無顆粒球症むかりゅうきゅうしょう

無顆粒球症は好中球が著減し感染に極めて弱くなる状態。 薬剤や化学療法が原因に多く、発熱は救急対応で広域抗菌薬を速やかに開始しG-CSFなどで回復を促します。

⚫︎無顆粒球症とは?

無顆粒球症は、血液中で細菌と最前線で戦う白血球の一種「好中球(こうちゅうきゅう)」が極端に減ってしまう状態を指します。一般的には絶対好中球数(ANC)が 500/μL 未満、ときに 200/μL 未満まで下がった場面をこう呼びます。似た言葉に
「好中球減少症(1,500/μL 未満)」がありますが、無顆粒球症はその重症域です。

好中球が不足すると、普段なら問題になりにくい細菌や真菌(カビ)による感染が一気に進み、短時間で重症感染(肺炎・血流感染・敗血症)に陥ることがあります。
特に発熱を伴う好中球減少(発熱性好中球減少症)は緊急度が高く、迅速な診断と
抗菌薬治療の開始が何より重要です。

⚫︎無顆粒球症の原因

  • 薬剤性(もっとも重要)
    一部の抗菌薬、抗甲状腺薬、抗けいれん薬、抗精神病薬、解熱鎮痛薬、抗リウマチ薬など、幅広い薬でまれに起こりえます。薬そのものが骨髄(血液の工場)での
    造血を抑えたり、免疫反応を介して好中球が壊されたりして発症します。
  • 化学療法・放射線治療に伴う骨髄抑制
    抗がん薬投与の1〜2週間後に好中球が最も低くなるのが一般的です。
  • 骨髄の病気
    骨髄異形成症候群(MDS)、再生不良性貧血、白血病など、造血そのものの障害で起こることがあります。
  • 感染症・自己免疫
    ウイルス感染や自己抗体による好中球破壊(非常に稀な病型を含む)。
  • 栄養・金属バランス
    栄養障害、銅不足、亜鉛過剰などが関与することがあります。

脾機能亢進(ひきのうこうしん)
脾臓での血球破壊が亢進し、好中球が減ることがあります。

⚫︎無顆粒球症の症状は?

好中球は細菌感染を抑える主力部隊です。そのため、減少すると感染のサインが短時間で現れ、悪化しやすくなります。

  • 38℃以上の発熱、悪寒(ぶるぶる震える寒気)
  • のどの痛み、口内炎、歯ぐきの腫れ・痛み(口腔内は細菌が多く、早期に症状が出やすい)
  • 咳・痰、息切れ、胸の痛み(肺炎のサイン)
  • 排尿時の痛み・頻尿・背部痛(尿路感染のサイン)
  • 皮膚の赤み・腫れ・膿、肛門周囲の痛み(皮膚・軟部組織感染)
  • 全身のだるさ、食欲低下、意識もうろうなど

ポイント:解熱剤で一時的に下がっても、すぐ再燃する「持続する発熱」は要注意。
発熱+最近はじめた薬、がん治療後、血液疾患の指摘がある。
このいずれかに当てはまる場合は、夜間・休日でも早めの受診を検討してください。

⚫︎受診の目安

  • 38℃以上の発熱がある
  • のどの痛み・口内炎・咳や痰・排尿時痛・肛門周囲の痛みなど、どこかに感染を思わせる症状がある
  • 抗がん薬治療中、または新しい薬を飲みはじめて数週間以内に上記の症状が出てきた

→ これらに当てはまる場合は、躊躇せず医療機関へ。発熱があるときは受診前に解熱鎮痛薬だけで様子を見続けないことが大切です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断:血液検査で絶対好中球数(ANC)を確認し、感染の有無・原因の見当をつけます。

初期治療発熱がある場合は、血液培養などの採取後ただちに広域抗菌薬を開始します(分〜時間単位の迅速さが重要)。

原因対策と支持療法:被疑薬の中止、G-CSF(好中球を増やす注射)の使用、隔離・口腔ケア・手指衛生などを並行します。

背景疾患への治療:MDSや再生不良性貧血など基礎疾患がある場合は、その治療方針に沿って管理します。

⚫︎無顆粒球症の診断

1)血液検査(CBC・血液像)

白血球分画からANCを算出します。ANC<500/μLで無顆粒球症域、<200/μLでは極めてハイリスクと評価します。併せて貧血・血小板減少の有無、炎症反応、腎肝機能を確認します。

