流行性耳下腺炎りゅうこうせいじかせんえん
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)はムンプスウイルスによる感染症で、耳の下(耳下腺)が腫れて痛むのが特徴です。多くは1週間ほどで治りますが、無菌性髄膜炎や難聴、精巣炎などの合併症に注意が必要で、ワクチンによる予防が勧められます
目次
⚫︎流行性耳下腺炎とは?
流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスが原因で起こるウイルス感染症で、一般には「おたふくかぜ」と呼ばれます。耳の前から下にかけてある「耳下腺(じかせん)」という唾液腺が腫れて、丸い顔つきになるのが典型的な姿です。
主な特徴は
- 耳の下・ほおのあたりが片側または両側で腫れて痛む
- 発熱(38度前後のことが多い)
- ものをかむときや酸っぱいものを見たときに痛みが増す
子どもに多い病気ですが、大人がかかると症状が重くなったり、精巣炎・卵巣炎などの合併症が起こりやすいことが知られています。
⚫︎流行性耳下腺炎の原因
- 原因は「ムンプスウイルス」というウイルスです
- 感染者の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)を吸い込む「飛沫感染」が主な経路です
- ウイルスが唾液に多く含まれるため、同じコップや食器、ストローの共有などからうつる「接触感染」もあります
- 潜伏期間(うつってから症状が出るまで)はおよそ2〜3週間(平均18日前後)です
耳下腺が腫れる数日前から、腫れが出てからしばらくの間は、周りへうつしやすい期間と考えられています。
⚫︎流行性耳下腺炎の症状は?
典型的には、2〜3週間の潜伏期のあと、次のような症状が出てきます。
- 発熱(38度前後のことが多い。軽い熱のこともある)
- 耳の下〜ほおの腫れと痛み(片側だけで始まり、数日遅れて反対側も腫れることがあります)
- ものをかむとき、酸っぱい食べ物や飲み物を見たり飲んだりしたときの痛みの増強
- 頭痛、だるさ、食欲低下
注意ポイント
- 必ずしも両側が同時に腫れるとは限らず、「片側だけ腫れている」こともあります
- 耳下腺の腫れがはっきりしない、あるいはごく軽く、気づかれないまま経過する場合もあります
- 頭痛や吐き気・嘔吐を強く伴う場合は、無菌性髄膜炎など脳や髄膜の合併症を起こしている可能性があり、早めの受診が必要です
大人では、耳下腺の腫れにくわえて、男性では精巣炎(睾丸の腫れと痛み)、女性では卵巣炎(下腹部痛)などが出ることもあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、医療機関の受診を検討してください。
- 耳の下〜ほおの腫れと痛み、発熱があり、数日たってもよくならない
- 片側だけだった耳下腺の腫れが、反対側にも広がってきた
- 頭痛や吐き気・嘔吐が強い、首を動かすと痛い、光をまぶしがる(髄膜炎が心配な症状)
- 男の子・男性で、睾丸が腫れて強く痛む
- 強い腹痛や持続する吐き気がある
→ 子どもは小児科、大人は一般内科、症状によっては耳鼻咽喉科などが相談先となります。
→ 夜間や休日に上記のような強い症状が出た場合は、救急外来の受診も検討してください。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、耳の下の腫れ方や痛み、発熱、周囲の流行状況やワクチン歴といった問診・診察を中心に行います。必要に応じて血液検査やウイルス検査を行い、他の病気との区別をつけます。
治療は、基本的に「対症療法(症状をやわらげる治療)」が中心です。ムンプスウイルスに特効薬はなく、体の免疫がウイルスを退治するのを待ちながら、痛みや発熱を和らげ、脱水にならないようにすることが大切です。
吐き気・強い頭痛・意識の変化、精巣や腹部の強い痛みなどがある場合は、合併症を疑って入院治療が必要になることもあります。
⚫︎流行性耳下腺炎の診断
1)問診・診察
- いつからどのように耳の下が腫れてきたか(片側か両側か、痛みの程度)
- 発熱、頭痛、吐き気、腹痛、睾丸の痛みなど、他の症状の有無
- 保育園・学校・職場などでの流行状況
- おたふくかぜワクチンの接種歴
これらを総合して、流行性耳下腺炎が疑われるかどうかを判断します。
2)血液検査・ウイルス検査
- 炎症の程度や脱水の有無を確認するために血液検査を行うことがあります
- 必要に応じてムンプスウイルスに対する抗体検査や、唾液・咽頭ぬぐい液を用いた検査が行われることもあります
3)合併症の評価
- 強い頭痛や嘔吐がある場合は、無菌性髄膜炎の有無を評価します
- 男性で精巣痛が強い場合は精巣炎、強い腹痛がある場合は膵炎などを確認するため、血液検査や超音波検査を行うことがあります
⚫︎流行性耳下腺炎の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 安静と休養:発熱や痛みが強い間は、無理をせず自宅で静かに過ごします
