高カルシウム血症こうかるしうむけっしょう

高カルシウム血症は、血中カルシウム濃度が正常範囲を超えて上昇する状態で、倦怠感や消化器症状、神経症状、心臓の異常など多岐にわたる症状を引き起こします。原因は副甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍が多く、早期の診断と治療が重要です。

高カルシウム血症とは?

高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が基準値(約8.5〜10.5 mg/dL)を超えて上昇した状態を指します。カルシウムは骨、筋肉、神経、心臓などの機能維持に重要な電解質であり、その濃度が高くなりすぎるとさまざまな臓器に障害をもたらします。

軽度では症状が乏しいこともありますが、濃度が11.0 mg/dLを超えると徐々に症状が出現し、13.0 mg/dL以上の重症例では意識障害や致命的な心機能障害を伴うことがあります。高カルシウム血症は内科的緊急疾患として扱われることもあり、原因の特定と迅速な治療が求められます。

特に副甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍に伴うものが頻度として高く、慢性的な経過をたどる場合もあります。

原因

高カルシウム血症の原因は、カルシウムの吸収、排泄、骨からの放出といったバランスが崩れた結果として起こります。主な原因は、副甲状腺ホルモンの異常や悪性腫瘍です。

主な原因

  • 副甲状腺機能亢進症(一次性):副甲状腺腺腫や過形成によりPTHが過剰分泌され、骨からのカルシウム放出が増加
  • 悪性腫瘍:がん細胞がPTHrP(副甲状腺ホルモン関連ペプチド)を産生することによりカルシウムが上昇(肺がん、乳がん、腎がんなど)
  • ビタミンD過剰摂取:サプリメントや活性型ビタミンD製剤の過剰使用
  • 長期間の不動化:骨吸収が促進される
  • 多発性骨髄腫や乳がんの骨転移などによる骨破壊
  • サルコイドーシスやその他の肉芽腫性疾患:ビタミンD代謝異常
  • 薬剤性:サイアザイド系利尿薬、リチウム製剤など

原因に応じて、治療方針も大きく異なります。

症状

症状は血中カルシウム濃度の上昇程度とその変化の速さによって異なります。軽度では無症状のこともありますが、中等度以上になると全身にさまざまな症状が現れます。

神経・精神症状

  • 倦怠感、脱力感、眠気
  • 意識障害、混乱、錯乱、昏睡(重症時)
  • 抑うつ、不安、不眠、記憶力低下

消化器症状

  • 食欲不振、吐き気、嘔吐
  • 便秘、腹部膨満感、消化不良

腎臓関連症状

  • 多尿、脱水、口渇
  • 腎結石、腎機能低下(高カルシウム尿による)

筋骨格・循環器系

  • 筋力低下、筋肉痛、関節痛
  • 心電図異常(QT間隔短縮、頻脈、不整脈)

急激な高カルシウム血症では、特に意識障害と心機能障害に注意が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 血清カルシウム濃度:総カルシウムと補正カルシウム(アルブミン値に基づく)を評価
  • 血中PTH:副甲状腺機能の異常を調べる
  • PTHrP:悪性腫瘍由来の高カルシウム血症を評価
  • ビタミンD濃度:摂取過多や代謝異常を確認
  • 腎機能、電解質、血清リンなどの測定
  • 画像検査(頸部エコー、骨シンチグラフィー、CT):腫瘍や骨病変の確認

治療

  • 輸液:生理食塩水による血中カルシウムの希釈と排泄促進
  • 利尿薬(ループ系):脱水を防ぎつつカルシウム排泄を促す
  • ビスホスホネート:骨吸収を抑制(ゾレドロン酸など)
  • カルシトニン:速効性のあるカルシウム低下薬(効果は短期間)
  • 副甲状腺機能亢進症:腺腫の摘出(手術)
  • 悪性腫瘍:化学療法、放射線療法、PTHrP抑制対策
  • 透析:重症例で腎機能低下がある場合に選択されることもある

重症例では多角的な治療アプローチが必要です。

予後

高カルシウム血症の予後は、原因、血中濃度の上昇程度、治療開始の早さに左右されます。軽度・慢性のものは管理可能ですが、急性で重症な場合は生命を脅かすことがあります。

予後が良好なケース

  • 副甲状腺機能亢進症によるものが早期に診断され、手術で改善
  • 薬剤やビタミンDの過剰が一時的で、中止により速やかに正常化
  • 軽度で症状が出ておらず、経過観察のみで管理可能な例

重篤化しやすいケース

  • 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症(特にPTHrP陽性)の場合
  • 重度の脱水や腎不全、意識障害がすでに進行している例
  • 高齢者や複数の合併症がある場合

重症化を防ぐには早期の検査と治療介入が不可欠です。

予防

予防には、リスク因子を避けるとともに、早期の変化に気づき、必要に応じて検査を受けることが重要です。慢性疾患の管理や薬剤の適正使用も予防に役立ちます。

予防的対応

  • カルシウム・ビタミンDの過剰摂取を避ける(サプリメントの用量に注意)
  • 利尿薬や骨粗鬆症治療薬の服用中は定期的に血清カルシウムをモニタリング
  • 副甲状腺機能亢進症の既往がある場合は定期的なフォローアップ
  • 慢性腎疾患やサルコイドーシスなどの基礎疾患を適切に管理する
  • バランスの取れた食生活と十分な水分補給

生活習慣での工夫

  • こまめな水分補給
  • 健康診断での電解質チェックを活用する

医師の指導のもとで栄養や薬剤を適正に管理することが予防につながります。

関連する病気や合併症

高カルシウム血症は、それ自体が他の疾患の一部であることが多く、進行すると全身にさまざまな合併症を引き起こします。

関連する疾患

  • 副甲状腺機能亢進症(一次性、三次性)
  • 悪性腫瘍(特に肺がん、乳がん、多発性骨髄腫、腎がん)
  • サルコイドーシス、結核などの肉芽腫性疾患
  • 甲状腺機能亢進症:稀に軽度の高カルシウム血症を伴うことがある
  • ビタミンD中毒
  • 慢性腎疾患:排泄低下による影響
  • 不動化による骨吸収亢進

主な合併症

  • 腎結石、腎機能障害
  • 心電図異常、不整脈
  • 脱水、電解質異常
  • 精神神経障害(意識障害、認知障害など)
  • 骨粗鬆症、病的骨折

これらを未然に防ぐためにも、原因疾患への対処が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「高カルシウム血症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本内分泌学会「高カルシウム血症の診療指針」(https://www.j-endo.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「電解質異常の管理」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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