道が短いため感染しやすい)
- 高齢者(排尿機能低下、免疫力低下)
- 妊娠(尿管の圧迫、ホルモン変化)
- 糖尿病(免疫低下、糖尿の存在)
- 尿路の形態異常(膀胱尿管逆流、結石)
- 尿路カテーテルの留置
- 不十分な排尿や便秘(尿のうっ滞)
日常生活や医療的処置が感染リスクと密接に関わっています。
症状
症状は感染の部位によって異なりますが、排尿に関する異常が共通して見られます。下部尿路感染症では膀胱や尿道に限定された症状、上部尿路感染症では全身症状が加わります。
下部尿路感染症(膀胱炎・尿道炎)
- 頻尿、排尿時痛
- 残尿感、尿意切迫感
- 尿のにごり、悪臭のある尿
- 血尿(目に見える場合もある)
- 軽度の下腹部不快感
上部尿路感染症(腎盂腎炎など)
- 高熱(38〜40℃)、悪寒、発汗
- 腰痛、側腹部痛(腎臓部位の痛み)
- 全身倦怠感、食欲不振
- 吐き気、嘔吐
- 尿の混濁、血尿
高齢者での特徴
- はっきりした症状が出にくく、発熱やせん妄、食欲低下などが主症状となることがある
部位によって治療の緊急性が異なるため、早期の判断が重要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診と身体診察:排尿時痛、発熱、腰痛などの有無
- 尿検査
- 尿中白血球(膿尿)、亜硝酸塩、尿中細菌(尿沈渣)
- 尿培養:原因菌の同定と抗菌薬感受性試験 - 血液検査(腎盂腎炎や重症例):CRP、白血球数、腎機能、血液培養
- 画像検査(再発例や重症例):腎エコー、CT、MRIで結石や膿瘍を評価
治療
- 抗菌薬の投与(内服または点滴)
- 軽症例:内服の第一世代セフェム系、ニューキノロン系など
- 重症例:点滴による第三世代セフェム系、カルバペネム系など - 水分補給:尿量を確保し、排菌を促進
- 症状に応じた対症療法:解熱剤、鎮痛薬など
注意点
- 培養結果が判明次第、抗菌薬を適切に変更する(デエスカレーション)
- カテーテル感染の場合は早期抜去が原則
治療の継続と再検査により、再発や耐性菌の予防が図られます。
予後
尿路感染症は早期に適切な治療が行われれば、多くの場合は完全に治癒します。しかし、治療が遅れると腎機能障害や敗血症といった重篤な合併症を引き起こすことがあるため、迅速な対応が求められます。
予後が良好なケース
- 単純性膀胱炎:短期間の抗菌薬治療で完全に改善
- 若年女性や健康な成人で、再発がない場合
予後に注意が必要なケース
- 腎盂腎炎や腎膿瘍への進展
- 糖尿病や高齢者における免疫力低下例
- 尿路閉塞、結石、神経因性膀胱などの基礎疾患を有する場合
- 多剤耐性菌(ESBL、MRSAなど)による感染
再発や合併症を防ぐためには、治療後の再検査や原因の除去が重要です。
予防
尿路感染症は、生活習慣や清潔習慣の工夫により予防が可能な疾患です。特に再発性尿路感染症に悩む人では、個々のリスク因子に応じた予防法が効果的です。
予防の基本
- こまめな水分摂取:尿量を増やして排菌を促進
- 排尿習慣の改善:尿意を我慢しない、残尿を避ける
- 性行為後の排尿:膀胱炎予防に効果的
- 陰部の清潔保持:過度な洗浄は避け、通気性の良い下着を使用
- 便秘の改善:膀胱周囲の圧迫を防ぐ
再発予防のために
- 再発例では泌尿器科での精密検査(膀胱尿管逆流、結石など)
- 必要に応じて抗菌薬の少量継続投与(医師の判断)
- 糖尿病、高齢者、妊婦では定期的な尿検査が重要
日常的な自己管理と医師との連携が、再発防止につながります。
関連する病気や合併症
尿路感染症は、他の疾患と密接に関連し、未治療や重症化により多彩な合併症を引き起こすことがあります。特に上部尿路感染症では、迅速な対処が生命に関わります。
合併症
- 腎盂腎炎:膀胱炎の進行により腎臓に感染が波及
- 腎膿瘍:膿が腎組織に限局してたまる
- 敗血症:菌血症から全身に炎症反応が波及
- 慢性腎不全:感染の繰り返しにより腎障害が進行
- 尿路結石:感染と結石が相互に悪化させる
関連する基礎疾患
- 糖尿病、前立腺肥大、神経因性膀胱、尿路奇形
- 多発性嚢胞腎、尿路カテーテル留置中など
これらの疾患をコントロールすることが、感染症の予防と重症化回避に重要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
厚生労働省e-ヘルスネット「尿路感染症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
日本泌尿器科学会「尿路感染症診療ガイドライン」(https://www.urol.or.jp/)
日本内科学会「内科学 第11版」
国立国際医療研究センター「感染症と腎・泌尿器科疾患」(https://www.ncgm.go.jp/)
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2026/02/19
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