A型肝炎えーがたかんえん
A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされる急性肝炎で、主に汚染された水や食品を介して感染します。発熱や黄疸などの症状を伴い、通常は自然に治癒しますが、高齢者では重症化することもあります。予防にはワクチン接種と衛生管理が重要です。
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A型肝炎とは
A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされるウイルス性急性肝炎の一種です。ウイルスは主に経口感染し、汚染された水や食品を通じて体内に入り、肝臓で炎症を引き起こします。
A型肝炎は感染してから症状が出るまでに2〜6週間(平均28日間)の潜伏期間があり、感染者の糞便中には発症前からウイルスが排出されています。症状が出る前に他人に感染させるリスクがあるため、集団感染につながることもあります。
症状は一般的に一過性で、若年者では軽症または無症状のことが多く、通常は数週間で自然に回復します。しかし、高齢者や基礎疾患がある人では重症化し、まれに劇症肝炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。
原因
A型肝炎の原因は、A型肝炎ウイルス(HAV)への感染です。HAVは非常に感染力が強く、以下のような経路で人から人へと広がります。
主な感染経路
- 経口感染(糞口感染):ウイルスが付着した食品や水を摂取することで感染
- 汚染された食材:特に加熱が不十分な貝類(生牡蠣、あさり、しじみなど)
- 手指や調理器具を介した接触感染:不衛生な手洗いや調理環境での感染
- 海外渡航:特に東南アジア、中南米、アフリカなど衛生環境が整っていない地域での水や生野菜の摂取
その他のリスク因子
- 飲食店従事者、保育園・介護施設の職員
- 同性間の性的接触(MSM)
- 注射器の使い回し(まれ)
日本では上下水道の整備により発生頻度は減少していますが、旅行や輸入食品の摂取などを通じて感染のリスクは残っています。
症状
A型肝炎は感染から数週間後に発症し、急性の全身症状と肝障害による特有の症状が現れます。年齢によって症状の現れ方には差があります。
主な症状
- 発熱(38℃前後の微熱〜高熱)
- 全身の倦怠感、だるさ
- 吐き気、嘔吐、食欲不振
- 右上腹部の痛みや不快感
- 関節痛や筋肉痛
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 尿の色が濃くなる(褐色尿)
- 便の色が白っぽくなる(胆汁の流れの障害)
- 皮膚のかゆみ(まれ)
重症化の兆候
- 持続する高熱
- 黄疸が急速に悪化
- 出血傾向(歯ぐきからの出血、あざ)
- 意識混濁、昏睡(劇症肝炎)
若年層では無症状または軽症のことも多いですが、高齢者では重症化のリスクが高く、早期の受診と検査が重要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診:症状の経過、食事内容、渡航歴、接触歴などを確認
- 血液検査
- 肝機能(AST、ALT、ビリルビン、γ-GTPなど)の上昇
- A型肝炎ウイルス抗体(IgM-HAV抗体):感染初期に陽性となり、確定診断に用いられる - 超音波検査:肝腫大や肝血流の変化などを評価(補助的)
- 尿検査:ビリルビンの排出状況を確認
治療
- 対症療法が基本:A型肝炎には特異的な抗ウイルス薬がなく、自然治癒を待つ
- 安静、十分な水分摂取、バランスのとれた食事
- 吐き気が強い場合は点滴治療を行うこともある - 重症例:入院のうえで肝機能のモニタリング、肝性脳症や出血傾向への対応が必要
- 劇症化の兆候がある場合は専門医療機関での管理が求められる
多くの患者は数週間で回復しますが、肝機能が完全に正常に戻るまでは1〜2か月程度かかることもあります。
予後
A型肝炎は基本的に予後が良好で、多くの人が数週間〜数か月で自然に回復します。慢性化することはなく、回復後は生涯にわたり免疫を獲得します。
良好な予後
- 軽症の場合は入院せずに自宅療養で改善可能
- 年齢が若く、基礎疾患がない場合は早期回復が見込まれる
- 回復後は再感染しない(終生免疫を獲得)
重症化のリスクが高いケース
- 高齢者(60歳以上)
- 既存の肝疾患(B型肝炎やC型肝炎との合併)
- 免疫機能が低下している人
- 劇症肝炎に進行した場合は死亡例も報告されている
重症化を防ぐためには、症状が現れた時点で早期に医療機関を受診し、適切な管理を受けることが大切です。
予防
A型肝炎はワクチン接種と衛生管理により予防可能な感染症です。特に感染リスクのある人は積極的な予防対策が重要です。
ワクチン接種
- A型肝炎ワクチンは2回の接種で長期間の予防効果あり
- 接種対象者:海外渡航予定者(特に衛生状態の悪い地域)、医療・介護従事者、男性同性間性交渉者(MSM)など
衛生対策
- 生水や氷を避ける:発展途上国ではミネラルウォーターを使用
- 貝類や生食食品は十分に加熱する
- 手洗いの徹底:食事前、トイレの後、調理前など
- 食品の保管と調理器具の衛生管理
感染拡大を防ぐには、家庭や職場での予防意識の共有も大切です。
関連する病気や合併症
A型肝炎は一過性の感染症ですが、体調や既往症によっては重篤な合併症を引き起こすことがあります。
肝臓関連の合併症
- 劇症肝炎:まれだが致死率が高く、入院・集中管理が必要
- 急性肝不全:肝性脳症や出血傾向を伴う重症肝炎
- 再生不良性貧血:ごくまれに自己免疫反応により出現
- 他のウイルス性肝炎との合併:B型・C型肝炎との重複感染に注意
その他の合併症
- 自己免疫反応による発疹、関節炎
- 胆汁うっ滞:長引く黄疸やかゆみとして現れる
- 消化器症状の遷延:下痢、嘔吐、腹痛が長く続く場合がある
重症化を予防するためには、基礎疾患のある人ほどワクチン接種と早期診断・治療が重要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本肝臓学会「A型肝炎診療ガイドライン」(https://www.jsh.or.jp/)
厚生労働省e-ヘルスネット「A型肝炎」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
国立感染症研究所「A型肝炎の疫学と対策」(https://www.niid.go.jp/)
日本消化器病学会「ウイルス性肝炎の理解と予防」(https://www.jsge.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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