エンテロウイルス感染症えんてろういるすかんせんしょう
エンテロウイルス感染症は、主に夏〜秋に乳幼児を中心に流行する「夏かぜ」の一群で、発熱・のどの痛み・頭痛・発疹・口内炎など多彩な症状を起こします。多くは自然に治りますが、まれに無菌性髄膜炎や心筋炎など重い合併症を生じることがあり注意が必要です。
目次
⚫︎エンテロウイルス感染症とは?
エンテロウイルス感染症は、「エンテロウイルス属」に属するウイルスに感染することで起こる病気の総称です。エンテロウイルスには、コクサッキーウイルスA・B、エコーウイルス、エンテロウイルス71型など多くの種類があり、型によって起こす病気や症状が少しずつ異なります。
代表的な病気として、次のようなものがあります。
- 手足口病(手足や口の中に水ぶくれができる)
- ヘルパンギーナ(高熱とのどの奥の水ぶくれ)
- 無菌性髄膜炎(強い頭痛・発熱・吐き気などを起こす脳を包む膜の炎症)
- 急性出血性結膜炎(白目の出血、強い充血と目の痛み)
いわゆる「夏かぜ」の原因としてよく知られており、特に夏〜初秋に、保育園・幼稚園・小学校などで流行しやすい感染症です。
⚫︎エンテロウイルス感染症の原因
原因ウイルス
エンテロウイルスはピコルナウイルス科に属するRNAウイルスで、小さく環境にも比較的強い性質があります。ポリオウイルス、コクサッキーウイルスA・B、エコーウイルス、エンテロウイルス71型などが含まれます。
感染経路
主な感染経路は次の3つです。
- 糞口感染:便に出たウイルスが、手洗い不十分などを介して口から入る
- 飛沫感染:咳やくしゃみからのしぶき(飛沫)を吸い込む
- 接触感染:おもちゃ・ドアノブ・タオルなどについたウイルスが手を介して口や鼻に入る
流行しやすい時期と年齢
- 主に夏〜秋(4〜12月の間に多い)に流行する「夏かぜ」の一つです。
- 乳幼児〜学童期に多くみられますが、大人がかかることもあります(大人では症状が強く出ることもあります)
⚫︎エンテロウイルス感染症の症状は?
エンテロウイルスはさまざまな症状を起こすのが特徴で、同じウイルス群でも「軽い夏かぜ」から「髄膜炎」まで幅があります。
症状の「パターン」としては、次のようなものがよく見られます。
- 発熱:突然の発熱(38〜40度)が数日続くことが多い
- のどの症状:のどの痛み、咳、鼻水など「かぜ」のような症状
- 手足口病の症状:手のひら・足の裏・口の中を中心に小さな水ぶくれができる
- ヘルパンギーナの症状:高熱とのどの奥(口蓋弓〜軟口蓋)に水ぶくれ・浅い潰瘍ができ、強いのどの痛みを伴う
多くは1週間前後で自然に改善しますが、無菌性髄膜炎や心筋炎などを起こした場合には、入院して詳しい検査・治療が必要になることがあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関の受診を検討してください。
こども
- 38〜39度以上の発熱が3日以上続く
- 水分がとれず、尿の回数が少ない・口が渇いているなど脱水が心配なとき
- 頭痛・嘔吐が強く、ぐったりしている
- 光をまぶしがる、首を前に曲げると痛がる(髄膜炎のサインの一つ)
- けいれんが起きた、意識がぼんやりしている
大人
- 高熱と強い頭痛・筋肉痛が続き、仕事や家事ができない
- 足の力が入りにくい、手足の動かしにくさが出てきた(急性弛緩性麻痺が疑われる)
- 胸の痛みや息苦しさがある(心筋炎・心膜炎の可能性)
乳児・基礎疾患・免疫低下がある方
- 生後3か月未満の発熱
- 心臓病・呼吸器疾患・免疫不全疾患があり、いつもと様子が違う
こうした場合は、かかりつけ医・小児科・内科などに早めに相談してください。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
エンテロウイルス感染症は、特徴的な症状と季節、流行状況から、まずは「可能性が高い病気」として診断されることが多いです。
確定診断のためには、喉や便、髄液などからウイルスを検出する検査(PCR検査など)を行うこともありますが、一般的な軽症例では必ずしも必要とはされません。
治療は、基本的に「対症療法」といって、症状を和らげるためのケアが中心になります。現時点で、一般の患者さん向けに広く使えるエンテロウイルス専用の特効薬はありません。
⚫︎エンテロウイルス感染症の診断
1)問診・診察
いつからどのような症状が出ているか(発熱、発疹、口内炎、頭痛、吐き気など)
周囲(家庭・保育園・学校・職場)で手足口病やヘルパンギーナなどが流行していないか
ワクチン接種歴(ポリオワクチンなど)や基礎疾患の有無
2)身体所見
- 手足や口の中の発疹・水ぶくれの有無(手足口病)
- のどの奥の小さな水ぶくれや潰瘍(ヘルパンギーナ)
- 項部硬直(こうべこうちょく:首を前に曲げると痛みでつらそうな状態)など、髄膜炎のサイン
