心筋炎しんきんえん

心筋炎は心筋に炎症が起きる疾患で、主にウイルス感染が原因です。胸痛や動悸、息切れなどを伴い、重症化すると心不全や突然死の原因にもなります。診断には血液検査やMRIが用いられ、安静と薬物治療が基本です。

心筋炎

心筋炎とは?

心筋炎は、心臓の筋肉である「心筋」に炎症が生じる疾患です。心筋細胞がウイルスや自己免疫反応などの攻撃により障害を受け、心臓の収縮やリズムに異常をきたします。炎症の程度や範囲によって症状は軽度から重篤まで幅広く、突然死を引き起こすこともあるため注意が必要です。

心筋炎は小児から高齢者まで全年齢層に発症する可能性があり、特に風邪や胃腸炎のあとに発症することが多く見られます。多くの症例で自然回復しますが、一部では急激に進行して重篤な心不全や不整脈を伴う劇症型心筋炎となる場合があります。

炎症による心筋の障害が心臓の収縮機能に影響し、心拍出量の低下、心不全、不整脈などを引き起こします。また、心筋壊死に伴う心電図変化や、心筋逸脱酵素の上昇が診断の手がかりとなります。

心筋炎は稀ではありますが、早期の診断と治療介入が予後を大きく左右する重要な疾患です。発熱や倦怠感といった一般的な感染症状に加え、胸痛や息切れなどが出現した場合には心筋炎を疑う必要があります。

見されることもあります。診断には心エコーが有用で、重症例では外科的治療が推奨されます。

原因

心筋炎の原因は多岐にわたりますが、主に感染症、免疫反応、薬剤などが挙げられます。以下に主な原因を示します。

ウイルス感染(最も一般的)

  • コクサッキーウイルスB群、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パルボウイルスB19
  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)も心筋炎の原因となることが報告されている
  • ウイルスが心筋に直接感染、または免疫応答による二次的な炎症が起こる

細菌感染

  • ジフテリア菌、レプトスピラ、リケッチアなど
  • 敗血症に伴う二次的な心筋障害

真菌・寄生虫感染

  • カンジダ、アスペルギルス、トキソプラズマ、シャーガス病など
  • 免疫不全状態での発症が多い

自己免疫疾患

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、サルコイドーシス
  • 免疫反応による自己心筋の攻撃が原因

薬剤・毒素

  • 抗がん剤(アントラサイクリン系など)、免疫チェックポイント阻害薬
  • アルコール、コカインなどの薬物乱用

ワクチン接種後

  • ごくまれにmRNAワクチン接種後に心筋炎が報告されており、主に若年男性に多い

その他

  • 放射線治療、炎症性心筋症、原因不明の特発性

原因によって治療方法が異なるため、正確な診断が非常に重要となります。

症状

心筋炎の症状は、炎症の程度や範囲、患者の年齢や基礎疾患によって大きく異なります。軽症では風邪のような症状のみで済むこともありますが、重症例では生命を脅かすことがあります。

初期症状

  • 発熱、喉の痛み、咳、倦怠感、食欲不振:ウイルス感染による前駆症状
  • 腹痛や下痢など消化器症状を伴うこともある

心臓に関連した症状

  • 胸痛:胸部圧迫感や鋭い痛みが見られる。心膜炎を合併している場合もある
  • 動悸、不整脈:心筋の炎症により異常な電気信号が発生
  • 息切れ、呼吸困難:心拍出量の低下により肺うっ血が生じる
  • むくみ、体重増加:心不全による末梢浮腫
  • めまい、失神:心拍数の低下や致死性不整脈が原因

身体的変化の医学的説明

  • 炎症により心筋細胞が壊死または変性し、収縮機能が低下
  • 心電図ではST変化やT波異常、QRS幅の拡大、不整脈が出現
  • 血液検査ではCK-MBやトロポニンT/Iの上昇がみられる
  • 心エコーで左室収縮能低下や心腔拡大を確認
  • 心臓MRIでは炎症部位の描出が可能で、非侵襲的に診断可能

重症型(劇症型心筋炎)の特徴

  • 急速に心機能が低下し、数時間〜数日で心原性ショックに陥る
  • 致死性不整脈(心室頻拍・心室細動)を伴うこともあり、緊急対応が必要

心筋炎は風邪や感染症の回復期に見逃されやすい疾患であり、上記のような症状がある場合には早期受診と精密検査が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  1. 問診・身体診察
    ・ウイルス感染の既往や症状の経過、胸痛の性状、不整脈の有無を確認
  2. 血液検査
    ・心筋逸脱酵素(CK-MB、トロポニンT/I)の上昇
    ・炎症反応(CRP、白血球数の増加)
    ・BNPの上昇:心不全の重症度評価に用いる
  3. 心電図
    ・ST-T変化、Q波、房室ブロック、心室性不整脈などがみられる
    ・心筋梗塞との鑑別が重要
  4. 胸部X線
    ・心拡大や肺うっ血の有無を確認
  5. 心エコー(超音波検査)
    ・心筋の動きの異常、左室機能の低下、心膜液の有無を評価
  6. 心臓MRI
    ・炎症部位の描出が可能で、非侵襲的に正確な診断が可能
    ・Late Gadolinium Enhancement(LGE)によって心筋障害を視覚化
  7. 心筋生検
    ・確定診断を行うために必要なこともある
    ・巨細胞性心筋炎や好酸球性心筋炎など特殊型の診断に有用

