脊椎関節炎(SpA)せきついかんせつえん
脊椎関節炎は、背骨や骨盤の関節(仙腸関節)を中心に炎症が起こるリウマチ性疾患のグループです。若年〜中年に多く、じっとしていると悪化し動くと少し楽になる「炎症性腰痛」が特徴で、早期からの専門的な治療で進行や変形を抑えることが重要です。
目次
⚫︎脊椎関節炎(SpA)とは
脊椎関節炎は、背骨(脊椎)や骨盤の関節(仙腸関節)などの「体幹の関節」に炎症が起こる病気のグループ名です。関節リウマチのように手の小さな関節から始まるのではなく、腰・背中・お尻の痛みから始まることが多い点が特徴です。
具体的には、
- 強直性脊椎炎
- 乾癬性関節炎
- 反応性関節炎
- 炎症性腸疾患に関連する関節炎
などが含まれます。また、背骨中心の「体軸性脊椎関節炎」と、手足の関節や腱付着部が中心の「末梢性脊椎関節炎」に大きく分けられます。
⚫︎脊椎関節炎の原因
- 免疫の異常(自己炎症・自己免疫)
本来は外敵から体を守る免疫や炎症の仕組みが、自分の関節や靱帯の付着部を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。 - 体質(遺伝的要因)
ヒト白血球抗原(HLA)の一つである「HLA-B27」との関連がよく知られています。日本人ではHLA-B27自体を持つ人が少ないため患者数も少ないですが、欧米ではより頻度が高い病気です。 - 感染や環境要因
腸や尿路の感染症・腸内環境の乱れ・喫煙などが、発症や悪化の一因となる可能性が指摘されていますが、「これをしたから必ず発症する」という明確な原因は分かっていません。
⚫︎脊椎関節炎の症状は?
- 炎症性腰痛・背部痛
安静にしても楽にならず、夜〜明け方に痛みで目が覚める、朝起きたときに腰や背中がこわばる、動き出すと少しずつ楽になる、といった特徴的な「炎症性腰痛」がみられます。 - お尻の痛み(仙腸関節炎)
片側もしくは両側のお尻の奥が痛み、長時間座る・立つ・寝返りなどで悪化することがあります。 - 四肢の関節炎
膝・足首・股関節・肩など大きな関節、あるいは足の指の付け根などが腫れて痛み、歩きにくい・しゃがみにくいなどの症状が出ます。 - 腱付着部炎・指全体の腫れ
アキレス腱や足裏、膝周囲など「腱が骨につくところ」に痛みや圧痛が出やすく、指全体がソーセージのように腫れる「ダクチリティス」がみられることもあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、整形外科・リウマチ科・膠原病内科などの受診をおすすめします。
- 3か月以上続く腰痛・お尻の痛みがあり、安静よりも運動で楽になる
- 朝30分以上続く腰や背中のこわばりがある
- 若い頃から原因不明の腰痛が続いている
- 腰痛に加えて、膝・足首・かかとなどに腫れや痛みが出ている
- 乾癬・炎症性腸疾患・ぶどう膜炎があり、腰痛や関節痛も気になる
とくに、痛みで夜眠れない・発熱を伴う・視力低下や強い眼痛がある場合は、早めの受診が重要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、症状の出方・年齢・経過、身体診察、血液検査、画像検査(X線・MRI)などを組み合わせて行います。「これだけで確定」という検査はなく、総合的な判断が必要です。
治療は、
- 痛みと炎症を抑える
- 背骨や関節の変形・強直(固まって動かなくなること)を防ぐ
- 日常生活や仕事・学業をできるだけ維持する
ことを目標に、薬物療法とリハビリテーション(運動療法)を組み合わせて行います。
⚫︎脊椎関節炎の診断
- 問診・診察
腰痛の始まり方・続いている期間・1日の中での変化、安静と運動での痛みの違い、関節痛の部位、乾癬・腸の病気・眼の炎症の有無、家族歴などを詳しくうかがいます。 - 血液検査
炎症反応(CRP・赤沈)、HLA-B27の有無、貧血の有無などを確認します。関節リウマチに特徴的なリウマトイド因子や抗CCP抗体は通常陰性です。 - 画像検査
X線やMRIで、仙腸関節や脊椎、付着部に炎症や骨の変化がないかを調べます。X線で変化が乏しくても、MRIで早期の炎症が見つかることがあります。 - 分類基準
ASAS分類などの国際的な基準を参考に、「体軸性(axSpA)」「末梢性(pSpA)」などのタイプを判断し、治療方針に役立てます。
⚫︎脊椎関節炎の治療