3)検査
- 血液検査:炎症の程度、脱水や他の臓器(肝臓・腎臓など)の状態を確認
- 髄液検査:無菌性髄膜炎が疑われる場合、髄液を採取して細菌がいないことを確認し、エンテロウイルスが関与しているか調べることがあります。
- PCR検査:髄液・便・咽頭ぬぐい液などからエンテロウイルスの遺伝子を調べる検査が行われることがあります(主に重症例や入院例で実施)
⚫︎エンテロウイルス感染症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 安静:無理をせず、十分な睡眠と休養をとる
- 水分補給:経口補水液や水・麦茶などでこまめに水分をとり、脱水を防ぐ
- 食事:のどや口の中が痛い場合は、刺激の少ない柔らかいものを少量ずつ摂取
B. 症状に応じた対症療法
- 解熱鎮痛薬:高熱や頭痛・筋肉痛がつらい場合に、アセトアミノフェンなどを使用します(持病や年齢によって使える薬が異なるため、自己判断での多用は避け、医師・薬剤師に相談してください)。
- 口内炎・のどの痛み:冷たい飲み物・ゼリー、アイスなどがとりやすい場合もあります。刺激物(炭酸飲料、辛いものなど)は控えます。
C. 重症例・合併症が疑われる場合
無菌性髄膜炎、心筋炎・心膜炎、急性弛緩性麻痺などが疑われる場合には、入院のうえで点滴・酸素投与・心機能のモニタリングなどが必要になります。
D. 抗菌薬(抗生物質)について
エンテロウイルスは「ウイルス」であり、細菌に効く抗菌薬は基本的に効果がありません。咽頭炎や中耳炎など、細菌の合併感染が疑われる場合にのみ、医師が必要と判断して抗菌薬を使用します。
⚫︎エンテロウイルス感染症の予後
- 多くのエンテロウイルス感染症は、1週間前後で自然に軽快します。夏かぜとして終わることがほとんどです。
- 手足口病やヘルパンギーナの場合も、発熱や痛みのピークを過ぎれば徐々に元気を取り戻していきます。
- 無菌性髄膜炎や急性弛緩性麻痺、心筋炎などを起こした場合でも、多くは適切な治療により回復しますが、まれに後遺症が残ることもあります。
一度エンテロウイルスに感染すると、その型に対しては免疫がつきやすく、同じ型での再感染は起こりにくいとされています。ただし、エンテロウイルスには多くの型があるため、「別の型」による感染は再び起こりえます。
⚫︎エンテロウイルス感染症の予防
完璧に防ぐことは難しいものの、次のような基本的な感染対策でリスクを下げることができます。
手洗い
トイレの後、おむつ替えの後、食事の前、外から帰った時は石けんと流水でしっかり手を洗う
咳エチケット
咳やくしゃみが出る時はマスクを着用し、ハンカチや袖で口と鼻をおさえる
排泄物の取り扱い
- おむつを替える際は、便に触れた後すぐに手洗いを行う
- 便の処理には使い捨て手袋を使い、ビニール袋に密閉して捨てると安心です
物の共用を避ける
コップ・スプーン・タオル・おもちゃなどの共用はできるだけ避ける
⚫︎エンテロウイルス感染症に関連する病気や合併症
エンテロウイルス感染症では、次のような病気・合併症が知られています。
- 手足口病
- ヘルパンギーナ
- 非特異的な発疹症・夏かぜ様疾患
- 無菌性髄膜炎、脳炎・脳症
- 急性出血性結膜炎
多くは自然に軽快しますが、神経系や心臓に合併症を起こした場合は、入院して慎重な経過観察が必要になります。
⚫︎まとめ
エンテロウイルス感染症は、夏期から秋期にかけて流行するウイルス性疾患の総称です。主な症状は発熱や咽頭痛、発疹、口内炎などで、多くの場合は予後良好ですが、稀に無菌性髄膜炎や心筋炎、急性弛緩性麻痺などの重篤な合併症を呈することがあります。
感染拡大を防ぐためには、手洗いや咳エチケットの徹底、特におむつ交換後の手指衛生といった日常の細かな配慮が欠かせません。
万が一、体調に異変を感じた際は速やかに医療機関を受診し、適切な診断のもとで安静に努めることが重要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 東京都感染症情報センター:エンテロウイルス感染症
(https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/epid/y2002/tbkj2307/) - 環境感染誌 総説:小児のエンテロウイルス感染症
(https://www.kankyokansen.org/journal/full/03206/032060344.pdf)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/10
- 更新日:2026/03/10
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