成人Still病(ASD)せいじんすてぃるびょう

成人Still病は、原因不明の全身性炎症疾患で、39℃以上の発熱・サーモンピンク疹・関節痛を三大症状とします。不明熱の原因として重要で、肝障害やマクロファージ活性化症候群など重い合併症もあり得るため、早期診断とステロイド・生物学的製剤などによる治療が大切です。

⚫︎成人Still病(成人発症スチル病/ASD)とは

成人Still病(成人発症スチル病/ASD)は、発熱・発疹・関節症状を主な特徴とする全身性の炎症性疾患です。子どもにみられる全身型若年性特発性関節炎(旧スチル病)とよく似た病像が、16歳以上の成人に起こったものと考えられています。

リウマチ性疾患(膠原病)の一つですが、関節リウマチで陽性になりやすいリウマトイド因子や抗核抗体は多くの症例で陰性です。そのため、自己抗体が関わる「自己免疫疾患」というより、自然免疫が暴走する「自己炎症性疾患」の一種と考えられています。

日本では人口10万人あたり2人程度とされるまれな病気で、20〜40代の比較的若い成人に多いものの、高齢発症も報告されています。女性にやや多い傾向があります。

⚫︎成人Still病(ASD)の原因

  • 明確な原因は不明

成人Still病は「特発性」、つまりはっきりした原因が特定できていません。感染症や腫瘍が直接の原因というわけではなく、検査でそれらを除外したうえで診断されます。

  • 免疫システムの異常な活性化

マクロファージやT細胞といった免疫細胞が必要以上に活性化し、インターロイキン(IL-1、IL-6、IL-18)やTNFαなどの炎症性サイトカインが大量に分泌されることで、発熱・発疹・関節炎など多彩な症状が出ると考えられています。

  • 体質(遺伝)と環境要因

特定のHLA(免疫に関係する遺伝子)との関連が報告されているものの、決定的ではありません。ウイルス・細菌感染などをきっかけに、もともとの体質と重なって発症するのではないかと推測されています。

⚫︎成人Still病(ASD)の症状は?

  • 高熱(スパイク状の発熱)

ほとんどの症例で39〜40℃の高熱がみられます。朝は平熱〜微熱で、夕方〜夜に急に高熱が出て、また下がるといった「上がったり下がったりする熱(弛張熱・間欠熱)」が特徴的です

  • サーモンピンク疹

体幹や四肢に、淡いピンク色の地図状・斑点状の発疹が現れます。かゆみはあまり強くなく、発熱に伴って出たり消えたりするのが特徴で、「サーモンピンク疹」と呼ばれます。

  • 関節痛・関節炎

膝・足首・手首・肘・肩などに関節痛や関節炎が起こります。体温の変化と並行して痛みが強くなったり軽くなったりすることもあります。長期化すると関節破壊・可動域制限を残すこともあります。

  • そのほかの症状

のどの痛み、筋肉痛、強い倦怠感、リンパ節の腫れ、肝臓・脾臓の腫れ、胸膜炎・心膜炎(胸の痛み・息苦しさ)など、全身にさまざまな症状が出ることがあります。重症例では息切れ・意識障害などを伴うこともあります。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めに内科・リウマチ科・膠原病内科などへの受診を検討してください。

  • 原因不明の高熱(38〜39℃以上)が1週間以上続く、または上がったり下がったりをくり返す
  • 発熱と同時に、体幹や手足に淡いピンク色の発疹が出たり消えたりしている
  • 関節の痛みや腫れが続き、日常生活に支障が出ている
  • リンパ節の腫れ、肝機能異常を指摘されたが、感染症やがんが否定的と言われた

とくに、

  • 高熱とともにぐったりしている
  • 息苦しさ・胸の痛み・意識がもうろうとする

などの症状があるときは、マクロファージ活性化症候群(後述)など命に関わる状態の可能性もあるため、救急受診も含めて早急な対応が必要です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

成人Still病に特有の「この検査だけで診断できる」という決め手はありません。そのため、問診や診察で症状の特徴を整理しつつ、血液検査・画像検査などで感染症・悪性腫瘍・他の膠原病を除外したうえで、総合的に診断します。

治療は、ステロイド薬を中心に炎症をしっかり抑え、必要に応じて免疫抑制薬や生物学的製剤を追加していきます。早期から適切に治療することで、症状のコントロールと合併症・再発の予防が期待できます。

⚫︎成人Still病(ASD)の診断

1.問診・診察

発熱の経過(1日の中での上がり方・続いている期間)、発疹の性状と出方、関節痛・のどの痛み、リンパ節や肝脾腫の有無などを詳しく聞きます。不明熱の鑑別として、感染症・がん(特にリンパ腫)・他の膠原病などがないかも並行して評価します。

2.血液検査

  • 炎症反応(CRP・赤沈)の著しい上昇
  • 白血球増多(特に好中球優位)
  • 血清フェリチンの高値(しばしば1,000ng/mLを超える)
  • 肝機能障害(AST・ALT・LD上昇)などが参考になります。リウマトイド因子や抗核抗体は通常陰性です。

3.分類基準(山口基準など)

