ヘルニアへるにあ

ヘルニアとは、体内の臓器や組織が本来の位置から飛び出してしまう状態を指し、代表的なものに鼠径ヘルニアや椎間板ヘルニアがあります。放置すると重症化することがあり、多くは手術が必要です。症状や治療法は部位によって異なるため、適切な診断と管理が重要です。

ヘルニアとは?

ヘルニアとは、体内の臓器や組織が、筋膜や骨、靱帯などの本来の「壁」や「仕切り」を越えて、本来あるべきでない場所に飛び出すことを意味します。語源はラテン語の「突き出る」という言葉に由来し、「脱出」や「逸脱」と訳されることもあります。

医学的に「ヘルニア」と呼ばれる状態にはいくつかのタイプがあります。特に多いのが以下の2種類です。

  • 体幹部のヘルニア(体壁ヘルニア):腹壁や鼠径部などの筋膜のすき間から腸や脂肪などが皮膚の下に脱出する。代表例は鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、臍ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど
  • 脊椎(椎間板)ヘルニア:背骨の間にある椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫し、腰や首に痛みやしびれを引き起こす

いずれも、圧迫や逸脱によって症状を引き起こし、進行すると重大な合併症を伴うことがあるため、早期の診断と治療が必要です。

原因

ヘルニアの原因はその部位によって異なりますが、いずれも「本来あるべき場所を隔てる構造の破綻」または「内部からの圧力増加」がきっかけになります。

体壁ヘルニア(鼠径・大腿・臍・腹壁瘢痕など)

  • 加齢による筋膜や結合組織の脆弱化
  • 妊娠・出産や肥満による腹圧の持続的上昇
  • 慢性的な咳、排便時のいきみ、前立腺肥大による排尿困難
  • 過去の手術による創部の弱化(創ヘルニア)
  • 重いものを頻繁に持つ作業や運動習慣

椎間板ヘルニア

  • 加齢による椎間板の変性と脆弱化
  • 繰り返される体幹のねじれや重労働
  • スポーツや事故による急激な外力
  • 遺伝的な椎間板構造の弱さ
  • 喫煙や運動不足による椎間板の老化促進

これらの要因が重なって、組織が本来の位置を維持できず、ヘルニアとして逸脱してしまいます。

症状

ヘルニアの症状は、脱出する部位や構造物、周囲の組織にどの程度影響を与えるかによって異なります。以下に主な例を示します。

体壁ヘルニア(鼠径・大腿・臍など)

  • 立位や咳などで目立つ膨らみやしこり
  • 圧迫感や違和感、引っ張られるような感覚
  • しこりを押すと戻る(初期)
  • 膨らみが戻らなくなる(嵌頓)と強い痛み、吐き気、嘔吐、便秘など腸閉塞症状
  • 進行すると腸壊死や腹膜炎のリスク

椎間板ヘルニア(頸椎・腰椎)

  • 頸椎ヘルニア:首から肩・腕にかけての痛みやしびれ、筋力低下
  • 腰椎ヘルニア:腰から下肢(臀部〜太もも、ふくらはぎ)にかけての放散痛、しびれ、歩行障害
  • 重症例では膀胱直腸障害(排尿・排便障害)が出ることも

いずれも症状が軽いうちは気づかれにくいですが、進行すると日常生活に大きな支障を来すことがあります。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診と視診・触診:膨らみの部位、可逆性、圧痛の有無を確認(体壁ヘルニア)
  • 画像検査
     - 超音波検査:腸や脂肪の脱出確認に有効(鼠径・大腿ヘルニア)
     - CT検査:腹壁や腹腔内の構造を明確に描出し、嵌頓や閉塞の有無を評価
     - MRI検査:椎間板ヘルニアでは神経の圧迫状況を詳細に描出可能

治療

体壁ヘルニア

- 原則的に外科的手術が必要。脱出物の整復とヘルニア門(脱出部)の閉鎖
 - メッシュ補強を用いた手術が主流(再発防止)
 - 腹腔鏡下手術:回復が早く、創部が小さい

椎間板ヘルニア

- 保存療法が基本(安静、薬物療法、リハビリ)
 - 消炎鎮痛薬、神経ブロックなどを併用
 - 手術は神経症状が強く、保存療法が無効な場合に検討(椎間板摘出術など)

どちらも症状の進行状況と生活の影響を評価し、適切な治療法を選択します。

予後

ヘルニアの予後は、早期に診断され適切な治療を受けたかどうかで大きく左右されます。多くの場合、手術や保存療法により改善が期待できます。

体壁ヘルニアの予後

  • 手術後の再発率は低く、メッシュ法導入により安定した成績
  • 早期に手術を行えば日常生活にほとんど影響を残さずに回復
  • 嵌頓を起こした場合は、腸管切除や合併症によって長期入院が必要になることもある

椎間板ヘルニアの予後

  • 大部分は保存療法で改善
  • 発症から6か月以内に自然軽快する例も多い
  • 手術を行った場合でも再発や慢性的な神経症状が残ることがある

予後を良好に保つためには、治療だけでなく、再発を防ぐ生活指導やリハビリも重要です。

予防

ヘルニアは体の構造上の弱点や老化に伴う変化によって起こりやすくなりますが、以下のような日常的な対策で発症や再発を予防することが可能です。

体壁ヘルニアの予防

  • 便秘を改善し、排便時のいきみを減らす
  • 慢性の咳は早期に治療する(COPD、アレルギー)
  • 腹圧をかけすぎる動作(重い物を持つなど)を避ける
  • 適切な体重管理(肥満予防)
  • 腹筋群を鍛える軽い運動を日常的に取り入れる
  • 妊娠・出産後の腹帯使用や筋力回復のための指導

椎間板ヘルニアの予防

  • 姿勢を正しく保つ
  • 腰に負担をかける作業は避ける
  • 長時間の同一姿勢を避け、適宜ストレッチや運動を行う
  • 体幹筋をバランスよく鍛える
  • 禁煙、適正体重の維持も重要

こうした生活習慣を継続することで、ヘルニアの発症リスクを大きく下げることができます。

関連する病気や合併症

ヘルニアは、特定の基礎疾患や身体的条件によって発症しやすくなり、以下のような関連疾患や合併症を伴うことがあります。

関連疾患

  • 腹圧を高める要因:COPD、慢性便秘、前立腺肥大、腹水
  • 筋膜の脆弱化に関与する疾患:結合組織疾患、慢性炎症、糖尿病
  • 手術歴:開腹手術後の創部から発生する瘢痕ヘルニア

合併症

  • 嵌頓ヘルニア:腸管が戻らず壊死や腸閉塞を引き起こす
  • 腸閉塞:内容物の通過障害による嘔吐や排便停止
  • 腸管壊死:嵌頓の放置によって起こる重篤な状態
  • 膀胱や卵巣の脱出(まれにあり)
  • 神経障害(椎間板ヘルニア):運動麻痺、膀胱直腸障害

ヘルニアと診断されたら、合併症の予防のためにも早めの対処が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本外科学会「ヘルニアの診療ガイドライン」(https://www.jssoc.or.jp/)

日本整形外科学会「椎間板ヘルニアについて」(https://www.joa.or.jp/)

厚生労働省e-ヘルスネット「ヘルニアとは」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

国立国際医療研究センター「体壁・椎間板ヘルニアの管理」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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