緑膿菌感染症りょくのうきんかんせんしょう
緑膿菌感染症は、湿った場所に広く存在する「緑膿菌」という細菌が、免疫力の落ちた人や入院中の方などに起こす感染症の総称です。肺炎・尿路感染症・傷の感染・敗血症などさまざまな形をとり、多くの抗菌薬が効きにくい(薬剤耐性)菌も多いため、早めの受診と適切な治療・予防が大切です。
目次
⚫︎緑膿菌感染症とは?
緑膿菌感染症とは、「緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)」という細菌が体のいろいろな場所に感染して起こる病気の総称です。
緑膿菌は
- 土や水(川・池・水たまり)
- 家庭内の水回り(流し台・お風呂・排水口)
- 植物の表面や動物の体
など、身の回りの環境に普通にいる細菌です。湿った場所を好み、ぬるっとした汚れの中で増えやすい性質があります。
- 高齢の方
- がん・糖尿病・腎臓病・肺の慢性疾患などの持病がある
- 長期入院中、集中治療室で治療中
- 点滴の管(カテーテル)や人工呼吸器、尿道カテーテルが入っている
- 大きなやけどや手術後の傷がある
また緑膿菌は多くの抗菌薬(抗生物質)に抵抗性を持ちやすく、「薬剤耐性緑膿菌感染症」として感染症法上の5類感染症にも指定されています。
⚫︎緑膿菌感染症の原因
原因となる菌
緑膿菌は「グラム陰性桿菌(ぐらむいんせいかんきん)」というタイプの細長い細菌で、青緑色の色素を出すことが特徴です(実際の培地では青緑色のコロニーとして見えます)。
どこにいる?
- 土・水・植物・動物の体表など自然界に広く存在
- 家庭や病院の流し台・排水口・加湿器・シャワーホースなど水回り
- 長く使われた湿った器具やチューブの内部
体への入り方
- 肺や気道:吸い込んだ空気や痰(たん)を介して肺炎や気管支の感染を起こす
- 尿路:尿道カテーテルを通じて膀胱や腎臓に感染(尿路感染症)
- 傷口・やけど:傷に菌がついて、膿が出る傷の感染
かかりやすい人
- 高齢者、乳幼児
- 糖尿病・がん・慢性肺疾患(COPD、気管支拡張症など)のある人
- ステロイドや免疫抑制薬を使っている人
- 長期入院中、人工呼吸器・カテーテルなどが入っている人
このような方では、体の中に緑膿菌が「すみつく(保菌)」だけでなく、実際に感染症として症状を出しやすくなります。
⚫︎緑膿菌感染症の症状は?
緑膿菌は体のいろいろな場所に感染するため、症状も多彩です。主なものを部位別にまとめます。
呼吸器(肺・気管支)の感染
- 発熱、悪寒
- 黄色〜緑色のドロッとした痰、痰の量が増える
- 咳や息切れ、胸の痛み
- もともと気管支拡張症などがある方では、緑膿菌が住みつくことで、肺の炎症をくり返し、呼吸不全に進むこともあります。
尿路感染(膀胱炎・腎盂腎炎など)
- 排尿時の痛み・しみる感じ
- 尿の回数が増える、残尿感
- 発熱や腰・背中の痛み(腎盂腎炎を疑う症状)
- 尿道カテーテル留置中の方では、発熱や意識がぼんやりするなど、典型的でない症状になることもあります
皮膚・傷口・やけどの感染
- 傷口の赤み・腫れ・熱感(あたたかく感じる)・痛み
- 緑がかった膿(うみ)や独特のにおいが出ることがあり、緑膿菌を疑う手がかりになります
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関の受診を検討してください。
- 発熱が続き、咳・痰、排尿時の痛み、傷口の悪化など、どこか一部に感染を疑う症状がある
- 黄色〜緑色の膿のような痰や傷の分泌物が増えてきた
- 高齢の方や持病がある方で、食欲低下・倦怠感・いつもと様子が違う
- 長期入院中・カテーテルや人工呼吸器などの医療機器を使っていて、発熱や呼吸状態の悪化が見られる
救急受診を急いだほうがよい目安
- 高熱とともにぐったりしている、意識がぼんやりす
- 息が苦しい、胸の痛みが強い
- 血圧が低い、立てないほどのめまい、尿が極端に少ない
- 急に強い耳の痛み・顔のゆがみ・視力低下が出てきた
→ 一般内科・呼吸器内科・泌尿器科・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科など、症状に応じた診療科で相談してください。重症が疑われる場合は、救急外来の受診が必要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、「どの部位にどのような症状が出ているか」「基礎疾患や入院の有無」「どの検体から緑膿菌が検出されたか」を総合的に判断して行います。
治療の柱は
- 感染部位に応じた抗菌薬治療
- 原因となっているカテーテルなどの器具の見直し
