唾石症だせきしょう
唾石症は、唾液をつくる唾液腺や唾液の通り道(導管)の中に「石(唾石)」ができる病気です。とくに顎の下にある顎下腺に多く、食事のたびに顎の下やほおが腫れて痛むのが特徴です。原因の石を取り除けば、多くは良好な経過が期待できます。
目次
⚫︎唾石症とは?
唾石症は、唾液腺(だえきせん:唾液をつくる組織)や、唾液が通る細い管(導管)の中に「唾石(だせき)」という石のような塊ができる病気です。イメージとしては、尿管結石や胆石に近い状態と考えるとわかりやすいです。
唾液腺には、耳の前〜ほおにある「耳下腺(じかせん)」、顎の下にある「顎下腺(がっかせん)」、舌の下にある「舌下腺(ぜっかせん)」などがあります。このうち、唾石の多くは顎下腺とその導管(ワルトン管)にできます。耳下腺にも生じることがありますが、頻度は少なめです。
唾石によって唾液の流れがせき止められると、食事のときなど唾液がたくさん出ようとするタイミングで、顎の下やほおが急に腫れて強く痛むのが典型的な症状です。
⚫︎唾石症の原因
唾石症は、1つの原因だけで起こるというより、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
唾液の成分と流れの異常
唾液にはカルシウムなどのミネラルが含まれています。唾液の流れが悪くなったり、粘り気が強くなったりすると、細菌や粘液を芯にしてカルシウムが沈着し、少しずつ石のような塊になります。顎下腺の唾液はとくに粘り気が強く、石ができやすいと言われています。
導管の炎症や狭さ
過去の炎症や生まれつきの形の違いで、導管が狭くなっていると唾液が停滞し、唾石ができやすくなります。
脱水や生活習慣
水分摂取が少ない、長時間の口呼吸、喫煙、口の中が不潔な状態が続くと、唾液の量が減ったり、性状が変わったりして唾石のリスクが上がると考えられています。
⚫︎唾石症の症状は?
典型的な症状は、「食事のときに顎の下やほおが腫れて痛い」です。
- 食事中、または食事をしようとしたときに、
片側の顎の下(顎下腺)や耳の下〜ほお(耳下腺)が急に腫れて、ズキズキした痛みが出る - しばらくすると腫れがひき、痛みもおさまるが、食事のたびに同じことを繰り返
- 舌の裏(口の底の部分)が腫れていたり、赤くなっている
- 唾液の出口から膿(うみ)が出ることがある
このような「食事のたびに繰り返す腫れと痛み」は、唾石症に特徴的で、「唾仙痛(だせんつう)」と呼ばれることもあります。
炎症(感染)が強くなると
- 発熱
- じっとしていても痛い
- 皮膚まで赤く熱をもって腫れる
といった症状が出て、口を開けにくくなることもあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、耳鼻咽喉科や歯科・口腔外科の受診を検討してください。
- 食事のたびに、片側の顎の下や耳の下が腫れて痛くなる
- 顎の下にコロコロしたしこりを触れる、押すと痛い
- 舌の裏やほおの内側が腫れて赤く、膿のようなものが出る
- 腫れと痛みが何日も続く、発熱を伴う
- 痛みで食事や水分がとりにくい
とくに
- 高熱、強い痛み、顔面の広い範囲の腫れ
- 飲み込みにくさ、息苦しさ
などがある場合は、急いで医療機関に相談することが必要です(まれですが細菌感染が広がると、重い合併症につながることがあります)
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は
- 問診(症状の出方、食事との関係など)
- 口の中や顎の下を触る診察
- 超音波検査(エコー)やX線、CTなどの画像検査
を組み合わせて行います。多くの場合、石の位置や大きさを画像で確認することができます。
治療の基本は、「唾石そのものを取り除くこと」です。小さな石であれば、マッサージや水分摂取で自然に出てくることもありますが、多くは口の中から切開して摘出したり、内視鏡(細いカメラ)を使って取り出したりします。腺の奥深くにある場合などは、唾液腺ごと摘出する手術が必要になることもあります。
⚫︎唾石症の診断
1)問診・診察
- いつから腫れや痛みがあるか
- 食事との関係(食事のたびに腫れるか)
- 片側か両側か
- 発熱の有無、膿が出るか
などを確認します。触診で顎の下や口の中を触り、硬い石を触れないかを確かめます。舌の裏やほおの内側にある唾液の出口から、唾液が出ているかどうかも重要な情報です。
2)画像検査
- 超音波検査(エコー):痛みが少なく、外来で手軽に行えるため、最初の検査としてよく使われます。石の有無や位置、周囲の炎症の程度がわかります。
- X線撮影:カルシウムを多く含む唾石はX線に写るため、顎下腺や耳下腺の導管にある石を確認できます。
- CT検査:深い位置にある唾石や、周囲の炎症の広がりを詳しく確認したいときに用います。
最近は、細い内視鏡で導管内を直接観察しながら治療もできる「唾液腺内視鏡(サイアロスコピー)」を導入している施設もあります。