- 水分・栄養補給:水分をこまめにとり、食欲がない場合はゼリー飲料やスープなど、取りやすいものを少量ずつ摂取します
- 痛み・発熱への対処:医師や薬剤師の指示に従って、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を使用します
- 耳下腺の痛み:冷たいタオルをあてると楽になることがありますが、冷やしすぎはかえって不快になることもあるため、加減を見ながら行います
B. 合併症リスクがある場合の医療介入(重症度対応)
- 無菌性髄膜炎が疑われる場合(激しい頭痛、繰り返す嘔吐、光をまぶしがる、首が痛くて動かしにくいなど)は、入院して点滴や必要な検査・治療を行うことがあります
- 精巣炎や卵巣炎が強い場合は、痛み止めや安静、場合によっては入院での管理が必要です
- 膵炎など他の臓器の合併症が疑われるときも、入院して慎重に経過をみます
C. 回復期の生活
- 熱や強い痛みが治まっても、しばらくは無理な運動を避け、体力回復を優先しましょう
- 合併症があった場合は、医師の指示に従って、学校・仕事・運動再開のタイミングを決めていきます
⚫︎流行性耳下腺炎の予後
- 多くの場合、耳下腺の腫れは1週間ほどで引き、発熱も数日で落ち着きます。一般的には予後は良好です
- 耳下腺の腫れやだるさがしばらく残ることがありますが、時間とともに軽快していきます
一方で、以下のような合併症が起こることがあり、その一部は後遺症を残すことがあります。
- 無菌性髄膜炎:多くは後遺症なく治りますが、入院が必要になることがあります
- ムンプス難聴:患者の約0.1〜1%にみられるとされ、片耳の高度な難聴が突然起こることがあります。小児では気づくのが遅れることもあり注意が必要です
⚫︎流行性耳下腺炎の予防
ワクチンによる予防
- 流行性耳下腺炎は、ムンプスワクチン(単独)または麻疹・風疹などとの混合ワクチンで予防することができます
- 日本ではおたふくかぜワクチンは任意接種(希望者が自費で接種)ですが、合併症や難聴のリスクを減らすため、1〜2回の接種が推奨されています。
- 2回接種することで、より高い予防効果が期待できます
日常生活での感染対策
- 体調不良時は無理をせず、登園・登校や仕事を休むことを検討します
- 咳やくしゃみが出るときは、マスク着用や咳エチケットを守ります
- コップや食器、タオルなどの共有を避け、こまめな手洗いを心がけることは、他の感染症の予防にもなります
家族や周囲の人のワクチン接種
- ワクチン未接種や接種歴が不明の家族が多いと、家庭内での流行を起こしやすくなります
- 母子手帳や予防接種記録を確認し、不足があればかかりつけ医に相談するとよいでしょう
⚫︎流行性耳下腺炎に関連する病気や合併症
無菌性髄膜炎
頭痛や発熱、吐き気・嘔吐を伴う髄膜の炎症で、流行性耳下腺炎の合併症として比較的多くみられます。多くは後遺症なく回復しますが、入院が必要なことが多い病気です。
ムンプス難聴(感音性難聴)
耳の奥(内耳)の障害によって起こる難聴で、片耳だけ聞こえにくくなったり、まれに両耳に高度な難聴が生じることがあります。発症頻度は高くありませんが、後遺症として残るため注意が必要です。
精巣炎・卵巣炎
思春期以降の男性では精巣炎、女性では卵巣炎を起こすことがあり、睾丸や下腹部の強い痛みや腫れを伴います。
膵炎
上腹部の強い痛みや吐き気・嘔吐を伴う膵臓の炎症です。入院治療が必要になることがあります。
⚫︎まとめ
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、耳の下が腫れて痛むウイルス性の病気で、多くは1週間ほどで自然に治ります。
一方で、無菌性髄膜炎や難聴、精巣炎・卵巣炎などの合併症が起こることもあるため、強い頭痛や吐き気、耳が聞こえにくいなど「いつもと違う」症状があれば早めの受診が大切です。
ムンプスワクチンは任意接種ですが、合併症や難聴のリスクを減らすうえで重要な予防手段です。
接種歴があいまいな場合や、ワクチンについて不安がある場合は、かかりつけ医と相談しながら方針を決めていきましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 国立感染症研究所 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
(https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ra/mumps/010/mumps.html) - 兵庫県小児科医会 おたふくかぜと難聴
(https://hyogo-pa.org/survey/mumps/)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/10
- 更新日:2026/03/10
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