発熱、関節痛、典型的皮疹、白血球増多などを「大項目」、咽頭痛、リンパ節腫脹・肝脾腫、肝機能障害、自己抗体陰性などを「小項目」とし、その組み合わせと除外診断から成人Still病と判定する基準(山口基準など)が使われます。

4.画像・その他の検査

胸部X線やCTで肺炎・胸膜炎・リンパ節腫脹の有無を確認し、必要に応じて骨髄検査や各種ウイルス・細菌検査を行い、類似疾患を除外します。

⚫︎成人Still病(ASD)の治療

初期対応(まずやること/基本方針)

高熱・強い炎症に対して、ステロイド薬(プレドニゾロンなど)を比較的高用量から開始し、症状と検査値の改善を確認しながら徐々に減量していきます。

追加の薬物療法

  • メトトレキサート、シクロスポリンなどの免疫抑制薬
    ステロイドを減らした際に再燃する場合や、ステロイドをできるだけ減らしたい場合に併用します。
  • 生物学的製剤・分子標的薬
    IL-6受容体阻害薬(トシリズマブ)、IL-1阻害薬、TNFα阻害薬などが、治療抵抗性の症例に用いられます。近年、成人Still病に対する適応拡大が進み、重要な選択肢となっています
  • その他
    NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は痛みや微熱のコントロールに用いられますが、成人Still病単独で十分な効果を期待できることは少なく、多くはステロイドや生物学的製剤と併用されます。  

合併症への対応・支持療法

マクロファージ活性化症候群(後述)や重度の肝障害・心膜炎・胸膜炎などを合併した場合は、集中治療やパルスステロイド療法(短期間に大量のステロイドを点滴する方法)など、より強力な治療が必要になることがあります。

⚫︎成人Still病(ASD)の予後

成人Still病は、適切な治療により多くの方で症状のコントロールが可能で、生命予後(命の見通し)は一般的に良好とされています。一方で、病気の経過には次のようなパターンがあります。

  • 単相型:1回のエピソードのみで落ち着き、その後再発しない
  • 再発寛解型:寛解と再燃(ぶり返し)をくり返す
  • 慢性関節炎型:発熱は落ち着いても、関節炎が長く続き、関節破壊を残す

早期から炎症をしっかり抑えることで、関節破壊や臓器障害のリスクを減らせると考えられています。ただし、マクロファージ活性化症候群などの重い合併症が起こると命に関わることもあり、慎重な経過観察が必要です。

⚫︎成人Still病(ASD)の予防

  • 発症そのものを完全に防ぐ方法はありません
    原因となる特定の感染症や生活習慣がわかっているわけではないため、「こうすれば発症を防げる」という確立した方法はありません。
  • 再燃予防・合併症予防が重要
    治療薬(特にステロイド・免疫抑制薬・生物学的製剤)を自己判断で中断・減量しないことが大切です。定期的な受診・血液検査を続け、副作用や感染症の早期発見につとめます。
  • 感染症・骨粗鬆症への注意
    免疫を抑える薬を使うため、発熱・咳・尿路症状など感染症のサインがあれば早めに医療機関へ。ステロイド長期内服では骨粗鬆症・糖尿病・胃潰瘍・白内障・緑内障などのリスクがあるため、骨の薬や胃薬の併用、眼科受診なども勧められます。

⚫︎成人Still病(ASD)に関連する病気や合併症

  • マクロファージ活性化症候群(MAS)
    発熱の悪化、血球減少、肝機能障害、フェリチンの著しい上昇、意識障害などを伴う重症合併症で、迅速な診断と集中治療が必要です。成人Still病で最も注意すべき合併症の一つです。
  • 心膜炎・胸膜炎・肺炎
    胸の痛み、息切れ、胸水貯留などを起こすことがあります。重症化すると呼吸不全につながることもあり、入院管理が必要になる場合があります。
  • 肝障害・脾腫
    肝機能検査の異常、肝腫大・脾腫がみられ、黄疸や腹部膨満感として自覚されることもあります。
  • ステロイド・免疫抑制薬・生物学的製剤による副作用
    骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、感染症、胃潰瘍、白内障・緑内障など、薬剤に伴う合併症にも注意が必要です。

⚫︎受診の目安(まとめ)

成人Still病は、原因不明の全身性炎症疾患で、高熱・サーモンピンク疹・関節症状を三大症状とし、不明熱の重要な原因の一つです。
診断には、感染症や悪性腫瘍などを丁寧に除外したうえで、症状と検査所見(フェリチン高値など)を総合的に判断する必要があります。

ステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤などの組み合わせにより、多くの方で症状のコントロールや寛解が期待できる一方、マクロファージ活性化症候群など重い合併症にも注意が必要です。

原因不明の高熱と発疹・関節痛が続く場合は、「まれな病気だから違うだろう」と決めつけず、早めに専門医へ相談していただくことが大切です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

  • 難病情報センター「成人発症スチル病(指定難病54)

(https://www.nanbyou.or.jp/entry/132)

  • Mindsガイドラインセンター「成人スチル病診療ガイドライン2017年版

(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00841/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/02/27
  • 更新日:2026/02/27

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