B型肝炎びーがたかんえん

B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって引き起こされる感染症で、血液や体液を介して感染します。急性肝炎として発症する場合もあれば、慢性化して肝硬変や肝がんに進行することもあり、早期の検査と適切な治療、ワクチンによる予防が重要です。

B型肝炎とは

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって肝臓に炎症を引き起こすウイルス性肝炎のひとつです。ウイルスは主に血液や体液を介して体内に侵入し、肝細胞に感染して増殖します。

B型肝炎は大きく「急性」と「慢性」に分けられます。急性B型肝炎は主に成人が初感染した際に一過性の肝炎として発症し、通常は自然に治癒します。一方、乳児期や幼児期に感染した場合はウイルスが排除されず、無症状のまま「キャリア(持続感染者)」となり、慢性B型肝炎や肝硬変、肝がんへ進行するリスクがあります。

日本では母子感染を中心とした対策が行われており、ワクチン接種によって感染予防が可能です。発見が遅れると重大な肝疾患に発展するため、早期検査と専門的な対応が求められます。

原因

B型肝炎の原因は、B型肝炎ウイルス(HBV)への感染です。HBVは感染力が非常に強く、血液や体液を介して人から人へと広がります。

主な感染経路

  • 母子感染(垂直感染):HBs抗原陽性の母親から新生児への感染
  • 性行為(水平感染):ウイルスを含む体液(精液、膣分泌液)との接触
  • 血液を介した感染:輸血、不適切な注射器の共有、刺青、ピアスなど
  • 医療従事者の針刺し事故
  • 家庭内感染(まれ):傷口や共有の剃刀・歯ブラシなどを通じて

その他のリスク因子

  • ワクチン未接種の乳幼児や若年者
  • 複数人との性的接触歴がある人
  • 外国出生者(HBVの流行国で出生)

B型肝炎は一度感染すると慢性化する可能性があるため、感染経路の遮断とワクチン接種が重要な予防策です。

症状

B型肝炎の症状は、感染の時期や経過によって大きく異なります。急性期では典型的な肝炎症状が現れることがありますが、多くは無症状で経過します。

急性B型肝炎の症状

  • 発熱(微熱または高熱)
  • 倦怠感、全身のだるさ
  • 食欲不振、吐き気、嘔吐
  • 右上腹部の不快感や痛み
  • 黄疸(皮膚や白目の黄変)
  • 濃い尿、白っぽい便
  • 関節痛、じんましん、かゆみ(免疫反応による)

慢性B型肝炎の症状

  • 無症状のことが多く、検査で偶然発見される
  • 進行すると
     - 倦怠感
     - 黄疸、腹水、下肢のむくみ
     - 肝硬変、肝がんによる症状(出血傾向、体重減少、意識障害など)

急性期でも重症化(劇症肝炎)すると致命的なことがあるため、症状がある場合は早急な受診が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診:感染リスク(母子感染、性交渉、針刺し事故など)を確認
  • 血液検査
     - HBs抗原:現在感染しているかどうかの指標
     - HBe抗原・抗体:ウイルスの増殖状態
     - HBV-DNA定量:ウイルス量の把握と治療効果の判定に使用
     - 肝機能(AST、ALT、ビリルビン、アルブミン、PT-INRなど)
  • 超音波検査:肝臓の腫大、硬化、腫瘍の有無を確認
  • 肝生検(必要時):慢性肝炎の重症度や線維化の程度を評価

治療

  • 急性B型肝炎:基本的に対症療法(安静、水分・栄養管理)
  • 慢性B型肝炎:抗ウイルス療法が中心
     - 核酸アナログ製剤(エンテカビル、テノホビルなど)
     - インターフェロン療法(一部の患者で使用)
  • 定期的なウイルス量と肝機能のモニタリングが重要

治療の目的は、ウイルスの増殖を抑えて肝炎の進行を防ぐことです。

予後

B型肝炎の予後は、感染時期や経過、治療介入の有無によって異なります。特に乳幼児期に感染すると慢性化しやすく、長期的に肝硬変や肝がんのリスクがあります。

急性B型肝炎の予後

  • 成人では90%以上が自然治癒する
  • 約1%未満が劇症肝炎に進行し、致死的になることがある

慢性B型肝炎の予後

  • 適切な治療によりウイルスを抑制できれば、肝硬変や肝がんへの進行を防げる
  • キャリア状態が長期間続く場合、定期的な検査と経過観察が必要
  • 肝硬変に進行すると、出血や肝性脳症、腹水などの合併症が起こるリスクが高まる
  • 肝がんの発生率は一般人口よりも高く、半年〜1年ごとの超音波検査と腫瘍マーカー検査が推奨される

治療中でも再活性化のリスクがあるため、通院と医師の管理が重要です。

予防

B型肝炎はワクチン接種と感染経路の遮断によって予防可能です。新生児から成人まで、感染リスクのある人への対策が有効です。

ワクチン接種

  • 定期接種として生後2か月から3回接種(日本では2016年から義務化)
  • 医療従事者、介護職、注射を扱う職種の人は任意接種を推奨
  • 性感染症予防としてもワクチンは有効

感染予防行動

  • 性行為時のコンドーム使用
  • 針や器具の使い回しを避ける
  • 刺青やピアスは衛生管理の行き届いた施設で
  • 家庭内でも共有の歯ブラシ・カミソリを避ける

キャリアとの接触時の注意

  • 母子感染予防には、出生直後の免疫グロブリン投与とワクチン接種が有効

B型肝炎ウイルスは非常に感染力が強いため、感染拡大を防ぐための予防対策が不可欠です。

関連する病気や合併症

B型肝炎は感染後の経過により、さまざまな病態や合併症を引き起こすことがあります。特に慢性化した場合は、長期的な管理が必要です。

関連疾患・合併症

  • 慢性B型肝炎:ウイルスの持続感染による肝機能障害
  • 肝硬変:長年の炎症による肝臓の線維化と機能低下
  • 肝がん(肝細胞がん):慢性炎症・肝硬変を背景に発生
  • 劇症肝炎:急性期にまれに起こる重篤な肝不全
  • 腎障害:HBV関連の腎炎(膜性腎症など)
  • 多発性関節炎、皮膚症状:免疫反応によるもの
  • 再活性化:免疫抑制療法中にHBVが再活性化し、急性肝炎を引き起こす

これらの合併症を防ぐためには、ウイルス量のコントロールと定期的なスクリーニングが必要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」(https://www.jsh.or.jp/)

厚生労働省e-ヘルスネット「B型肝炎」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

国立国際医療研究センター「B型肝炎の理解と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本消化器病学会「ウイルス性肝炎の診療」(https://www.jsge.or.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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