歯性上顎洞炎しせいじょうがくどうえん
歯性上顎洞炎は、虫歯や歯周病、歯の治療(根管治療・抜歯・インプラントなど)がきっかけで、上あごの奥にある「上顎洞」に炎症が起こる副鼻腔炎です。片側の頬の痛み・片側だけの鼻づまりや膿のような鼻水・口の中の違和感などが特徴で、歯科と耳鼻科が連携して原因歯の治療と副鼻腔炎の治療を行うことが大切です。
目次
⚫︎歯性上顎洞炎とは?
上顎洞(じょうがくどう)は、上あごの奥歯の上にある空洞(副鼻腔)の一つで、鼻と小さな穴でつながっています。そこに炎症が起こると上顎洞炎になり、その原因が「歯」にあるものを歯性上顎洞炎といいます。
具体的には、
- 虫歯
- 歯周病(歯槽膿漏)
- 根管治療後のトラブル
- 抜歯・インプラントなど歯科処置に伴うトラブル
などから細菌が上顎洞に入り込み、片側だけの副鼻腔炎(上顎洞炎)を起こした状態です。鼻が原因の副鼻腔炎が両側に出ることが多いのに対し、歯性上顎洞炎は原因歯と同じ側だけに炎症が起こるのが特徴です。
⚫︎歯性上顎洞炎の原因
歯性上顎洞炎は、「口の中(歯)の感染」が上顎洞に波及して起こる病気です。主な原因は次のとおりです。
虫歯(う蝕)
放置された深い虫歯で、歯の神経の先(根尖部)に膿の袋ができると、その炎症がすぐ上にある上顎洞へ広がることがあります。
歯周病(歯槽膿漏)
奥歯の周りの骨が歯周病で溶けてしまい、上顎洞の底まで炎症が及ぶと、洞内に感染が波及します。
根管治療や歯根端切除などの歯科治療
根管治療で入れた薬剤や器具が根の先から飛び出したり、根尖部に穴があいたりすると、それをきっかけに上顎洞炎になることがあります。
抜歯後・インプラント後
上顎の奥歯は上顎洞に近く、抜歯やインプラントの際に洞と口がつながる「交通路(穿孔)」ができると、口の中の細菌が上顎洞に入りやすくなります。
関与する細菌は、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、嫌気性菌(空気を嫌う菌)など、口の中にいる複数の菌が混ざった形であることが多いとされています。
⚫︎歯性上顎洞炎の症状は?
歯と上顎洞の両方に症状が出ることが多く、「歯の病気」と「副鼻腔炎」が合わさったような症状になります。代表的な症状は次のとおりです。
片側の頬(ほお)〜目の下の痛み・重さ
押すと痛い、鈍い痛みが続く、下を向くとズキっとするなど。
片側だけの鼻づまり・鼻水
原因は、歯と同じ側の鼻だけが詰まる、同じ側から膿のような鼻水が出る。
悪臭を伴う鼻水・後鼻漏
膿が混じった鼻水は独特のにおいがあり、本人や周囲が「臭い」と感じることがあります。鼻の奥からのどに流れた後鼻漏として自覚されることもあります。
歯の痛み・違和感
噛むと痛い、歯が浮いた感じがする、治療した歯の周りがじんじんする、といった症状がみられます。
⚫︎受診の目安
- 片側だけの頬〜目の下の痛み・重さが続き、同じ側の奥歯にトラブルがある
- 片側だけの水っぽい鼻水・悪臭・鼻づまりが長引いている
- 抜歯やインプラント、根管治療のあとから頬や鼻の症状が出始めた
- 副鼻腔炎の治療を受けても片側の症状だけなかなか良くならない
→ このような場合には、歯性上顎洞炎の可能性も考え、耳鼻咽喉科と歯科の両方で相談することをおすすめします。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、
- 症状の経過(歯と鼻・頬の症状の関係)
- 口の中の診察・鼻の診察
- 画像検査(レントゲン・CTなど)
を組み合わせて行います。歯科と耳鼻咽喉科が協力して診断・治療にあたることが多い病気です。
治療の基本は、
- 原因歯の治療(根管治療・外科的歯内療法・抜歯など)で「感染源」を断つ
- 抗菌薬・鼻洗浄・点鼻薬などで上顎洞炎そのものを落ち着かせる
- 必要に応じて内視鏡下副鼻腔手術(ESS)で、上顎洞内の炎症を直接処置する
という「歯」と「副鼻腔」の二方向からのアプローチです。
▶︎歯性上顎洞炎の診断
1)問診・診察
- どの歯がいつから痛いか、歯科治療歴(根管治療・抜歯・インプラントなど)
- 頬の痛み・鼻水・鼻づまり・悪臭・頭痛などの経過
- 片側か両側か
などを確認し、歯科では口の中の視診・打診(軽く叩いて痛みをみる)・歯周ポケットの測定などを行います。耳鼻咽喉科では鼻鏡・内視鏡で鼻の奥や上顎洞の出口の様子を観察します。
2)画像検査
歯科用レントゲン・デンタルCT
原因となっている歯の根の状態(根尖病巣、根の破折、治療材料の逸脱など)を確認します。
副鼻腔CT
片側の上顎洞に陰影(膿や粘膜の腫れ)がないか、歯根と上顎洞の位置関係、洞底の骨の状態などを詳しく評価します。
3)その他
- 鼻汁や膿を採取して培養し、どのような細菌が関わっているかを調べることがあります
