多発性筋炎(PM)たはつせいきんえん

多発性筋炎(PM)は、自己免疫の異常により主に肩や太ももなどの筋肉に炎症が起こり、力が入りづらくなる病気です。階段の上り下りや立ち上がりがつらくなり、間質性肺炎などの合併もあるため、早期診断とステロイド・免疫抑制薬、リハビリによる治療が大切です。

⚫︎多発性筋炎(PM)とは

多発性筋炎(polymyositis:PM)は、「筋炎(きんえん)」と呼ばれる病気の一種で、主に手足や体幹の筋肉に原因不明の炎症が起こり、筋力低下や筋肉痛を生じる自己免疫性の病気です。
特徴的な皮膚症状を伴わないタイプを「多発性筋炎」と呼び、ヘリオトロープ疹やゴットロン丘疹などの皮疹を伴う場合は「皮膚筋炎(DM)」と区別されますが、どちらも筋肉や肺など全身に炎症を起こす「特発性炎症性筋疾患」に含まれます。

⚫︎多発性筋炎(PM)の原因

  • 自己免疫の異常
    本来、ウイルスや細菌から体を守る免疫が、筋肉(骨格筋)を誤って攻撃してしまい、筋線維の中(筋肉の細胞の周り)にリンパ球などの炎症細胞が集まることが主な原因と考えられています。
  • 遺伝・環境要因
    特定の家族に多発することはまれですが、遺伝的な「なりやすさ」に、感染症、紫外線、喫煙、一部の薬剤などの環境要因が重なって発症すると考えられています。
  • 関連する自己抗体
    血液検査で「筋炎特異的自己抗体」と呼ばれる抗Jo-1抗体などが見つかることがあり、間質性肺炎を合併しやすいタイプ(抗ARS抗体症候群)や、重症化しやすいタイプなど、抗体の種類によって病気の特徴が異なることが分かってきています。

⚫︎多発性筋炎(PM)の症状は?

  • 筋力低下(特に「近位筋」の筋力低下)
    肩・上腕・太もも・お尻など、体の中心に近い筋肉に力が入りづらくなります。階段を上がる・しゃがんだ姿勢から立ち上がる・重い物を持ち上げる・洗濯物を干すなどの日常動作が徐々に困難になります。
  • 筋肉痛・こわばり
    筋肉を使ったあとに強い筋肉痛が続いたり、朝に体が重い・動かしにくいと感じることがあります。
  • 全身症状
    発熱・倦怠感・体重減少・関節痛など、風邪や他の膠原病に似た症状をともなうこともあります。

⚫︎受診の目安

次のような症状が続く場合は、早めに内科・膠原病内科・リウマチ科・神経内科などを受診してください。

  • 数週間〜数か月かけて、階段昇降や椅子からの立ち上がりがつらくなってきた
  • 腕が上がりにくく、洗髪や高い所の物を取るのが難しくなってきた
  • 原因不明の筋肉痛や強いだるさが続き、休んでもよくならない
  • 咳や息切れが続き、少し動いただけでも苦しい
  • 飲み込みにくさ、むせ、体重減少が目立つ

「年齢のせい」「運動不足」と思って様子を見ているうちに進行することがあるため、日常生活に支障を感じる筋力低下が続く場合は、我慢せず相談しましょう。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、症状や診察所見に加え、血液検査・筋電図・MRI・筋生検(筋肉の一部を採取して顕微鏡で確認する検査)などを組み合わせて行います。

治療の基本は、炎症を抑えるためのステロイド薬を中心に、必要に応じて免疫抑制薬や生物学的製剤を併用し、筋力を保つためのリハビリテーションを行うことです。間質性肺炎や嚥下障害などを合併している場合は、より強力で素早い治療が必要になることがあります。

⚫︎多発性筋炎(PM)の診断

  1. 問診・身体診察
    筋力低下の始まり方・進行速度・どの筋肉が弱いか、筋肉痛の有無、発熱・関節痛・皮疹・咳・息切れ・嚥下障害などの有無を詳しく伺い、筋力テストや反射、歩行・立ち上がり動作を実際に確認します。
  2. 血液検査
    筋酵素:クレアチンキナーゼ(CK)、AST/ALT、LDH、アルドラーゼなどの上昇
    自己抗体:抗Jo-1抗体などの抗ARS抗体、その他の筋炎関連自己抗体(抗SRP抗体、抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体など)が陽性になることがあります。これらは病型や合併症の予測に役立ちます。
  3. 筋電図・筋MRI・筋生検
    筋電図で筋原性変化(筋そのものの異常)を確認し、MRIで炎症の強い部位を特定します。必要に応じて筋生検を行い、筋線維の破壊や炎症細胞の集まり方などから診断を確定します。
  4. 合併症・関連疾患の評価
    胸部CTや肺機能検査で間質性肺炎の有無を調べ、悪性腫瘍の合併が疑われる場合は、年齢や症状に応じて腹部エコー・CT・内視鏡などの精査を行います。PM/DMでは悪性腫瘍の合併が一般の人より高いとされ、初期評価と経過中の定期的なチェックが推奨されています。

