アデノイド増殖症あでのいどぞうしょくしょう

アデノイド増殖症は、鼻の奥にあるリンパ組織(アデノイド)が子どもを中心に大きくなり、鼻づまり・口呼吸・いびき・中耳炎・睡眠時無呼吸などを起こす病気です。多くは成長とともに自然に小さくなりますが、症状が強い場合は手術が必要になることもあります。

⚫︎アデノイド増殖症とは?

アデノイドは、鼻の奥(上咽頭〈じょういんとう〉という場所)の天井部分にあるリンパ組織で、「咽頭扁桃(いんとうへんとう)」とも呼ばれます。口を開けて見える扁桃腺(口蓋扁桃)と同じ仲間で、体内に入ってきた細菌やウイルスと戦う免疫の役割を担っています。

子どもの頃はこのアデノイドがよく発達しており、3〜6歳ごろをピークに大きくなります。通常は成長とともに次第に小さくなりますが、必要以上に大きくなり、鼻やのどの空気や耳の通り道をふさいでしまう状態を「アデノイド増殖症」といいます。

鼻づまりや口呼吸、いびき、睡眠中の無呼吸、中耳炎(じゅうじえん)や滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん:中耳に水がたまるタイプの中耳炎)などさまざまな症状の原因になります。

⚫︎アデノイド増殖症の原因

  • 成長に伴う生理的な肥大
    乳幼児〜学童期にかけて、アデノイドはもともと大きく発達します。この「年齢相応の大きさ」が、体格や骨格によっては症状の原因になることがあります。
  • 感染やアレルギーによる慢性的な刺激
    かぜや鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)などで鼻の奥に炎症がくり返し起こると、アデノイドが刺激されて腫れやすくなり、肥大が持続しやすくなります。
  • 体質・家族歴
    もともとリンパ組織が発達しやすい体質や、同じような症状を持つ家族がいる場合、アデノイドが大きくなりやすいと考えられています。
  • 環境要因
    室内の乾燥、受動喫煙(まわりの人のたばこの煙を吸ってしまうこと)、生活リズムの乱れなどは、上気道(鼻やのど)の炎症を長引かせ、アデノイドの肥大を助長する一因となります。

⚫︎アデノイド増殖症の症状は?

典型的には、次のような症状が見られます。

  • 鼻づまり
    鼻の奥がふさがるため、鼻で息をしづらくなります。特に夜や横になったときに強くなることがあります。
  • 口呼吸
    鼻で息がしにくいため、いつも口を開けて呼吸する「口呼吸」になりやすく、口の乾きや口臭の原因にもなります。
  • いびき、睡眠時無呼吸
    寝ているときの大きないびき、呼吸が止まったように見える「無呼吸」、寝相が悪い、夜中に何度も目を覚ますなどの症状が出ることがあります。小児の睡眠時無呼吸症候群(OSA)の大きな原因の一つです。
  • 鼻声(閉塞性鼻声)
    鼻の奥の通り道が狭いため、「鼻がつまったようなこもった声」になります。

⚫︎受診の目安

次のような様子が続く場合は、耳鼻咽喉科(小児の場合は小児科と連携して診ることも多いです)を受診しましょう。

  • 数か月以上、ほぼ毎晩いびきをかいている
  • 寝ているときに呼吸が止まったように見える、あえぐように息をする
  • いつも口を開けている、鼻で息がしづらそう
  • 鼻声が続いている
  • 中耳炎をくり返す、聞き返しが多い、テレビの音を大きくする
  • 日中のぼんやり、集中力低下、落ち着きのなさが気になる

とくに、「無呼吸がある」「胸やお腹を苦しそうに動かして呼吸している」「ぐったりしている」といった場合は、早めの受診が必要です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、問診と診察に加えて、鼻・のどの内視鏡検査やレントゲン検査(側面X線)、必要に応じて聴力検査・睡眠検査などを組み合わせて行います。アデノイドの大きさだけでなく、「どの程度鼻の通り道や耳管、気道をふさいでいるか」「睡眠や日常生活にどれくらい影響があるか」を総合的に評価します。

治療は、症状の重さと年齢に応じて、

  • 経過観察(成長に伴う自然な縮小を見ながら様子を見る)
  • 薬による治療(鼻炎やアレルギーのコントロールなど)
  • アデノイド切除術(手術でアデノイドを小さくする)

を組み合わせます。多くはまず保存的に治療し、睡眠時無呼吸や中耳炎のくり返しなどが強い場合に手術を検討します。

⚫︎アデノイド増殖症の診断

1)問診・診察

  • いびき・無呼吸・口呼吸・鼻づまり・聞こえにくさなどの症状の有無、期間
  • 中耳炎や副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎の既往
  • 日中の眠気や集中力・学習面の影響

