パニック障害ぱにっくしょうがい

パニック障害は、突然の激しい不安発作(パニック発作)と、それが再び起きることへの強い不安(予期不安)を特徴とする精神疾患です。外出困難や社会生活への支障をきたすこともあり、薬物療法と認知行動療法による治療が有効です。

パニック障害とは?

パニック障害とは、突然理由もなく強い不安や恐怖が襲ってくる「パニック発作」と、それが再び起きるのではないかという「予期不安」によって、生活に支障をきたす精神疾患です。精神疾患の一つであり、厚生労働省の分類では「不安障害」のカテゴリーに含まれます。

発作の最中には、死んでしまうのではないか、気が狂うのではないかという強い恐怖を伴うのが特徴で、発作そのものは通常10〜30分で自然におさまるものの、その体験があまりに強烈であるために再発への不安が残り、「予期不安」や「広場恐怖」へと発展することがあります。

広場恐怖とは、電車やバス、映画館、混雑した場所など「発作が起きたときに逃げられない場所」や「助けを求められない状況」を避けるようになる症状で、重症化すると一人で外出できなくなるなど、社会生活に重大な影響を及ぼします。

うつ病や他の不安障害との合併も多く、適切な診断と包括的な治療が必要です。治療には薬物療法と認知行動療法が有効とされ、症状のコントロールと再発予防が可能です。

原因

パニック障害の原因は一つに特定されるものではなく、脳の機能異常、性格傾向、生活ストレスなどが複雑に絡み合って発症すると考えられています。

生物学的要因

  • 脳内神経伝達物質の異常(特にセロトニン、ノルアドレナリン、GABA)
  • 扁桃体や前頭前野の機能異常による恐怖や不安の過剰反応
  • 遺伝的素因:一親等にパニック障害のある人は発症リスクが高くなる

心理的・性格的要因

  • 不安を感じやすい体質、感受性の高い性格
  • 完璧主義、自己評価の低さ、過度な責任感
  • 幼少期のトラウマや過保護な養育環境

環境的・生活的要因

  • 仕事や人間関係のストレス
  • 妊娠、出産、更年期などのホルモン変動
  • 引っ越し、結婚、離婚などのライフイベント
  • 睡眠不足、過労、不規則な生活リズム

初めての発作は、何の前触れもなく発症することが多く、身体的な異常と勘違いされやすいため、循環器や内科などの診療科を転々とするケースも少なくありません。

症状

パニック障害の中心的な症状は「パニック発作」です。これは突然発生する、極度の恐怖や不安とそれに伴う身体症状の急激な出現を特徴とします。

パニック発作で現れる主な症状

  • 動悸(心臓がバクバクする)
  • 発汗(手のひらや全身)
  • 震え
  • 息切れ、呼吸困難感
  • 胸部の痛みや圧迫感
  • めまい、ふらつき
  • 吐き気、腹部の不快感
  • 冷感または熱感
  • 身体のしびれ、感覚の麻痺
  • 非現実感、自分が自分でないような感覚
  • 死の恐怖、気が狂うのではないかという恐怖

これらの症状のうち、4つ以上が同時に現れ、数分〜30分程度持続します。発作が起こると、明確な原因がなくても「命に関わるのでは」と強い恐怖を覚えるのが特徴です。

予期不安

  • 「また発作が起きるのではないか」と常に不安にかられる状態
  • 日常生活の中で緊張が続き、精神的に非常に疲弊します

広場恐怖

  • 電車、エレベーター、人混み、会議中など逃げにくい場所を避けるようになる
  • 一人で外出できない、仕事を辞めざるを得ないなど、生活範囲が狭まってしまう

二次的な症状

  • 抑うつ症状(気分の落ち込み、意欲低下)
  • 不眠症、過換気症候群
  • 依存症(アルコール、抗不安薬の自己使用など)

早期に治療を開始すれば、これらの悪循環を断ち切ることが可能です。

診断方法と治療方法

診断方法

1. 問診と診察
・突然の発作の有無、発作時の症状、発作が起きた場所・状況、頻度、予期不安の有無などを詳細に聴取します。

2. DSM-5診断基準
以下の条件を満たす場合、パニック障害と診断されます:
・繰り返される予期しないパニック発作
・発作後1か月以上にわたって以下の1つ以上
 - 再発への強い不安(予期不安)
 - 発作による行動変化(回避行動など)

3. 除外診断
・身体疾患(心疾患、呼吸器疾患、甲状腺機能異常など)を除外するため、必要に応じて心電図、血液検査、胸部レントゲンなどを行います。

治療方法

1. 薬物療法
・抗うつ薬(SSRI、SNRI):長期的な効果があり、第一選択薬
・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系):即効性があるが依存のリスクがあるため短期間に限定
・β遮断薬:動悸などの身体症状に対して補助的に使用されることも

