アトピー性皮膚炎あとぴーせいひふえん

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下や体質、環境要因などが重なって起こる、かゆみの強い慢性の湿疹です。年齢ごとに出やすい場所が変わり、保湿と外用薬など継続的な治療で多くはコントロールが可能です。

⚫︎アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎は、「かゆみのある湿疹(しっしん)」が良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性的な皮膚の病気です。湿疹とは、赤み・ぶつぶつ・水ぶくれ・かさぶた・皮むけなど、さまざまな皮膚トラブルが混ざった状態を指します。
患者さんの多くは、アトピー素因(家族にぜんそく・花粉症・アトピー性皮膚炎がいる、アレルギーに関係するIgE〔アイジーイー〕抗体を作りやすい体質)を持ちますが、必ずしも「食物アレルギーそのもの」が原因とは限りません。

皮膚のバリア機能(外からの刺激や菌を防ぎ、中の水分を保つ働き)が弱くなり、乾燥しやすくなることで、汗・ほこり・衣類のこすれ・ストレスなどの刺激に反応しやすくなります。その結果、かゆみを伴う湿疹が、年齢により特徴的な場所に左右対称に出るのが典型的です。

⚫︎アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、1つの原因だけで起こる病気ではありません。次のような要因が複雑に重なって発症・悪化すると考えられています。

体質・遺伝的要因

アトピー素因がある方は、皮膚のバリア機能を支えるたんぱく質(例:フィラグリン)や脂質(セラミド)などが少なく、もともと乾燥しやすい傾向があります。

皮膚のバリア機能の低下

肌の表面の「角層」が荒れてスキマが増えると、水分が逃げやすくなり、外からの刺激やアレルゲン(ダニ・ハウスダスト・花粉・動物の毛、洗剤など)が皮膚の中に入り込みやすくなります。

免疫(アレルギー)反応のかたより

本来は外敵から体を守るはずの免疫が過剰に反応し、かゆみや炎症を引き起こします。アレルギー反応によるものだけでなく、非アレルギー性の炎症も関わっていると考えられています。

環境・生活習慣の影響

乾燥した季節(冬〜春)、汗をかきやすい時期(夏)、ダニやほこり、ストレス、睡眠不足、こすれの強い衣服、強い洗浄力の石けん・ボディソープなどが悪化要因になります。

⚫︎アトピー性皮膚炎の症状は?

典型的には、次のような症状がみられます。

かゆみ

もっともつらい症状で、掻いても掻いても止まらないことがあります。夜間に強くなり、眠れない・途中で何度も目が覚めるなど、生活の質(QOL)に大きく影響します。

湿疹(赤み・ぶつぶつ・じゅくじゅく・かさぶた)

急に悪くなった部分は赤く腫れ、小さな水ぶくれやじゅくじゅく(滲出液)が出て、かさぶたになります。かきこわしでミミズ腫れのような傷ができることもあります。

皮膚の乾燥・ごわつき

全身にわたりカサカサし、白い粉をふいたようになることがあります。長く炎症が続くと、皮膚がごわごわと厚く硬くなり、皮膚のスジ(皮溝)がくっきり目立つ「苔癬化」という状態になります。

年齢による好発部位の違い

乳児期

頭や顔(ほほ・あご)から始まり、体や手足に広がることがあります。
 幼児〜学童期:首、ひじ・ひざの裏側、手首・足首など関節の内側に出やすくなります。

思春期〜成人期

顔・首・胸・背中など上半身に強く、手・足の湿疹や乾燥も目立ちます。

⚫︎受診の目安

  • 強いかゆみで眠れない
  • イライラする
  • 仕事や勉強に集中できない

そういう場合は生活への影響が大きいため、我慢せず医療機関の受診を検討してください。顔やまぶた、首、陰部など皮膚が薄くデリケートな部位は、薬の選び方が難しい場所です。自己判断で市販薬を塗り続けるより、早めに皮膚科で相談しましょう。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、皮膚の状態・かゆみ・経過・家族歴などを詳しく聞き、皮膚の診察を行った上で、「アトピー性皮膚炎に特徴的な湿疹が、慢性的に繰り返しているか」を総合的に判断します。必要に応じて、血液検査やアレルギー検査を追加します。

治療の基本は、

  • 毎日のスキンケア(保湿と皮膚を傷つけない洗い方)
  • 炎症をしずめる外用薬(ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、JAK阻害薬外用など)
  • かゆみや炎症を抑える内服薬や注射薬(必要時)

を組み合わせ、症状の強さに応じて使い分けていきます。

⚫︎アトピー性皮膚炎の診断

1)問診・診察

いつ頃から、どの部位に、どのような湿疹が出ているか、良くなったり悪くなったりを繰り返しているか、かゆみで睡眠や生活にどの程度影響があるかを詳しくうかがいます。また、ご家族のアレルギー歴(ぜんそく・花粉症・アトピー性皮膚炎など)も確認します。

2)皮膚の観察

皮膚の乾燥、赤み、ぶつぶつ、水ぶくれ、かさぶた、かき傷、苔癬化などの有無や、左右対称性、年齢に応じた典型的な分布かどうかを診ます。他の湿疹・皮膚炎や乾癬(かんせん)など、似た病気との区別も重要です。

3)血液検査・アレルギー検査(必要に応じて)

重症度や他のアレルギー疾患の合併をみる目的で、IgE値、好酸球、TARCなどの採血を行うことがあります。また、ダニ・ハウスダスト・食物などに対する特異的IgE抗体検査や、皮膚テストを行う場合もあります。ただし、これらの検査は「アトピー性皮膚炎かどうか」を決めるためというより、悪化要因の把握や重症度評価の補助として用いられます。