A. 基本となる治療方針
炎症をしっかり抑えつつ、背骨と関節の動きを保つ
薬の副作用や合併症をチェックしながら、長期的にコントロールする
B. 薬物療法
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
痛みと炎症を抑える第一選択薬です。長期使用では胃腸・腎臓への影響に注意が必要です。 - csDMARDs(従来型抗リウマチ薬)
スルファサラジンやメトトレキサートなどは、末梢関節炎や乾癬性関節炎に対して用いられます。 - 生物学的製剤・JAK阻害薬
TNF阻害薬、IL-17阻害薬、JAK阻害薬などが、NSAIDsで不十分な場合に用いられます。強直性脊椎炎や乾癬性関節炎に対する適応が広がり、症状と画像所見の改善が期待できます。 - ステロイド
局所の関節注射として使われることがありますが、内服は長期連用を避け、必要最小限にとどめます。
C. リハビリテーション・生活指導
- 背筋を伸ばすストレッチや呼吸訓練などで、姿勢と胸郭の動きを保つ
- 適度な運動(ウォーキング・水中運動など)で筋力と柔軟性を維持
- 禁煙は病状の進行を抑えるうえで重要
⚫︎脊椎関節炎の予後
早期から診断され、適切な薬物療法とリハビリを行えば、仕事や日常生活を続けながら病気と付き合っていける方が多くなっています。生物学的製剤の登場により、背骨の変形や強直を抑えられる可能性も高まっています。
一方で、診断が遅れたり治療が不十分だったりすると、背骨が少しずつ硬くなり、前かがみの姿勢から伸ばしにくくなったり、骨がもろくなって骨折しやすくなったりするリスクがあります。日本では診断まで平均で数年以上かかるとの報告もあり、早期の気づきが重要です。
⚫︎脊椎関節炎の予防
発症そのものを完全に防ぐ方法はありません。
遺伝的要因や免疫の異常が関わるため、「これをすればかからない」というはっきりした予防法はありません。
悪化・進行を防ぐために、禁煙、適切な体重管理、定期的な運動、主治医の指示どおりの服薬が、病状の進行を抑えるうえで大切です。
早期発見が最大の予防策となります。
慢性的な腰痛やお尻の痛みを「年のせい」「姿勢のせい」と決めつけず、「炎症性腰痛」の特徴にあてはまるようであれば、早めに専門医に相談することが、将来の変形や障害を防ぐ一番の近道です。
⚫︎脊椎関節炎に関連する病気や合併症
体軸性脊椎関節炎の代表で、仙腸関節から腰椎・胸椎・頸椎へ炎症が広がり、背骨が硬くなる病気です。
- 乾癬性関節炎
乾癬(皮膚)と関節炎が組み合わさった病気で、脊椎関節炎の一型です。 - 炎症性腸疾患関連関節炎
潰瘍性大腸炎やクローン病に関節炎が合併するタイプです。 - ぶどう膜炎
目の中の炎症で、放置すると視力低下につながることがあります。繰り返す場合は脊椎関節炎の検索が行われることもあります。
⚫︎受診の目安(まとめ)
脊椎関節炎は、背骨や骨盤の関節を中心に炎症が起こるリウマチ性疾患のグループで、「炎症性腰痛」が大きな特徴です。進行すると姿勢の障害や日常生活への大きな影響が出る可能性がありますが、早期からの診断と治療により、仕事や趣味を続けながら病気と付き合っていけることが増えています。
現在は、NSAIDsだけでなく、生物学的製剤やJAK阻害薬など治療の選択肢も広がっており、一人ひとりの状態に合わせた治療が可能です。「年のせいの腰痛」と決めつけず、気になる症状が続くときは、早めに専門医に相談していただくことをおすすめします。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 一般社団法人 日本リウマチ学会「脊椎関節炎(SpA)」
(https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/sekitsuikansetsuen/) - 大阪大学医学部附属病院 免疫・膠原病内科「脊椎関節炎の分類」
(https://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu03-1.html)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/02
- 更新日:2026/03/09
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