ガス壊疽がすえそ

ガス壊疽は、土や腸内にいる嫌気性菌(クロストリジウムなど)が傷口から入り、筋肉などが急速に壊死する重い感染症です。強い痛みや腫れ、皮膚の変色とともに全身状態が急速に悪化し、放置すると命に関わるため、緊急の治療が必要です。

⚫︎ガス壊疽とは?

ガス壊疽は、主にクロストリジウム属という嫌気性菌(酸素の少ない環境を好む細菌)が、筋肉や皮下組織に感染して起こる重篤な感染症です。細菌が毒素とガスを産生しながら急速に広がり、筋肉などの組織が壊死(死んでしまうこと)していきます。
交通事故や鋭いケガ、手術後の創部、血流が悪くなった足の傷、糖尿病や免疫低下のある方の褥瘡(床ずれ)などがきっかけとなりやすく、症状の進行が非常に速いのが特徴です。数時間〜1日程度で、局所の変化に加えて全身状態がショックに陥ることもある危険な病気です。

⚫︎ガス壊疽の原因

ガス壊疽の主な原因は、嫌気性菌が「酸素の少ない深い傷や壊死した組織」に入り込んで増えることです。

原因となる主な細菌

クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)を代表とするクロストリジウム属の細菌のほか、一部では連鎖球菌や大腸菌などが関与することもあります。

きっかけになりやすい状況

  • 交通事故・災害・工場事故などによる深い汚染創(泥や砂、衣服片などが入り込んだ傷)
  • 貫通創、刺し傷、挫滅創(押しつぶされた傷)
  • 手術後の創部感染
  • 糖尿病や閉塞性動脈硬化症などで血流が悪くなった足の傷、褥瘡
  • がんやステロイド治療、免疫抑制薬使用などによる免疫力低下

血流が悪い部位や、壊死した組織は酸素が少なく、嫌気性菌が増えやすい環境です。そのため、糖尿病や重症下肢虚血(重い血行障害)を持つ方では、足の小さな傷からガス壊疽に至ることもあります。

⚫︎ガス壊疽の症状は?

ガス壊疽は「局所の症状」と「全身の症状」が短時間で進行します。

〈局所の症状〉

非常に強い痛み

見た目の腫れよりも「痛みが強すぎる」ことが特徴で、触れられないほどの激痛になることがあります。

腫れと皮膚の変色

患部が急速に腫れ、皮膚の色が赤〜紫〜黒っぽく変化します。進行すると水ぶくれ(水疱)や血まめができることもあります。

ガスによる「パチパチ」「ギュッ」という感触(捻髪音)

皮膚の下にガスがたまり、押すとパチパチとした感触や音がすることがあります。

これらは敗血症(菌や毒素が血液中に回る状態)やショックに進行しているサインであり、命に関わる緊急事態です。

注意ポイント

  • ケガの数時間〜1日以内に急に痛みや腫れがひどくなる
  • 皮膚の色がどんどん変わる、ガスが溜まっているような感触がある
  • 全身の具合が急に悪くなる

このような場合は「様子を見る」のではなく、救急車を含めた早急な受診が必要です。

⚫︎受診の目安

ガス壊疽は、疑った時点で救急対応が必要な病気です。

深いケガや手術後の傷があり
→ 数時間〜1日で痛みと腫れが急速に悪化している

  • 皮膚の色が赤〜紫〜黒っぽく変化してきた
  • 傷のまわりが冷たく・硬く・強く腫れている
  • 押すと皮膚の下で「パチパチ」「ギュッ」という感触がある
  • 発熱、寒気、脈が速い、息苦しい、意識がもうろうとする

これらが1つでも当てはまる場合は、夜間や休日であっても救急外来の受診を強くおすすめします。救急要請(119番通報)が必要なケースも多い病気です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、
「どのようなケガ・持病があるか」といった問診、
患部の外見や触ったときの感触、
全身状態の評価に加え、血液検査や画像検査、細菌検査などを組み合わせて行います。

ただし、ガス壊疽は進行が極めて早いため、「疑った時点で緊急手術を優先する」ことが多く、検査結果を待っているあいだに治療を遅らせないことが重要です。

治療は大きく以下の3本柱です。

  • 壊死した組織を切除する外科的治療(デブリードマン、必要に応じて切断)
  • 広域の抗菌薬を用いた点滴治療
  • 集中治療室(ICU)などでの全身管理(ショックや臓器障害への対応)

施設によっては、高気圧酸素療法(高い気圧の部屋で100%酸素を吸う治療)を併用し、組織への酸素供給を助けたり、毒素の影響を減らしたりします。

⚫︎ガス壊疽の診断

1)問診・診察

  • どのようなケガや手術歴があるか、発症からの時間、持病(糖尿病、血管の病気、免疫低下など)を詳しく確認します。
  • 患部の色、腫れ、温度、ガスの有無(触ったときのパチパチした感触)、ニオイなどを慎重に評価します。

