原虫感染症げんちゅうかんせんしょう

原虫は、小さな虫や原虫が体内に住みつくことで起こる病気です。下痢や腹痛、体重減少、貧血、かゆみなど多様な症状が出ることがあり、汚染された水や食べ物、生魚・生肉、土いじり、ペットなどからうつります。多くは適切な検査と駆虫薬(寄生虫を退治する薬)で治療が可能です。

⚫︎原虫とは?

原虫とは、1個の細胞だけでできた、とても小さな「単細胞」の生き物です。ゾウリムシやアメーバの仲間で、動き回ったり、他の生き物を取りこんで栄養にしたりする性質があります。

このうち、人や動物の体の中にすみついて病気を起こすものを「病原性原虫」と呼びます。
腸に感染して下痢を起こす原虫(赤痢アメーバ、ジアルジア、クリプトスポリジウム など)血液や臓器に感染する原虫(マラリア原虫、トキソプラズマ など)

原虫は、シスト・オーシストとよばれる「殻に包まれた形」で環境中に長く生き残るものや、蚊・サシチョウバエなどの虫に運ばれて人にうつるものがあり、ウイルスや細菌とはまた違った特徴をもつ病原体です。

 

⚫︎原虫感染症の原因

原虫による感染は、種類によってうつり方が異なりますが、代表的なものは次の通りです。

汚染された水や食べ物

  • 十分に消毒されていない水道水、井戸水、プールや噴水などの水
  • シスト(原虫のたまごのような形)で汚染された生野菜、生の貝類 など

→ クリプトスポリジウム症、ジアルジア症、アメーバ赤痢 など

蚊などの虫を介した感染

  • マラリア原虫は、マラリア原虫を持つハマダラカという蚊に刺されることでうつります

→ 熱帯・亜熱帯地域への渡航歴が重要な手がかりになります。

 

⚫︎原虫感染症の症状は?

原虫の種類、すみつく場所(腸・血液・脳・肝臓など)や、患者さんの免疫力によって症状はさまざまですが、代表的なものは次のようなものです。

腸の原虫による症状

  • 水のような下痢、粘液や血が混じる下痢
  • 腹痛、腹部の張り、吐き気・嘔吐
  • 長く続くお腹の不調や体重減少

血液・臓器の原虫による症状

  • マラリア:高い熱が周期的に出る、悪寒、頭痛、倦怠感、貧血など
  • トキソプラズマ:発熱、リンパ節の腫れ、筋肉痛など。妊娠中の初感染では、胎児に影響が出ることがあります

免疫力が低い方での重症化

  • HIV感染症や抗がん剤治療中などで免疫が落ちている方では、クリプトスポリジウムなどによる止まらない下痢や脱水、原虫が全身に広がる重い感染症になることがあります

 

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めに内科・小児科・消化器内科、または感染症内科などを受診することをおすすめします。

  • 1週間以上続く原因不明の下痢、腹痛、体重減少がある
  • 海外(特に熱帯・発展途上国)から帰国後に発熱や寒気、下痢が続く
  • 妊娠中、または妊娠を希望していて、ネコの糞や生肉に触れる機会が多い
  • 免疫が弱い状態(HIV感染症、抗がん剤・ステロイド治療中など)で長引く下痢・発熱がある
  • 高い熱がくり返し出たり、強い倦怠感で日常生活に支障がある

「海外で感染する病気」というイメージの強い原虫感染症もありますが、日本国内でも水や食べ物、動物を介してうつるものがあります。不安な場合は自己判断せず、医療機関で相談してください。

 

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、症状に加えて「どこに行ったか」「何を食べたか」「どんな動物や虫と関わったか」などの問診と、便検査・血液検査・画像検査などを組み合わせて行います。

治療は、原因となる原虫の種類に合わせた薬(抗原虫薬・駆虫薬)を使うことが基本です。脱水・栄養低下・貧血などの全身状態を整える治療も同時に行います。妊婦さんや免疫不全の方では、薬の選び方や入院の必要性などを慎重に検討します。

 

▶︎原虫の診断

1)問診・診察

  • 症状の経過(いつから、どんな症状か)、海外渡航歴、飲食歴(生水・生野菜・生肉・生魚など)、ネコや家畜との接触、虫刺されの有無、性行為の状況などを詳しくうかがいます
  • 全身状態、皮膚の発疹、リンパ節の腫れ、お腹の痛みや肝・脾臓の腫れなどを診察します

2)便検査

  • 腸の原虫が疑われるときは、便を採取して顕微鏡で原虫やシストを探します
  • 特殊な染色や抗原検査、PCR(遺伝子検査)で、クリプトスポリジウムなどを詳しく調べることもあります