治療

  1. 安静療法
    ・軽症例では安静と経過観察が基本
    ・運動は心筋への負担を増やすため、完全休養が必要
  2. 薬物療法
    ・心不全症状には利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬など
    ・不整脈に対しては抗不整脈薬を使用(ただし注意が必要)
    ・ステロイドや免疫抑制薬は自己免疫性や特定の原因による場合に使用される
  3. 補助循環療法(重症例)
    ・心原性ショックではIABP、PCPS(経皮的心肺補助装置)の導入
    ・人工心肺装置や補助人工心臓(VAD)の装着も検討される
  4. 抗ウイルス薬・抗菌薬
    ・明確な感染源が特定された場合に限り使用(多くは対症療法)
  5. 心臓移植
    ・心筋炎による不可逆的心機能低下で、他の治療が無効な場合に最終手段として選択

心筋炎は原因に応じた個別治療が求められ、特に劇症型では迅速な集中治療が予後を大きく左右します。

予後

心筋炎の予後は、発症の型や重症度、早期治療の可否によって大きく異なります。

良好な予後

  • 軽症例や一過性のウイルス性心筋炎では、多くが完全に回復
  • 症状が軽く、心機能が保たれていれば特別な治療なく自然治癒する

不良な予後

  • 劇症型心筋炎では急激な心機能低下により、短期間で死亡に至ることがある
  • 心室性不整脈や心室細動による突然死のリスク
  • 心筋の線維化が進行すると、慢性心不全や拡張型心筋症に移行

再発のリスク

  • 再発はまれだが、自己免疫性や特発性心筋炎では注意が必要
  • ウイルス性心筋炎の再感染や別の誘因による再発も考慮される

長期予後の管理

  • 心機能の定期的な評価(心エコー、BNP、心電図など)
  • 運動制限の指導や服薬管理を継続
  • 生活指導と感染予防も重要

心筋炎の経過は多様であり、軽症であっても無理を避け、医師の指導に従うことが回復と再発予防に繋がります。

予防

心筋炎は完全に予防することが難しい病態ですが、感染症の予防と早期対応が重要です。

感染予防

  • ウイルス感染が主因のため、手洗い・うがい・マスク着用など基本的な感染対策を徹底
  • インフルエンザや新型コロナウイルスなどのワクチン接種も予防に有効
  • 風邪症状があるときには無理な運動や仕事を避け、十分な休養を取る

生活習慣の見直し

  • 睡眠不足や過労、ストレスは免疫力低下を招きやすいため、規則正しい生活を心がける
  • バランスの取れた食事と適度な運動で体力と免疫力を維持

薬剤や毒素への注意

  • 抗がん剤など心毒性のある薬剤使用時は定期的な心機能評価を行う
  • アルコールや違法薬物の乱用を避ける

持病の管理

  • 自己免疫疾患を持つ人は定期的なフォローと、急な体調変化に注意が必要

心筋炎は早期に兆候に気づくことと、無理をしないことが予防と重症化防止において最も効果的です。

関連する病気や合併症

心筋炎は他の疾患と関連・合併することが多く、以下の病態に注意が必要です。

心不全

  • 心筋の収縮力が低下し、左室駆出率(EF)が下がることで慢性心不全に移行
  • 浮腫、息切れ、体重増加などの症状が持続する

不整脈

  • 心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動などの致死性不整脈
  • 房室ブロックや徐脈性不整脈も出現しうる

劇症型心筋炎

  • 急激な心機能悪化と多臓器不全に進行し、集中治療が必要
  • 心肺補助(PCPS)や心臓移植が必要となることもある

心膜炎の合併

  • 心筋炎に伴い心膜にも炎症が波及することで胸痛や心嚢液が増加

自己免疫疾患との関連

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、好酸球性疾患などが原因となることがある

感染症との合併

  • ウイルスや細菌感染により多臓器炎症を伴うことがある(心筋炎+肺炎など)

慢性化・心筋症への移行

  • 炎症後に線維化が残存し、拡張型心筋症へ進行することも

心筋炎は単独でも重篤ですが、関連疾患や合併症の早期発見・管理が、全身状態の維持と生命予後の改善に繋がります。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本循環器学会「心筋炎診療ガイドライン」(https://www.j-circ.or.jp/)

MSDマニュアル プロフェッショナル版「心筋炎」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)

厚生労働省 e-ヘルスネット「心筋炎」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

■ この記事を監修した医師

石見 成史医師 いしみ内科・心臓内科クリニック

大阪医科大学 卒業

父、祖父の代より60年以上、地元の健康を守るお手伝いをしてきました。
今まで循環器内科を専門として、心不全、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症(足の痛みや、足の傷など)を主に治療してきました。
これからは父が行ってきた診療に加え、胸の症状(動悸、息切れ、胸の痛みなど)、足の症状(足の痛み、傷など)などで困ることがあればいつでもご相談ください。

2011年3月 大阪医科大学卒業
2011年4月 大阪大学医学部付属病院 初期研修医
2012年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 初期研修医
2013年4月 大阪大学医学部付属病院 循環器内科 入局
2013年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 心臓内科
2016年4月 JCHO星ヶ丘医療センター 循環器内科
2019年7月 大阪南医療センター 循環器内科
2021年1月 医療法人 石見医院 継ぐ

  • 公開日:2026/02/17
  • 更新日:2026/02/17

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