血友病けつゆうびょう
血友病は血液を固める「凝固因子」が生まれつき不足または欠損している先天性の出血性疾患で、止血が困難になる病気です。軽いけがでも出血が止まりにくく、関節内出血などを繰り返すことがあります。適切な治療と自己管理が必要です。

血友病とは?
血友病(けつゆうびょう)は、血液を固めるために必要な「凝固因子」と呼ばれるたんぱく質が先天的に不足または欠損していることで、出血が止まりにくくなる遺伝性の出血性疾患です。多くは男児に発症し、女性は保因者となります。
主に「血友病A(第VIII因子欠乏症)」と「血友病B(第IX因子欠乏症)」の2種類があり、日本では血友病Aが約80〜85%を占めます。出血は外傷や手術に伴うもののほか、日常生活の中でも自然出血や関節内出血が見られることがあります。
症状の重さは凝固因子の活性レベルによって決まり、重症例ではほんのわずかな衝撃でも出血が生じ、早期の治療を怠ると関節破壊や慢性疼痛につながることもあります。
原因
血友病は、X染色体に存在する凝固因子の遺伝子に異常があることが原因で発症する先天性疾患です。第VIII因子または第IX因子の遺伝子に変異があることで、対応する凝固因子の活性が低下または完全に欠損し、正常な止血機構が働かなくなります。
主な原因
- 血友病A:第VIII因子の遺伝子異常
- 血友病B:第IX因子の遺伝子異常
- X染色体劣性遺伝(伴性劣性遺伝):主に男性に発症し、女性は保因者となる
その他の特徴
- 約30%の患者では家族歴がなく、突然変異による発症
- まれに後天的に自己抗体が凝固因子を攻撃する「後天性血友病」も存在する
血友病は遺伝性疾患であり、出生前診断や保因者診断も行われることがあります。家族歴の有無に関わらず、早期の診断と治療体制の整備が重要です。
症状
血友病の主な症状は、出血の止まりにくさです。皮膚の表面だけでなく、関節や筋肉、内臓に出血が起こることもあり、重症度によって症状の現れ方が異なります。
軽度の場合
- 手術や抜歯時の止血困難
- けがをしたときの出血が長引く
中等度〜重度の場合
- 関節内出血(膝、肘、足首など):腫れ、痛み、関節可動域の制限
- 筋肉内出血:腫れ、圧痛、歩行困難
- 皮下出血、あざができやすい
- 鼻血や歯ぐきからの出血
- 尿に血が混じる(血尿)、便に血が混じる(血便)
- 頭部外傷後の脳出血(緊急を要する合併症)
繰り返される関節出血は「標的関節」と呼ばれる状態を引き起こし、慢性的な関節障害へと進行することがあります。これを防ぐには予防的治療が不可欠です。
診断方法と治療方法
診断
血友病の診断には血液検査が中心となります。出血症状や家族歴をもとに疑い、以下のような検査が行われます。
- 凝固時間の延長(APTTの延長)
- 第VIII因子または第IX因子の活性測定
- 遺伝子検査(必要に応じて):保因者の診断や出生前診断にも用いられる
- 家族歴の確認:母系に出血傾向のある人がいないかを確認
治療
- 凝固因子製剤の補充療法(定期補充または必要時補充)
- 血友病A:第VIII因子製剤
- 血友病B:第IX因子製剤 - 非因子製剤(エミシズマブなど):血友病Aに対する新しい治療選択肢
- 抗体(インヒビター)対策:バイパス製剤の使用や免疫寛容療法(ITI)
- 止血管理:外傷や手術時には計画的に因子補充を行う
治療は長期にわたるため、医療機関と連携しながら継続することが大切です。
予後
現在では治療技術の進歩により、血友病の予後は大きく改善しています。定期的に凝固因子を補充することで出血を予防し、関節障害の発症を防ぐことが可能となりました。
予後が良好なケース
- 幼少期から定期補充療法を開始し、出血を抑えられている場合
- 自己注射や在宅療法を導入し、日常生活を維持できている場合
- 非因子製剤の導入によって投与間隔が延び、QOLが向上している
注意が必要なケース
- インヒビター(凝固因子に対する中和抗体)の出現により、治療効果が減弱する
- 関節出血が頻回に起こり、関節の変形や慢性痛が残る
- 高齢化に伴う生活習慣病や動脈硬化との合併
定期診察による血液検査、関節評価、リハビリテーション指導など多角的な管理が予後の改善に寄与します。
予防
血友病は先天性の遺伝性疾患であるため、発症自体を予防することは困難ですが、出血による合併症を予防する「2次予防」が重要です。
予防のための対策
- 定期的な凝固因子の補充による予防的治療
- スポーツや身体活動の制限と指導(激しい接触は避ける)
- 転倒やけがを防ぐ生活環境の整備
- 関節機能を保つためのリハビリと筋力維持
- 口腔内のケアを徹底し、歯ぐきからの出血を防ぐ
- 学校や職場での情報共有と緊急時の対応体制の構築
また、保因者の遺伝カウンセリングや出産時の医療管理も重要であり、家族全体での理解と対応が求められます。
関連する病気や合併症
血友病は単に出血しやすいというだけでなく、長期的に管理しなければ重篤な合併症を引き起こす可能性があります。また、関連する疾患との鑑別も重要です。
関連する疾患
- 後天性血友病:自己免疫により第VIII因子が破壊される疾患(高齢者や出産後に多い)
- フォン・ヴィレブランド病:血小板機能と第VIII因子の両方に関連する出血性疾患
- 肝疾患:凝固因子が肝臓で産生されるため、肝機能障害で出血しやすくなる
合併症
- 関節障害(血友病性関節症):繰り返す関節内出血による関節変形と機能低下
- インヒビターの出現:治療に使用する凝固因子に対する抗体が発生し、治療困難になる
- HIV・C型肝炎感染:過去の非加熱製剤使用による感染(現在は安全性が確保されています)
- 慢性痛、抑うつ、生活の質の低下
総合的なケアと定期的なフォローアップによって、合併症を予防しながら生活の質を保つことが可能です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
厚生労働省 e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
日本血栓止血学会(https://www.jsth.org/)
国立成育医療研究センター(https://www.ncchd.go.jp/)
日本血友病学会(https://www.hemophilia.jp/)
難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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