4)重症度評価

湿疹が広がっている範囲、赤みやじゅくじゅくの強さ、かゆみの程度、眠れない日数などから、軽症・中等症・重症を評価し、治療方針を立てます。

⚫︎アトピー性皮膚炎の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

スキンケア指導

やさしい洗い方(ぬるま湯・短時間・こすらない)、毎日かならず保湿剤を塗るタイミング(入浴後すぐなど)、適切な量の塗り方を確認します。

悪化要因への対策

汗をかいたら早めにシャワーや濡れタオルでふく、綿素材など肌ざわりの良い衣類を選ぶ、部屋のほこりやダニ対策、ストレス・睡眠不足の是正など、生活環境を整えます。

B. 症状や重症度に応じた医療介入(外用薬・内服薬・注射薬など)

ステロイド外用薬

炎症をしずめる主力の薬です。強さのランクを使い分けながら、悪い所に「必要な期間だけ」適切な量を塗ります。医師の指示のもとで使えば、重い副作用の心配は大きくありませんが、自己判断で長期間塗り続けることは避けましょう。

タクロリムス軟膏・JAK阻害薬外用

ステロイド以外の抗炎症薬で、特に顔や首などステロイドを長く使いにくい部位にも用いられます。ひりひり感が出ることがありますが、多くは使っていくうちに軽くなります。

C. 長期管理と再燃予防(スキンケア・生活習慣)

「良くなってもすぐにはやめない」維持療法

症状が落ち着いてきたら、保湿を続けつつ、炎症が出やすい部分に少量の外用薬を間欠的に塗る「プロアクティブ療法」などで再発予防を行います。

本人・家族への情報提供

病気の仕組みや治療の目的を理解することで、「強い薬は怖いから塗らない」といった不安を減らし、結果として少ない薬で上手にコントロールしやすくなります。

⚫︎アトピー性皮膚炎の予後

  • 多くの方では、成長とともに症状が軽くなったり、目立たなくなったりします。一方で、成人になっても症状が続く方や、思春期・成人期になってから初めて発症する方もいます。
  • 適切なスキンケアと外用薬などを続けることで、完全に「ゼロ」にすることは難しくても、「日常生活に大きな支障が出ない状態」を保てることが多くなっています。近年は、生物学的製剤やJAK阻害薬など新しい治療も登場し、重症の方でも症状がかなり改善する例が増えています。
  • 逆に、治療が不十分な状態でかゆみを我慢して過ごしていると、睡眠不足や学業・仕事への影響、気分の落ち込みなど、心身への影響が大きくなってしまいます。早めに専門医と相談し、ライフステージに合わせた治療を続けることが大切です。

⚫︎アトピー性皮膚炎の予防

アトピー性皮膚炎を完全に防ぐことは難しいものの、次の工夫で悪化リスクを下げられます。

肌を乾燥させない

毎日入浴後に保湿剤を全身に塗り、季節を問わず「しっとりした肌」を保つことが重要です。

やさしいスキンケア

熱いお湯・ナイロンタオル・ゴシゴシ洗いは、皮膚のバリア機能を壊します。ぬるま湯で、泡立てた石けんを手のひらでなでるように洗い、すすぎはしっかりと行います。

環境の整備

ダニやハウスダストを減らすため、こまめな掃除・布団干しや布団乾燥機の活用、エアコンのフィルター掃除などを行いましょう。汗をかいたら早めに洗い流す・着替えることも大切です。

衣類・生活習慣

肌にやさしい綿素材を中心に選び、タグやゴムが強く当たる部分はカバーします。睡眠不足・ストレスは悪化要因になるため、規則正しい生活とストレスケアも心がけましょう。

⚫︎アトピー性皮膚炎に関連する病気や合併症

皮膚感染症

かきこわしから細菌感染(とびひ:伝染性膿痂疹)や、ウイルス感染(ヘルペスウイルスによるカポジ水痘様発疹症など)を起こすことがあります。発熱を伴う急な悪化・水ぶくれが急に増えたときは早急な受診が必要です。

目の合併症

重症で長期にわたり炎症が続く場合、白内障や網膜剥離などの眼の合併症が報告されています。目のかゆみ・見えづらさなどがあれば、眼科と連携して治療します。

他のアレルギー疾患(アトピー・マーチ)

気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、食物アレルギーなどを合併しやすく、「アトピー・マーチ(行進)」と呼ばれています。

睡眠障害・成長やこころへの影響

慢性的なかゆみや見た目の悩みから、睡眠不足、学業・仕事のパフォーマンス低下、自己肯定感の低下、抑うつ・不安などにつながることがあります。症状だけでなく、生活全体を一緒にサポートしていくことが大切です。

⚫︎まとめ

アトピー性皮膚炎は、体質や環境の影響で強いかゆみが続く慢性の湿疹です。
近年、治療法は大きく進歩しました。従来の治療に加えて、新しいお薬(生物学的製剤やJAK阻害薬など)が登場したことで、重症の方でも良好な状態を維持できるようになっています。

アトピー治療の鍵は、主治医と協力して長期的に「管理」していくことです。調子が悪い時だけでなく、日頃のスキンケアや生活習慣の見直しを含め、上手に付き合っていきましょう。つらい症状や見た目の悩みは、一人で悩まずにぜひ専門の医師にご相談ください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/02
  • 更新日:2026/03/02

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