⚫︎多発性筋炎(PM)の治療

A. ステロイド療法(第一選択)

プレドニゾロンなどのステロイド薬を比較的高用量から開始し、筋力・CK値の改善をみながら数か月かけて減量します。嚥下障害や急速進行性間質性肺炎がある場合は、パルス療法(点滴での大量投与)を含め、早期に強力な治療が必要です。

B. 免疫抑制薬・生物学的製剤

アザチオプリン・タクロリムス・シクロホスファミド・ミコフェノール酸モフェチルなどをステロイドと併用し、再燃予防やステロイド量の軽減を図ります。
難治性の症例では、リツキシマブ(B細胞を標的とする生物学的製剤)や免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)が検討されることもあります

C. リハビリテーション・支持療法

筋力低下がある場合、安静にしすぎるとかえって筋力が落ちてしまうため、病状に合わせたリハビリ(ストレッチ・筋力トレーニング・呼吸リハビリ)が重要です。嚥下障害がある場合は、食形態の工夫や嚥下訓練、誤嚥予防も行います。

⚫︎多発性筋炎(PM)の予後

治療法の進歩により、PM/DM全体の5年生存率はおおむね80%前後とされていますが、初発時に急速進行性間質性肺炎や重篤な心肺合併症、悪性腫瘍を合併している場合は予後が悪くなることがあります。

一方で、早期に診断し適切なステロイド・免疫抑制療法を行い、筋力が回復すると、日常生活や仕事に復帰できる例も少なくありません。ただし、寛解後も筋力低下が残ることや、薬を減らした時期に再発することがあるため、長期的なフォローアップが必要です。

⚫︎多発性筋炎(PM)の予防

発症を完全に防ぐ方法はありません。
自己免疫の異常が背景にあるため、「これをすれば必ず防げる」という方法は現時点では分かっていません。

再燃や合併症を防ぐために、

  • 感染症予防(手洗い・うがい・ワクチン接種の相談)、過度な紫外線・喫煙の回避、適切な休養と栄養、ストレスをためすぎない生活が大切です。
  • 薬の自己中断を避ける
    症状が落ち着いても、自己判断でステロイドや免疫抑制薬を急に中止すると、再燃や急激な悪化につながることがあります。減量や中止のタイミングは、必ず主治医と相談しましょう。

⚫︎多発性筋炎(PM)に関連する病気や合併症

  • 間質性肺炎
    PM/DMの約40%前後に合併し、予後を大きく左右します。急速に進行すると重い呼吸不全に至ることもあるため、咳や息切れがあれば早期に評価と治療が必要です。
  • 悪性腫瘍の合併
    特に皮膚筋炎で多いとされますが、多発性筋炎でも悪性腫瘍(肺がん、消化管がん、婦人科がんなど)を合併することがあり、年齢や症状に応じたがん検診が推奨されます
  • 心筋炎・伝導障害
    心筋や心臓の電気の通り道が障害されると、不整脈や心不全の原因となることがあります。動悸・息切れ・失神などがあれば心電図や心エコーでの評価が必要です。
  • 嚥下障害・誤嚥性肺炎
    咽頭の筋力低下により、むせ込みやすくなり、食べ物や唾液が気管に入って肺炎を起こすことがあります。嚥下訓練や食事形態の調整が重要です。

⚫︎受診の目安(まとめ)

多発性筋炎(PM)は、主に肩や太ももなどの筋肉が徐々に弱くなる自己免疫性の筋肉の病気です。
階段昇降や立ち上がり、洗髪など身近な動作の「やりにくさ」が最初のサインになることが多く、見過ごされがちです。

間質性肺炎や嚥下障害・悪性腫瘍などの合併を早く見つけ、ステロイドや免疫抑制薬・リハビリテーションを適切に行うことで、多くの方が日常生活を維持することができます。
「最近、筋力が落ちた気がする」「息切れやむせが増えた」と感じたら、早めに受診して原因を確認することが安心につながります。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/09
  • 更新日:2026/03/09

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