鼻中隔弯曲症びちゅうかくわんきょくしょう
鼻中隔弯曲症は、左右の鼻の穴を区切る「鼻中隔」が大きく曲がることで、片側の鼻づまりやいびき、においの低下などを起こす状態です。軽いゆがみは多くの人にありますが、症状が強い場合は手術(鼻中隔矯正術)で改善を目指します。
目次
⚫︎鼻中隔弯曲症とは?
鼻中隔弯曲症は、左右の鼻の通り道を分けている「鼻中隔(びちゅうかく)」という仕切りの板が、大きく片側に曲がってしまっている状態をいいます。鼻中隔は軟骨(なんこつ)と骨でできた壁で、誰でも多少の曲がりはありますが、曲がりが強いと空気の通り道が狭くなり、
- 慢性的な鼻づまり
- 口呼吸
- いびきや睡眠の質の低下
- においがわかりにくい
などの症状が出てきます。
「鼻中隔湾曲症」と表記されることもありますが、意味は同じです。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)があると、症状がさらに強く出やすくなります。
⚫︎鼻中隔弯曲症の原因
鼻中隔が曲がる理由はいくつかあります。
成長の過程でのゆがみ
顔や頭蓋骨が成長する途中で、鼻中隔の骨・軟骨と周りの骨の成長バランスがずれると、自然に曲がってしまうことがあります。多くはこのタイプで、特別な病気がなくても起こり得ます。
外傷(ケガ)
子どもの頃の転倒やスポーツ外傷、打撲などで鼻を強くぶつけると、鼻骨や鼻中隔がずれて曲がったまま固まってしまうことがあります。本人がケガを覚えていないくらい昔の外傷が原因の場合もあります。
生まれつきの形の違い
生まれつき鼻中隔がやや曲がっている場合もあります。成長とともに目立ってくることがあり、「昔から片側の鼻だけ通りが悪い」という方はここに当てはまることがあります。
⚫︎鼻中隔弯曲症の症状は?
代表的な症状は「鼻づまり」です。片側の鼻だけいつも詰まっている、横になると下側の鼻が特につまる、といった訴えが多くみられます。
その他に、次のような症状が出ることがあります。
- 口呼吸になりやすい、のどが渇きやすい
- いびきが大きい、睡眠中に息苦しさを感じる
- においがわかりにくい(嗅覚低下)
- 頭痛や顔の重い感じ
- 鼻血が出やすい
鼻中隔が強く曲がると、狭い側では空気が通りにくく、反対側では空気の流れが乱れて粘膜が乾燥し、炎症や鼻血の原因になることがあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、耳鼻咽喉科の受診を検討してください。
- 片側の鼻づまりが長期間続いている
- 市販薬や点鼻薬を使っても、すぐにつまってしまう
- いつも口で呼吸していて、のどが乾きやすい
- いびきがひどい/家族に睡眠中の無呼吸を指摘される
- 鼻づまりのせいで、仕事や勉強に集中しにくい
- 副鼻腔炎(蓄膿症)を何度も繰り返す、においが戻りにくい
片側だけの鼻づまりや、長く続くにおいの低下は、腫瘍など別の病気が隠れていることもあるため、早めのチェックが大切です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、問診と鼻の中の診察(視診)を中心に行い、必要に応じて内視鏡検査やCT検査などで詳しく鼻の形や副鼻腔の状態を確認します。
治療は、
- 薬で炎症やむくみをおさえる「保存的治療」
- 鼻中隔の曲がり自体を直す「手術治療(鼻中隔矯正術)」
の2本立てです。症状の強さや生活への影響、合併する病気の有無などを総合的に見て方針を決めます。軽いケースでは様子観察や薬だけで生活に支障がないこともありますが、強い鼻づまりや睡眠障害などがあれば、手術が検討されます。
▶︎鼻中隔弯曲症の診断
1)問診・診察
いつから鼻づまりがあるか、片側か両側か、いびきや口呼吸の有無、頭痛やにおいの低下、副鼻腔炎の既往などを確認します。また、過去の鼻のケガや手術歴、アレルギー性鼻炎の有無、内服薬(特に血液をサラサラにする薬)についてもうかがいます。
2)鼻の観察(鼻鏡・内視鏡)
鼻鏡(びきょう)や細い内視鏡を用いて、鼻中隔がどの方向にどの程度曲がっているか、どの位置で狭くなっているかを直接確認します。同時に、アレルギー性鼻炎による粘膜腫れや鼻茸(ポリープ)、副鼻腔炎の所見がないかもチェックします。
3)画像検査(必要な場合)
症状が強い場合や手術を検討するときには、CT検査で副鼻腔の状態や鼻中隔の曲がり具合を立体的に評価します。腫瘍など別の病気が疑われる場合も画像検査が重要です。
▶︎鼻中隔弯曲症の治療
A. 保存的治療(手術以外の治療)
内服薬や点鼻薬
