再生不良性貧血さいせいふりょうせいひんけつ
再生不良性貧血は、骨髄の造血機能が低下して赤血球・白血球・血小板のすべてが減少する病気です。貧血症状だけでなく、出血や感染を起こしやすくなります。治療には輸血、免疫抑制療法、骨髄移植などが用いられます。

再生不良性貧血とは?
再生不良性貧血は、骨髄の造血幹細胞の機能が低下し、赤血球・白血球・血小板という血液の主要な成分すべてが著しく減少する疾患です。これを「汎血球減少症」と呼び、単なる貧血ではなく、全身の免疫力や止血機能にも影響を与える重篤な血液疾患に分類されます。
発症には急性型と慢性型があり、重症度や経過により治療方針が異なります。日本では特定疾患(指定難病)に認定されており、若年層から高齢者まで幅広く発症する可能性があります。
症状はゆっくり進行することが多いため、初期は「疲れやすい」「風邪をひきやすい」などの一般的な不調として見過ごされることがありますが、放置すると命に関わる危険性もあります。
原因
再生不良性貧血の原因は、明確に特定できる場合と不明な場合があります。約7割以上は原因不明(特発性)とされ、残りは薬剤やウイルス感染、自己免疫などによる後天的なものです。
明らかな原因がある場合
- 薬剤性:抗がん剤、抗生物質、解熱鎮痛薬などによる骨髄毒性
- ウイルス感染:B型肝炎、EBウイルス、パルボウイルスなど
- 自己免疫反応:自己の免疫が誤って造血幹細胞を攻撃する
- 化学物質への暴露:ベンゼンなどの有機溶剤
- 放射線被曝
特発性の場合
原因がはっきりせず、多くは自己免疫異常によると考えられています。体質や環境因子の関与が指摘されています。
また、一部は「先天性再生不良性貧血」として、遺伝的要因により幼少期から発症するケースもあります。
症状
再生不良性貧血では、血液中の細胞が全体的に減少するため、複数の臓器・機能に関連した症状が現れます。赤血球、白血球、血小板のいずれが減っても、特有の症状が生じます。
赤血球の減少による症状
- 全身の倦怠感、疲れやすさ
- 動悸、息切れ、立ちくらみ
- 顔色不良、頭痛、集中力低下
白血球(特に好中球)の減少による症状
- 発熱、喉の痛みなど感染症の頻発
- 肺炎、膀胱炎、口内炎などが重症化しやすい
- 小さな傷でも化膿しやすくなる
血小板の減少による症状
- 鼻血や歯ぐきからの出血、皮下出血(あざ)
- 月経過多
- 止血が遅くなる
複数の症状が同時に進行するため、日常生活への支障が大きく、感染や出血が命に関わることもあります。
診断方法と治療方法
診断
再生不良性貧血の診断では、まず血液検査で赤血球、白血球、血小板の数値を調べます。その後、骨髄検査(骨髄穿刺)で骨髄の造血機能を直接確認します。
- 血液検査:汎血球減少の有無、網状赤血球の減少を確認します
- 骨髄検査:骨髄の細胞数が著しく減少していれば診断の根拠になります
- 染色体検査・ウイルス検査:他の病気との鑑別や原因特定に使用します
- 自己抗体検査:免疫性の要素が疑われる場合に実施します
治療
- 軽症例:経過観察または対症療法(輸血、感染予防)を行います
- 中等症以上:免疫抑制療法(シクロスポリン、ATGなど)を行います
- 重症例:造血幹細胞移植(骨髄移植)が根治療法として推奨されます
- 支持療法:赤血球や血小板の輸血、感染予防のための抗菌薬投与などを行います
患者の年齢や重症度、ドナーの有無によって治療方針が決まります。
予後
再生不良性貧血の予後は、発症年齢や重症度、治療への反応などにより異なります。軽症の場合は経過観察で済むこともありますが、重症の場合は命に関わることがあるため、早期の診断と治療が重要です。
近年では、免疫抑制療法の進歩や骨髄移植の普及により、治療成績は大きく改善されています。特に若年で適合するドナーが見つかった場合には、骨髄移植によって根治が期待できるケースもあります。
一方で、高齢者や基礎疾患がある場合は、移植が難しいこともあり、支持療法を中心とした治療になります。定期的な通院と感染予防、生活指導が必要です。
また、再発のリスクや治療による副作用(免疫抑制薬の影響など)にも注意し、長期的な経過観察が求められます。
予防
再生不良性貧血は明確な予防法が確立されていない病気ですが、原因が明らかな場合にはリスク因子を避けることで予防につながることがあります。
予防につながる取り組み
- 薬剤性が疑われる場合は、医師の指示のもとで薬の使用を見直す
- ベンゼンなどの有機溶剤への暴露を避ける
- ウイルス感染を防ぐためのワクチン接種や感染予防策を徹底する
- 免疫力を低下させないよう、規則正しい生活を心がける
また、家族に再生不良性貧血の患者がいる場合や、先天性の疾患が疑われる場合には、早期の健康チェックが推奨されます。
定期的な健康診断と体調の変化への敏感な対応が、早期発見・治療にもつながります。
関連する病気や合併症
再生不良性貧血は、単独でも重篤な疾患ですが、進行するとさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。また、他の疾患と鑑別が必要な場合もあります。
関連疾患
- 骨髄異形成症候群(MDS):初期症状が似ており、鑑別が必要です
- 急性白血病:まれに再生不良性貧血から移行することがあります
- パルボウイルスB19感染症:骨髄抑制を引き起こすウイルス性疾患です
- ファンコニ貧血:先天性再生不良性貧血の代表で、小児期に発症します
合併症
- 重症感染症(肺炎、敗血症など)
- 出血性合併症(消化管出血、脳出血など)
- 治療による副作用(感染症、腎機能障害、二次性がんなど)
- 心理的影響(抑うつ、不安症状、社会的孤立)
合併症の予防には、早期治療と継続的なフォローアップが不可欠です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
厚生労働省 e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
日本血液学会「再生不良性貧血診療ガイドライン」(http://www.jshem.or.jp/)
難病情報センター「再生不良性貧血」(https://www.nanbyou.or.jp/)
国立成育医療研究センター(https://www.ncchd.go.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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