※効果が出るまでに数週間かかることがあり、医師の指導のもと継続が必要

2. 認知行動療法(CBT)
・発作に対する恐怖や誤った認知(「死ぬかもしれない」など)を修正
・曝露療法により回避行動を減らし、日常生活への自信を取り戻す
・薬物療法との併用で効果が高まるとされる

3. 生活習慣の見直し
・過労、睡眠不足、過剰なカフェイン摂取を避ける
・リラクゼーション法(呼吸法、瞑想、ヨガなど)を取り入れる

4. 家族・職場のサポート
・病気への理解と適切な対応が、症状の悪化防止と再発予防につながります

早期に診断され、治療が適切に行われれば、長期的にコントロール可能な疾患です。

予後

パニック障害は適切な治療と生活管理によって、多くの人が改善・回復可能な疾患です。治療に対する反応は個人差があるものの、約6〜7割の患者が症状の大幅な軽減を得られると報告されています。

回復の経過

  • 早期に治療を開始した場合、半年〜1年以内に寛解が得られることが多い
  • 完全な寛解には数年を要することもありますが、薬物・心理療法により社会復帰可能

注意すべき点

  • 治療中断や自己判断による薬の中止は再発の原因となる
  • 慢性化すると予期不安や広場恐怖が強まり、うつ病や不眠などの二次障害を引き起こすことがある

再発予防

  • 症状がなくなっても、一定期間は薬の継続が推奨されます(維持療法)
  • 生活の見直しやストレス対策も継続することが大切

定期的な通院と自己管理を継続することで、長期にわたり安定した生活が可能となります。

予防

パニック障害の明確な予防法は確立されていませんが、発症リスクを減らすためにできる対策は多数あります。

生活習慣の改善

  • 睡眠をしっかりとる(7時間以上の質の高い睡眠)
  • バランスの取れた食事(特にビタミンB群やマグネシウム)
  • 適度な運動(有酸素運動、ストレッチ)
  • カフェインやアルコールの摂取は控えめに

ストレス対策

  • ストレスを溜め込まず、相談できる環境を作る
  • 気晴らしの時間や趣味を持つ
  • 深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れる

早期対応

不安感や動悸、息苦しさなどの初期症状に気づいたら、早めに医療機関を受診することが再発・重症化の防止につながります。

特にストレスの多い時期や環境の変化があるときには、自分の心身の状態に注意を払いましょう。

関連する病気や合併症

パニック障害は、以下のような精神的・身体的な合併症と関連があります。

精神的な合併症

  • うつ病:発作を繰り返すことによる抑うつ状態は非常に多く、40〜60%の患者に見られます
  • 他の不安障害:全般性不安障害、社交不安障害、強迫性障害との重複が多い
  • 心気症:身体の不調に対する過剰な不安

身体的な合併症

  • 過換気症候群:呼吸困難感やしびれなどが強く出る状態
  • 過敏性腸症候群:不安が腸の動きに影響することで下痢や腹痛が出現
  • 睡眠障害:不安や予期不安により入眠困難、中途覚醒が起こる

社会的影響

  • 外出恐怖や通勤困難から就労・学業の継続が困難になる
  • 家族関係や対人関係におけるトラブルが生じることも

これらの合併症を予防・改善するためにも、パニック障害は早期診断・治療と継続的な支援が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本精神神経学会「パニック障害 診療ガイドライン」(https://www.jspn.or.jp/)

 MSDマニュアル プロフェッショナル版「パニック障害」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)

厚生労働省 e-ヘルスネット「パニック障害」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

関根 要子医師 デイリースキンクリニック

帝京大学 医学部 卒

帝京大学医学部卒業後、精神科の常勤医師として日本医科大学と根岸病院にて従事。患者様のこころに寄り添いながら適切な医療を提供。その後、医療スキンケアという、日々の気持ちを左右する美容医療の分野へ転身。痩身専門クリニックや、美容のクリニックでの勤務を経て、DAILYSKINCLINICの医師を担当。

精神科医の専門医であることから、患者様の気持ちに寄り添う診療を心がけております。
ご体調のことや、不安なことがあればなんでもご相談ください。

  • 公開日:2025/07/07
  • 更新日:2025/07/07

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