などを詳しくうかがいます。

2)鼻・のどの内視鏡検査

細いカメラ(経鼻内視鏡)を鼻から入れて、鼻の奥(上咽頭)を直接観察し、アデノイドの大きさと、鼻の通り道や耳管の出口がどれくらいふさがれているかを確認します。小児でも工夫しながら短時間で行える検査です。

3)レントゲン検査(側面X線)

横からX線を撮影し、アデノイドと気道との位置関係や狭さを評価します。内視鏡が難しいお子さんでも行いやすい検査です。

4)聴力検査・鼓膜の検査

くり返す中耳炎や聞こえにくさがある場合、聴力検査や鼓膜の動きを調べる検査(ティンパノメトリーなど)を行い、滲出性中耳炎の有無と程度を確認します。

⚫︎アデノイド増殖症の治療

A. 保存的治療(まず行うこと)

  • 鼻炎・アレルギーのコントロール
    アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎がある場合は、抗アレルギー薬や点鼻ステロイド薬などで炎症を抑え、鼻の通りを改善します。
  • 生活環境の調整
    室内の加湿、禁煙(受動喫煙の回避)、規則正しい生活、適度な運動などは、上気道の炎症をおさえ、症状の軽減につながります。
  • 経過観察
    症状が軽く、日常生活や成長に大きな影響がない場合は、成長とともにアデノイドが自然に縮小することが期待できるため、定期的に様子をみながら必要に応じて治療内容を調整します。

B. アデノイド切除術(手術)

次のような場合には、アデノイドを手術で切除する「アデノイド切除術」が検討されます。

  • 強いいびきや睡眠時無呼吸があり、日中の眠気や集中力低下が目立つ
  • 滲出性中耳炎や急性中耳炎をくり返し、難聴が続いている
  • 口呼吸や鼻づまりが強く、歯並びや顔立ち、発音への影響が心配される

手術は全身麻酔で行われ、口の中からアデノイドを削るように切除するのが一般的です。通常は数日の入院で、同時に扁桃摘出術(口蓋扁桃を取る手術)を行うこともあります。術後しばらくはのどの痛みや鼻血などに注意が必要ですが、多くは経過良好で、いびきや口呼吸・中耳炎などが大きく改善します。

⚫︎アデノイド増殖症の予後

アデノイドは成長に伴って自然に小さくなることが多く、小学校高学年〜中学生ころには症状が目立たなくなるケースもよくあります。
一方で、睡眠時無呼吸や難聴、顔貌・歯並びへの影響が強い場合、放置すると学習・行動・発達面に長く影響が残ることがあります。早期に適切な治療を行えば、多くはその後の成長や日常生活に支障なく経過します。
手術を受けた場合も、術後の経過が良ければ再発は少なく、いびきや中耳炎のくり返しが改善し、睡眠の質や集中力の向上が期待できます。

⚫︎アデノイド増殖症の予防

完全に予防することは難しいものの、次のような工夫でリスクを減らしたり、症状の悪化を防いだりできます。

  • かぜや鼻炎を軽くみず、長引く鼻水・鼻づまりがあれば早めに受診する
  • アレルギー性鼻炎があれば、薬物療法や環境整備(ダニ・ほこり対策など)でコントロールする
  • うがい・手洗いを習慣にし、感染症の流行期にはマスクや咳エチケットを心がける
  • 室内を適度に加湿し、受動喫煙を避ける
  • 口呼吸を指摘された場合は、耳鼻咽喉科で原因を確認してもらう

アデノイド自体を小さくする「予防薬」はありませんが、鼻やのどの炎症を長引かせないことが大切です。

⚫︎アデノイド増殖症に関連する病気や合併症

  • 滲出性中耳炎・反復性中耳炎
    耳管の出口がふさがれやすくなることで、耳に水がたまりやすくなり、中耳炎をくり返したり、聞こえにくさが続いたりします。
  • 小児の睡眠時無呼吸症候群(OSA)
    睡眠中の無呼吸や低呼吸を起こし、日中の眠気や集中力低下、行動の問題、成長への影響などにつながることがあります。
  • アデノイド顔貌・歯列不正
    長期の口呼吸により、上顎が前に出たような顔つきや、出っ歯などの歯並びの乱れが生じることがあります。
  • 慢性副鼻腔炎・鼻閉
    鼻の奥の通りが悪いことで、慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)を合併しやすくなります。

⚫︎まとめ

アデノイド増殖症は、子どもに多い「鼻の奥の扁桃」が大きくなる病気で、鼻づまり・口呼吸・いびき・中耳炎・睡眠時無呼吸など、日常生活や成長に関わるさまざまな症状の原因になります。
多くは成長とともに自然に小さくなりますが、症状が強い場合には、薬による治療やアデノイド切除術で改善が期待できます。

「いびきが続く」「いつも口で息をしている」「聞こえにくそう」と感じたら、早めに耳鼻咽喉科でしっかり評価してもらうことが大切です。
お子さんの睡眠と呼吸の状態を気にかけ、心配な点があれば、無理をさせず専門医に相談しましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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