3)その他の検査
発熱が強い場合や、糖尿病・免疫低下などがある場合には、血液検査で炎症の程度や全身状態を確認することがあります。
⚫︎唾石症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
水分をしっかりとる
脱水を防ぐことで、唾液の流れをよくし、石が小さい場合は自然排出を助けることがあります。
唾液を出しやすくする
すっぱいキャンディーやガム(無糖のもの)を舐めて唾液の分泌を促すようすすめられることがあります。ただし、痛みが強くなる場合は無理をしないようにします。
マッサージや温罨法(おんあんぽう)
医師・歯科医師の指導のもとで、顎の下やほおをやさしくマッサージしたり、温めたりすることで、唾液の流れを改善させることがあります。
B. 医療機関での唾石の摘出
唾石の大きさ・位置・数によって、次のような方法が選ばれます。
口の中からの切開による摘出
導管の出口近くや、舌の裏側など比較的浅いところにある唾石は、局所麻酔で口の中の粘膜を小さく切開し、唾石だけを取り出す方法がよく行われます。顎下腺の導管内の唾石の多くがこの方法で対応可能です。
唾液腺内視鏡(サイアロスコピー)による治療
細い内視鏡を導管から挿入し、カメラで内部を見ながら、専用の小さな器具で唾石を取り出す方法です。施設によって導入状況は異なりますが、唾液腺を残しながら治療できる利点があります。
C. 回復期の管理と再発予防
- 手術後は、一時的に腫れや痛みが残ることがありますが、多くは時間とともに改善します。
- 指示された期間は、強いマッサージや熱い食事・飲酒・激しい運動などを控えて、傷の回復を優先します。
⚫︎唾石症の予後
唾石を適切な方法で取り除けば、多くの方で痛みや腫れはおさまり、普段どおりの食事や生活が可能になります。顎下腺の唾石は、導管内にあるものなら口の中からの手術で治療できる場合が多く、それほど大きな手術にならないことも少なくありません。
一方で
- 治療が遅れた場合
- 何度も炎症を繰り返した場合
には、唾液腺自体にダメージが残り、慢性的な腫れや唾液分泌低下が続くこともあります。また、まれに再発する例も報告されています。
⚫︎唾石症の予防
唾石症を完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫はリスクを下げる一助になります。
- こまめな水分補給で、口の中の乾燥を防ぐ
- よく噛んで食べ、唾液の分泌を促す
- 毎日の歯磨きや定期的な歯科受診で、口腔内を清潔に保つ
- 合わない入れ歯や当たる歯を放置せず、歯科で調整してもらう
- 必要以上の飲酒や喫煙を控える
- 口の渇きが続くときは、早めに医療機関で相談する
こうした生活習慣の見直しは、唾石症だけでなく、むし歯や歯周病・口臭などの予防にもつながります。]
⚫︎唾石症に関連する病気や合併症
唾石症があると、次のような病態を合併しやすくなります。
- 急性唾液腺炎(細菌感染による腫れ・痛み・発熱)
- 膿瘍(のうよう:膿のたまり)
- 周囲の組織に炎症が広がる深頸部感染症(まれだが重症化することがある)
- 慢性的な唾液腺機能低下による口の乾き
・慢性的な唾液腺機能低下による口の乾き
また、シェーグレン症候群など唾液分泌が低下する基礎疾患を背景にもつ方では、唾石症が繰り返しやすくなることがあります。
⚫︎まとめ
唾石症は、唾液腺内や導管内にカルシウム塩が沈着して生じる結石により、唾液の流出が障害される疾患です。特に顎下腺に好発し、摂食時の唾液分泌亢進に伴う腺体の膨張と疼痛(唾液腺絞痛)を主症状とします。
導管内の閉塞が持続すると、逆行性感染による急性唾液腺炎を併発し、周囲組織への炎症波及や膿瘍形成を招くリスクがあります。画像診断(エコー、CT等)により結石の局在を特定し、保存的療法や低侵襲な唾液腺内視鏡手術、あるいは外科的摘出術を適宜選択することで根治が期待できます。
適切な口腔衛生の維持と十分な水分摂取を心がけるとともに、摂食に関連する反復性の腫脹を認める場合は、速やかに耳鼻咽喉科または口腔外科を受診してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 日本口腔外科学会「唾液腺の疾患(唾石症)」
(https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_daeki/) - 順天堂医院 耳鼻咽喉・頭頸科「唾石症」
(https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/jibi/disease/other_diseases/other_diseases07.html)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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