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を合併している場合、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬、抗生物質などで炎症を抑えると、鼻づまりがある程度改善することがあります。ただし、薬では鼻中隔の曲がりそのものをまっすぐにすることはできません。
生活上の工夫
室内の加湿、禁煙、飲酒を控える、適切な体重管理、睡眠時の姿勢(横向きや、頭を少し高くして寝る)なども、症状の軽減に役立ちます。
B. 手術治療(鼻中隔矯正術)
鼻づまりが強く、薬で十分に改善しない場合や、副鼻腔炎・睡眠障害などの原因になっている場合は「鼻中隔矯正術(びちゅうかくきょうせいじゅつ)」という手術を検討します。
手術の概要
鼻の穴の中から行う手術で、顔の表面に傷はつきません。鼻中隔の粘膜をめくり、その内側にある曲がった軟骨や骨の一部を削ったり切除したりして、通り道が広くなるように整えます。必要に応じて、下鼻甲介(かびこうかい:鼻の中のひだ)を小さくする手術を同時に行うこともあります。
麻酔と入院期間
施設によって、局所麻酔+鎮静か全身麻酔で行われます。日帰り手術として行うクリニックもあれば、数日間入院して行う病院もあります。手術時間は単独なら30分前後〜1時間程度で、下鼻甲介手術などを併用するとやや長くなります。
術後の経過
術後しばらくは鼻にガーゼやスポンジを詰めるため強い鼻づまりがありますが、多くは数日〜1週間ほどで抜去され、その後少しずつ鼻の通りが良くなっていきます。出血や腫れが落ち着くまで数週間は、運動・飲酒・長風呂などを控える必要があります。
⚫︎鼻中隔弯曲症の予後
鼻中隔矯正術を行うと、多くの方で鼻づまりやいびきが改善し、睡眠の質や日中の集中力が良くなったと感じられます。薬だけでは改善しなかった慢性副鼻腔炎が、手術とあわせて治療することで落ち着くこともあります。
ただし、アレルギー体質そのものが治るわけではないため、アレルギー性鼻炎が強い方では、手術後も薬物治療や環境整備を続けることが大切です。また、加齢や体重増加など他の要因で、いびきや睡眠時無呼吸が残る場合もあります。
⚫︎鼻中隔弯曲症の予防
鼻中隔の形そのものを完全に「予防」することは難しいですが、次のポイントは症状の悪化を防ぐうえで役立ちます。
- 鼻を強くぶつけるようなスポーツやケガに注意する(ヘルメット・マウスピースなど)
- かぜやアレルギー性鼻炎を放置せず、早めに治療する
- 市販の血管収縮性点鼻薬(使うとすぐにスッと通る薬)は漫然と長期使用しない
- 禁煙と節度ある飲酒、適切な体重管理で、いびきや睡眠時無呼吸のリスクを下げる
鼻づまりが長く続いている場合、「体質だから仕方ない」と決めつけず、一度耳鼻咽喉科で構造的な問題(鼻中隔弯曲症など)がないか確認しておくと安心です。
⚫︎鼻中隔弯曲症に関連する病気や合併症
鼻中隔弯曲症は、次のような病気や状態と関連することがあります。
- アレルギー性鼻炎
- 慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
- 鼻茸(鼻ポリープ)
- 睡眠時無呼吸症候群・強いいびき
- 慢性咽頭炎(のどの乾燥・痛み)
- 鼻出血を繰り返す状態
狭い鼻の通り道は、粘膜の炎症や感染を繰り返しやすく、結果として副鼻腔炎の長期化や鼻血の増加、口呼吸によるのどのトラブルなどにつながることがあります。
⚫︎まとめ
鼻中隔弯曲症は、鼻の真ん中の仕切りが大きく曲がることで、慢性的な鼻づまりやいびき、においの低下などを起こす「鼻の形の問題」です。
軽いゆがみは誰にでもありますが、症状が強い場合には、薬だけでなく鼻中隔矯正術という手術で根本的な改善を目指すこともできます。
「片側の鼻だけいつも詰まる」「薬を続けていても良くならない」と感じたら、一度耳鼻咽喉科で詳しく診てもらうことをおすすめします。
ご自身の体質や鼻の形を知り、適切な治療と生活の工夫を行うことで、呼吸のしやすさや睡眠の質が大きく変わる可能性があります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻づまりの原因」
(https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=16 jibika.or.jp) - Ubie 病気のQ&A「鼻づまりの原因や考えられる病気として、何がありますか?」
(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/symptom/beubk0yh4y)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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