- 慢性・再発例では、糖尿病など全身状態の評価も重要です
▶︎歯性上顎洞炎の治療
A. 原因歯の治療
歯性上顎洞炎では、「原因となっている歯の感染をきちんと治すこと」が最も重要です。
根管治療(こんかんちりょう)
歯の神経があった管をきれいに洗浄・消毒し、薬をつめ直す治療です。再根管治療や、根の先を外側から切る「歯根端切除術」などが行われることもあります。
抜歯
歯が割れている、根の先に大きな病巣がある、再治療でも感染がコントロールできない場合などは、抜歯が選択されることがあります。
B. 上顎洞炎(副鼻腔炎)への治療
抗菌薬(抗生物質)
口腔内の細菌や嫌気性菌にも効く薬を選び、十分な期間(少なくとも1〜2週間程度)内服します。
鼻洗浄・点鼻薬・ネブライザー
生理食塩水での鼻洗浄や、ステロイド点鼻薬によって粘膜の炎症を抑え、膿や分泌物を外に出しやすくします。
内視鏡下副鼻腔手術(ESS)
保存的治療や原因歯の治療だけでは改善しない難治例では、鼻から内視鏡を入れて上顎洞の入口を広げ、洞内の病的粘膜や膿を除去する手術を行うことがあります。
C. 歯科と耳鼻科の連携
近年は、「歯をなるべく残したい」という希望も踏まえ、
- まず耳鼻科でESSを行って洞の環境を整える
- 並行して、あるいはその後に歯の治療を行う
など、症例に応じた順番や組み合わせで治療することが報告されています
⚫︎歯性上顎洞炎の予後
適切な診断と治療が行われれば、多くの歯性上顎洞炎は改善し、頬の痛みや膿性鼻汁も落ち着いてきます。
ただし、
- 原因歯の感染が残っている
- 上顎洞の換気・排泄が十分に回復していない
- 糖尿病など背景の病気がうまくコントロールされていない
といった場合には、症状が再発・慢性化することがあります。
また、治療の過程で原因歯を失うこともあり、「歯を残すこと」と「副鼻腔炎を根治すること」のバランスを主治医とよく相談しながら方針を決めることが大切です。
⚫︎歯性上顎洞炎の予防
歯性上顎洞炎は、「歯の病気を早めにきちんと治療すること」でかなりの部分が予防できます。
虫歯や歯周病を放置しない
痛みが軽くても、早めに歯科を受診して治療を受けることが大切です。
上顎の奥歯の大きな治療の前後は、症状に注意
根管治療・抜歯・インプラントの後に、頬の痛みや片側の鼻症状が出てきたら、早めに歯科や耳鼻科で相談しましょう。
定期的な歯科検診・クリーニング
自覚症状がなくても、定期検診・クリーニングで虫歯や歯周病を予防・早期発見することが重要です。
鼻の慢性炎症も放置しない
慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎がある場合は、耳鼻科での継続的な治療により、上顎洞の状態を整えておくことが再発予防につながります。
⚫︎歯性上顎洞炎に関連する病気や合併症
慢性副鼻腔炎
歯性上顎洞炎が長引くと、周囲の副鼻腔にも炎症が広がり、慢性副鼻腔炎として残ることがあります。
好酸球性副鼻腔炎
もともと好酸球性副鼻腔炎があり、そこに歯の感染が加わるような複雑な症例もあります。こうした場合は再発しやすく、手術や生物学的製剤を含めた長期管理が必要です。
頬部蜂窩織炎・眼窩内合併症
炎症が頬の軟部組織(皮下組織)や眼の周囲に広がると、腫れ・強い痛み・視力障害などを起こし、入院治療が必要になることがあります。
慢性中耳炎・気管支炎など
鼻漏による咳や、耳管機能の低下から中耳炎を合併することもあります。
⚫︎まとめ
歯性上顎洞炎は、歯の病気から広がる「片側だけの上顎洞炎」で、頬の痛みや膿性鼻汁、悪臭、歯の違和感などが特徴です。
治療では、原因歯のきちんとした処置と、副鼻腔炎そのものへの治療を組み合わせることが重要で、歯科と耳鼻科の連携が欠かせません。
早期に対応すれば、多くの場合は症状の改善が期待できますが、放置すると慢性化・再発や周囲への合併症につながることがあります。
「歯と頬・鼻の症状が同じ側で続く」と感じたときは、一人で抱え込まず、早めに専門医に相談してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえる vol.13 耳鼻咽喉科・頭頸部(鼻・副鼻腔疾患/歯性上顎洞炎)
(https://www.byomie.com/products/vol13/ J-STAGE+1) - ひろた耳鼻咽喉科医院「歯性上顎洞炎」
(https://www.hirota-ent.com/fuku-biku/jougakudouen.html)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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