3)血液検査

  • 貧血や白血球、炎症反応、肝機能などを確認します
  • マラリアでは、血液塗抹標本という検査で、赤血球の中のマラリア原虫を確認します

4)抗体検査・その他

  • トキソプラズマなど一部の原虫では、血液中の抗体(過去に感染したか、今まさに感染しているかの目印)を測定します。妊婦健診などで行われることがあります
  • 症状や疑われる病気に応じて、腹部エコー、CT、MRIなどで臓器の状態を確認します

 

▶︎原虫の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

  • 水分・電解質の補給:下痢や発熱がある場合、脱水を防ぐために水分と塩分の補給が重要です
  • 安静・栄養:消化のよい食事を少量ずつ摂り、体力の回復を図ります
  • 必要に応じて解熱鎮痛薬や吐き気止めを使用します(薬の選択は医師が行います)

B. 原虫に対する薬物治療

マラリア原虫の種類や流行地域、重症度に応じて、アーテミシニン系薬、キニーネ系薬などを組み合わせて治療します。重症例では入院して点滴での治療が必要です。

トキソプラズマ症

  • ピリメタミンやスルファ剤などの組み合わせが用いられることがあります。妊娠週数や胎児への影響を考えながら治療法を選択します

腸の原虫(ジアルジア、クリプトスポリジウムなど)

  • 一部の原虫にはメトロニダゾール、ニタゾキサニドなどが有効とされますが、日本で使える薬には制限もあり、支持療法(脱水を防ぐ治療)が中心となることもあります

C. 重症例・免疫不全の患者さんへの対応

免疫が弱い方では、長期の薬物治療や入院管理が必要になることがあります。

輸血や集中治療が必要になることもあり、専門医と連携して慎重に治療を進めます。

 

⚫︎原虫の予後

多くの原虫感染症は、早期に診断して適切な治療を行えば、後遺症なく回復することが期待できます。

  • マラリアの一部や、HIV感染症などで免疫が弱い方のクリプトスポリジウム症などは、命にかかわることがあり、早期の受診・治療がとても重要です
  • 妊娠中のトキソプラズマ感染では、胎児に障害が残る可能性があり、妊婦健診での検査・指導が大切です
  • 治療後も、一定期間は再発や別の合併症がないかを確認するために、医師の指示どおり通院して検査を受けることが望まれます

 

⚫︎原虫の予防

原虫感染を完全にゼロにすることは難しいものの、次のような対策でリスクをかなり減らすことができます。

食事と水

  • 海外では、生水や氷、屋台の飲み物に注意し、できるだけ加熱された食べ物を選ぶ
  • 生肉・生ハム・レアステーキ・生の魚介類は、信頼できる店でも食べ過ぎないようにし、妊娠中は避ける
  • 生野菜や果物はきれいな水でよく洗う

動物・土とのかかわり方

  • ネコのトイレ掃除や土いじりの後は、石けんでよく手を洗う。妊娠中は可能なら他の家族に担当してもらう
  • ガーデニングや農作業では手袋を使い、食事前に手洗いをする

 

⚫︎原虫に関連する病気や合併症

原虫は、さまざまな病気や合併症の原因になります。代表的なものを挙げます。

  • マラリア:高熱や貧血、重症例では意識障害や多臓器不全
  • トキソプラズマ症:リンパ節腫脹、筋肉痛。妊娠初期感染では流産や胎児の脳・眼の障害の原因になることがあります
  • クリプトスポリジウム症:長引く水様性下痢、免疫不全の方では重い脱水や栄養障害
  • アメーバ赤痢:血便を伴う下痢、肝膿瘍(肝臓に膿がたまる病気)など
  • ジアルジア症:慢性的な下痢や体重減少、子どもの発育への影響

これらは、適切な検査と治療で多くがコントロール可能ですが、放置すると重い合併症や後遺症を残すこともあるため、早めの診断・対応が重要です。

 

⚫︎まとめ

原虫は、非常に小さな単細胞の寄生生物で、人の腸や血液、臓器にすみついて病気を起こします。
汚染された水や食べ物、蚊やネコなどの動物を介してうつることが多く、下痢や発熱、貧血、妊娠中の合併症など、症状は多彩です。
早めに受診して検査を受けることで、多くの原虫感染症は薬で治療が可能です。
海外渡航や生肉・生魚、ペットとの生活が身近になった今、日頃から予防と早期受診の意識をもっていただくことが大切です。

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/06
  • 更新日:2026/03/06

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