2)血液検査

炎症反応(白血球、CRP)、腎機能や肝機能、血小板、乳酸値などを調べ、全身状態やショックの程度を把握します。

3)画像検査

  • 単純X線写真:筋肉や皮下に「ガス像」が見えることがあります。
  • CTやMRI:どの範囲まで感染や壊死が広がっているかを詳しく確認し、手術の範囲を決める参考にします。

4)細菌学的検査

  • 創部の浸出液や組織を採取し、顕微鏡での確認(グラム染色)や培養検査で原因菌を特定します。
  • 治療は「疑った時点で」開始し、検査結果は後から抗菌薬の微調整に役立てます。

⚫︎ガス壊疽の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

緊急入院と全身管理

血圧・脈拍・呼吸・尿量などをモニタリングし、点滴や酸素投与でショックへの対応を行います。

速やかな抗菌薬治療

広い範囲の細菌に効く抗菌薬を静脈注射(点滴)で投与し、クロストリジウムに有効な薬剤を組み合わせます。医療機関のガイドラインに沿って選択されます。

疼痛管理

強い痛みが出るため、適切な鎮痛薬で痛みを和らげます。

B. 外科的治療(手術)

デブリードマン(壊死組織の除去)

壊死した筋肉や皮下組織を切除し、細菌が増えやすい環境を取り除きます。1回の手術で終わらず、状態を見ながら何度か追加で行われることもあります。

患肢切断

感染が広範囲で、生命を守るためにやむを得ない場合には、腕や脚の一部を切断せざるを得ないことがあります。つらい決断ですが、命を救うための治療です。

C. 補助的治療と回復期の管理

高気圧酸素療法

可能な施設では、高い気圧の環境下で酸素を吸入し、低酸素状態の組織に酸素を届けやすくすることで、治療を補助します。

臓器サポート

重症例では集中治療室で、人工呼吸器や循環を支える薬、腎障害に対する血液透析などが必要になることがあります。

⚫︎ガス壊疽の予後

ガス壊疽は、発症から治療開始までの時間によって予後(治りやすさ・後遺症の残り方)が大きく変わります。

早期に気づき、速やかに手術と全身治療が行われた場合

救命できる可能性が高まりますが、壊死の範囲によっては機能障害や四肢切断などの後遺症が残ることがあります。

受診や治療が遅れた場合

毒素や菌が全身に回り、敗血症性ショック、多臓器不全に至ると、死亡率が高くなります。

糖尿病や高度な血管障害、免疫低下のある方では重症化しやすく、より慎重な経過観察が必要です。

⚫︎ガス壊疽の予防

完全に防ぐことは難しいものの、次のような工夫でリスクを下げることができます。

ケガをしたとき

  • 土や泥、さびた金属、動物にかまれた傷などは、すぐにきれいな流水でよく洗い流す
  • 深い傷や広い傷、汚染が強い傷は早めに医療機関で診てもらう
  • 自己判断で消毒だけして放置せず、痛みや腫れが強いときは受診する

持病のある方(糖尿病・血管の病気など)

  • 血糖コントロールや血圧・脂質の管理を続け、足の血流悪化を防ぐ
  • 毎日、足の裏や指の間の小さな傷・タコ・水ぶくれがないか確認する
  • 靴ずれや小さな傷でも、赤みや腫れが続く場合は早めに受診する

手術後・寝たきりの方

  • 創部や褥瘡のケアを医療スタッフの指示どおりに行う
  • 同じ部位に長時間体重がかからないよう、姿勢を変える・体位変換をする

これらは、ガス壊疽だけでなく他の重い感染症の予防にもつながります。

⚫︎ガス壊疽に関連する病気や合併症

壊死性筋膜炎

皮膚の下にある筋膜が急速に壊死する重症感染症で、ガス壊疽と似た経過をとることがあります。

蜂窩織炎・深部軟部組織感染症

皮膚や皮下組織の細菌感染が深く広がった状態で、進行するとガス壊疽に近い重症度になることがあります。

敗血症・敗血症性ショック

細菌や毒素が血流に乗って全身に広がり、血圧低下や臓器不全を来す、命に関わる状態です。

DIC(播種性血管内凝固)

全身の血管で血液が固まりやすくなり、同時に出血もしやすくなる重い血液の合併症です。

⚫︎まとめ

ガス壊疽は嫌気性菌の感染により筋組織に広範な壊死を生じる、致死率の高い急性感染症です。臨床的な特徴として、急激に拡大する浮腫や皮膚の変色、および触診によるガス捻髪音(プチプチとした感触)が認められます。
本症の治療は一刻を争い、壊死組織を広範囲に除去する外科的切除(デブリードマン)と、適切な抗菌薬の投与、さらには集中治療による全身管理を並行して行う必要があります。

初期段階で異常を察知し、迅速に高度な救急医療体制の整った施設へ受診することが、救命率の向上および機能予後の改善における極めて重要な鍵となります。自己判断で様子を見ることなく、疑わしい所見がある場合は直ちに医療機関にご相談ください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/06
  • 更新日:2026/03/06

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