アルコール性脂肪肝あるこーるせいしぼうかん
アルコール性脂肪肝とは、長期間の多量飲酒により肝臓に中性脂肪が蓄積する病態で、初期には無症状であることが多いものの、放置すれば肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する可能性があります。治療の基本は完全禁酒と生活習慣の改善です。
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アルコール性脂肪肝とは
アルコール性脂肪肝とは、長期間の多量の飲酒によって肝細胞内に中性脂肪が異常にたまった状態を指します。健康な肝臓でも少量の脂肪は存在しますが、過剰な飲酒が続くと脂肪の分解が追いつかず、肝細胞が脂肪で満たされてしまいます。
脂肪の蓄積が5%以上になると「脂肪肝」と診断され、さらに飲酒が継続すると肝臓に炎症や線維化が起こり、「アルコール性肝炎」や「アルコール性肝線維症」へ進行していきます。最終的には「肝硬変」や「肝がん」に至ることもあります。
このようにアルコール性脂肪肝は、いわばアルコール性肝疾患の初期段階であり、無症状でも油断できない病態です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるため、定期的な検診と生活習慣の見直しが不可欠です。
原因
アルコール性脂肪肝の最大の原因は、長期間にわたる多量の飲酒です。飲酒によって肝臓の代謝機能が乱れ、脂肪が肝細胞内に蓄積してしまいます。
主な原因
- 大量の飲酒:男性で1日40g以上、女性で20g以上のアルコール摂取がリスクを高める
- 連日の飲酒:週に5日以上の飲酒習慣が肝臓に負担をかける
- アルコール代謝酵素の個人差:遺伝的にアルコールを分解しにくい体質の人は影響を受けやすい
- 栄養バランスの乱れ:ビタミンやタンパク質の不足は肝細胞の修復を妨げる
- 肥満:飲酒と肥満が重なると、脂肪蓄積がより進行しやすい
- 肝臓の代謝負担:アルコールの分解には大量のエネルギーと酸素が必要であり、他の代謝が抑制されることで脂肪がたまりやすくなる
アルコール性脂肪肝は、飲酒量だけでなく、飲酒の継続年数、飲み方(空腹時飲酒など)、体質にも影響を受けます。
症状
アルコール性脂肪肝の症状は初期にはほとんど現れませんが、脂肪の蓄積が進んだり、炎症が起きたりすると自覚症状が出てくるようになります。
初期(無症状期)
- 無症状:健康診断で肝機能異常を指摘されて発覚することが多い
- 右上腹部の違和感や重さ:肝臓の腫大により圧迫感が出ることがある
- 全身倦怠感:飲酒後の疲れやすさとして現れることもある
- 軽度の食欲不振、吐き気
進行時(アルコール性肝炎〜肝硬変)
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- かゆみ、皮膚の変化(くも状血管腫など)
- 腹水、浮腫、体重減少
- 精神症状(肝性脳症):重症例では意識障害や性格変化も
肝臓に炎症が加わると、症状は一気に重くなるため、無症状の段階での早期発見が重要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診:飲酒量、頻度、期間、家族歴、生活習慣を確認
- 血液検査:AST、ALT、γ-GTP、LDH、ALPなどの肝酵素値を測定
- AST/ALT比が1以上であることが多い - 腹部超音波検査:肝臓の脂肪沈着(白く映る)を確認
- CT・MRI検査:肝脂肪の分布や程度をより詳しく評価
- 肝生検(必要時):他疾患との鑑別や線維化の程度を評価するために行うことがある
治療
- 完全禁酒:最も重要かつ効果的な治療。数週間〜数か月で肝酵素値や脂肪量が改善
- 栄養療法:バランスの取れた食事で肝細胞の再生を促す
- 高タンパク、低脂肪の食事
- ビタミンB群、葉酸、亜鉛などの補給 - 生活習慣の改善:適度な運動と体重管理
- 定期的な通院・検査:再飲酒のリスク管理と進行チェック
- 必要に応じて心理的サポート:アルコール依存傾向が強い場合は専門機関との連携が重要
治療の基本は「禁酒」であり、継続できるかどうかが予後を左右します。
予後
アルコール性脂肪肝の予後は、禁酒できるかどうかに大きく依存します。脂肪肝の段階で禁酒すれば、肝機能は数週間で改善し、完全に正常化することも珍しくありません。
予後が良好なケース
- 早期に発見され、完全に禁酒できた場合
- 肥満や糖尿病などの合併症がなく、栄養状態も良好である場合
- 生活習慣の改善が継続できた場合
注意が必要なケース
- 飲酒を再開してしまう
- すでに線維化が進んでいる(肝硬変の前段階)
- アルコール性肝炎に移行している(発熱、黄疸、肝不全)
- 合併症(糖尿病、高脂血症、うつ病など)がある場合
禁酒を継続できれば、予後は非常に良好です。ただし、再飲酒により肝障害が再発・悪化するため、周囲のサポートや自己管理が不可欠です。
予防
アルコール性脂肪肝の予防には、飲酒の量と頻度のコントロールが最も効果的です。肝臓に負担をかけない生活習慣を日常から意識しましょう。
飲酒習慣の見直し
- 飲酒量を減らす:厚生労働省の基準では、1日20g未満が望ましい(ビール中瓶1本程度)
- 休肝日を設ける:週に2〜3日は完全にお酒を飲まない日をつくる
- 空腹時の飲酒を避ける:肝臓への負担が大きくなるため、食事と一緒に飲む
- 一気飲みを避ける:急激なアルコール負荷は肝細胞を傷つける
生活習慣の改善
- バランスの取れた食事:脂肪・糖質を控えめにし、たんぱく質やビタミンをしっかり摂る
- 適度な運動:肝臓の代謝を活性化させ、脂肪の蓄積を防ぐ
- 体重管理:肥満があると肝脂肪がより蓄積しやすい
- 定期健診の受診:血液検査やエコーで肝臓の状態を把握する
禁酒は難しいと感じる人でも、まずは減酒や休肝日から始めることが予防への第一歩です。
関連する病気や合併症
アルコール性脂肪肝は、放置すると他の肝疾患や全身疾患へと進展する可能性があります。特に継続した飲酒が続いた場合、下記のような病態への移行に注意が必要です。
肝臓の合併症
- アルコール性肝炎:発熱や黄疸を伴う急性の肝炎状態
- 肝線維症:肝細胞の修復過程で線維化が進行
- 肝硬変:肝臓の機能が著しく低下し、回復が困難な状態
- 肝がん:肝硬変を経て発症するケースが多い
全身への影響
- 高脂血症や糖尿病:脂質代謝・糖代謝の異常が進行する
- 膵炎:慢性的な飲酒により膵臓にも炎症が起こる
- 心疾患:アルコールは心筋にも毒性を及ぼすことがある
- 栄養失調:食事よりも飲酒が中心になることで栄養バランスが崩れる
- アルコール依存症:精神的・身体的にアルコールがやめられなくなる
これらを防ぐには、早期からの飲酒制限と継続的な健康管理が必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本肝臓学会「アルコール性肝疾患診療ガイドライン」(https://www.jsh.or.jp/)
厚生労働省e-ヘルスネット「アルコールと肝臓」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
国立国際医療研究センター「アルコール性肝障害の診断と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)
日本消化器病学会「アルコール関連肝障害の基礎知識」(https://www.jsge.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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