2)培養・感染評価

発熱時は血液培養(可能なら複数セット)を直ちに実施。尿・喀痰・創部の培養や、胸部X線/CTなどで感染巣を探します。

3)原因探索

薬歴(開始時期・用量・併用薬)、化学療法の投与歴、職業歴(ばく露)、サプリの使用、自己免疫の既往などを丁寧に聴取します。

4)骨髄検査

好中球の産生が落ちているのか、末梢で破壊されているのか、骨髄の造血低下や基礎疾患(MDS等)の有無を評価します。

5)鑑別

ウイルス感染、自己免疫疾患、栄養欠乏、脾機能亢進、薬剤アレルギーなどを除外・同定していきます。

⚫︎無顆粒球症の治療

A. 発熱時の初期対応(最重要)

  • 被疑薬を直ちに中止
  • 採血・培養などの検査後、すみやかに広域抗菌薬を開始(遅らせない)
  • 点滴・解熱鎮痛・酸素投与など全身管理を並行
  • 症状やリスクに応じて抗真菌薬・抗ウイルス薬を追加検討

B. 好中球回復の支援・支持療法

  • G-CSF(フィルグラスチム等)で骨髄の好中球産生を促進
  • 隔離・感染対策:手指衛生、マスク、うがい、口腔ケア、中心静脈カテーテル管理など
  • 栄養・水分管理:口内炎や嚥下痛がある場合は食事形態を調整し、脱水を防ぐ
  • 粘膜・皮膚ケア:口内炎・肛囲痛の緩和、二次感染の予防

C.原因への根本対処

  • 薬剤性:被疑薬の中止・置換。多くは1〜3週間で回復しますが、症例差があります。
  • 化学療法関連:次コースの投与量・スケジュール調整、G-CSF予防投与の検討。
  • 造血不全(MDS ほか):リスクに応じた支持療法から移植まで、専門的治療を計画。
  • 自己免疫性:必要に応じて免疫抑制療法を検討します(専門医管理)。

⚫︎無顆粒球症の予後

原因と重症度で大きく異なります。

  • 薬剤性の多くは原因薬の中止と適切な感染治療で回復が見込めます。一方、重症感染(肺炎・菌血症・敗血症)を合併すると死亡率が上昇するため、初動の速さが予後を左右します。
  • リスクが高いのは、高齢・基礎疾患を多く持つ方・ANCが極端に低い/低下期間が長い・抗菌薬開始が遅れたケースです。早期の受診と専門的管理が回復への近道です。

⚫︎無顆粒球症の予防

先天性では発症の完全予防はできませんが、家族歴がある場合は遺伝学的カウンセリングが参考になります。後天性では以下が大切です。

  • 薬剤の安全管理:新しい薬を始めて2〜8週間は、発熱・のど痛・口内炎などの
    サインに注意。定期採血が推奨される薬では必ず指示どおりに行いましょう。
  • がん治療中の対策:主治医と「ナadir(最も下がる時期)」を共有し、G-CSF予防や予防内服の適応を検討。人混みを避け、手洗い・うがい・口腔ケアを徹底します。
  • 生活習慣:十分な睡眠・栄養、口腔内の清潔維持。爪切りや剃刀による微小外傷にも注意を払い、創傷は早めの洗浄・消毒を。
  • ワクチン:医師と相談のうえ、インフルエンザなど不活化ワクチンの接種時期を調整します(生ワクチンは原則避けます)

⚫︎無顆粒球症に関連する病気や合併症

  • 発熱性好中球減少症(FN):発熱+好中球減少が同時にある救急病態。即時の広域抗菌薬が基本です。
  • 肺炎・菌血症・敗血症:短時間で進行しうる重篤な感染症。
  • 侵襲性真菌感染症:長期の好中球減少でリスク上昇。
  • 粘膜障害・口内炎・肛囲膿瘍:二次感染に注意。
  • 基礎疾患:骨髄異形成症候群(MDS)、再生不良性貧血、白血病などの造血障害が背景に潜むことがあります。
  • DIC(播種性血管内凝固):重症感染に伴う凝固異常。速やかな全身管理が必要です。

⚫︎まとめ

無顆粒球症は、体を守る白血球の一種(好中球)が極端に少なくなることで、軽い風邪でも重い感染症につながりやすくなる病気です。薬の副作用やウイルス感染、自己免疫の異常などが原因になることがあり、早期に原因を調べ、原因薬の中止や抗菌薬治療、必要に応じて白血球の回復を促す治療を行います。

発熱や悪寒、のどの強い痛みなどが続く場合は、早めに内科や血液内科での受診が大切です。不安なときは一人で抱え込まず、主治医と相談しながら適切な治療方針を一緒に考えていきましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/02/25
  • 更新日:2026/02/25

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