- 全身状態を安定させる支持療法(点滴・酸素投与など)
- 基礎疾患(糖尿病や慢性肺疾患など)のコントロール
緑膿菌は多くの薬に耐性を持ちやすいため、培養検査の結果(どの薬が効くか)を踏まえた薬選びが重要になります。
⚫︎緑膿菌感染症の診断
1)問診・診察
- 発熱の経過、咳・痰・排尿症状・傷の状態などを詳しく確認します。
- 最近の入院歴、手術歴、カテーテル・人工呼吸器・透析などの使用状況を確認します。
- 持病(糖尿病・がん・慢性肺疾患・腎疾患など)や服用中の薬(ステロイド・免疫抑制薬など)も大切な情報です。
2)検体検査(培養・顕微鏡検査など)
- 痰、尿、傷口の分泌物、耳だれ、血液などから菌を培養し、緑膿菌かどうかを確認します。
- 同時に、どの抗菌薬がどの程度効くか(薬剤感受性試験)を行い、治療薬の選択に役立てます。
3)血液検査
炎症反応(白血球数・CRPなど)、腎機能・肝機能、電解質バランスなどを評価し、全身状態や重症度を把握します。
4)画像検査
- 呼吸器症状がある場合は、胸部レントゲンやCTで肺炎の有無や広がりを確認します。
- 尿路感染では、エコー検査などで尿の流れや腎臓の状態を確認することがあります。
⚫︎緑膿菌感染症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 脱水があれば点滴で補正し、必要に応じて酸素投与を行います。
- 傷口の洗浄や膿の排出を行い、局所の負担を減らします。
- 痛みや発熱に対しては、年齢や腎機能などに応じて解熱鎮痛薬を検討します。
B. 抗菌薬による治療
- 緑膿菌に効果のある抗菌薬(抗緑膿菌薬)を選び、点滴または内服で投与します。代表的なものとして、広域のβ-ラクタム系(セフェム系・カルバペネム系)、ピペラシリン・タゾバクタム、フルオロキノロン系、アミノグリコシド系などがあります(薬の選択は検査結果と全身状態によって医師が判断します)。
- 重症例では、2種類以上の抗菌薬を組み合わせて使うこともあります。
- 薬剤耐性緑膿菌(MDRP)の場合、使える薬が限られ、治療が難しくなるため、専門医と相談しながら治療方針を決めます。
C. 基礎疾患・医療機器への対応
- 尿道カテーテルや中心静脈カテーテルなどが感染源と疑われる場合は、可能な限り抜去や交換を検討します。
- 気管支拡張症やCOPDなどの呼吸器疾患がある場合は、痰を出しやすくするリハビリや吸入治療なども組み合わせて、再発予防を図ります。
- 糖尿病などの基礎疾患がある場合は、血糖コントロールなど全身管理も重要です。
D. 入院・集中治療が必要な場合
- 重い肺炎、敗血症、血圧低下を伴うショック
- 高齢者や基礎疾患が多く、通院での治療が難しい場合
- 乳幼児や免疫不全の方で、急速な悪化が心配される場合
このようなケースでは、入院のうえで集中的な治療が行われます。
⚫︎緑膿菌感染症の予後
- 健康な人での局所的な感染(軽い皮膚感染など)は、適切な治療により良好に回復することが多いです。
- 一方、免疫力の低下している方や高齢者、重い基礎疾患を持つ方では、肺炎や敗血症などが重症化し、命に関わることもあります。
- 呼吸器に緑膿菌がすみついている場合(気管支拡張症など)には、感染をくり返しながらゆっくりと肺機能が落ち、生活の質が下がっていくことがあります。
- 薬剤耐性緑膿菌による感染では、治療期間が長くなり、再発しやすい場合もあります。そのため、抗菌薬を「必要なときに・必要な期間だけ」使う適正使用が、耐性菌を増やさないうえでも重要です。
⚫︎緑膿菌感染症の予防
日常生活でできる予防
手洗い
外出後・トイレの後・調理や食事の前・傷口を触る前後には、石けんでしっかり手を洗いましょう。
傷のケア
すり傷や切り傷は、流水でよく洗い、清潔なガーゼなどで覆います。プールや温泉など、水に入る前には傷を保護し、汚れた水に長時間つけないようにします。
水回りを清潔に
風呂場や流し台、排水口はこまめに掃除し、ぬめりをためないようにします。緑膿菌は湿った場所で増えやすいため、「ぬめり取り」が予防にもなります。
コンタクトレンズの衛生
レンズケースや保存液を清潔に保ち、決められた方法で使うことで、角膜炎などのリスクを減らせます。
医療・介護の現場での予防
- 手指衛生(手洗い・手指消毒)の徹底
- 尿路カテーテルや点滴ラインの適切な管理、必要最小限の使用
- 病室や浴室、流し台など水回りの定期的な清掃・消毒
- 抗菌薬の適正使用(必要なときに必要な薬を、適切な期間だけ使う)
これらの対策により、院内や施設内での緑膿菌の広がり(院内感染)を大きく減らすことができます。
⚫︎緑膿菌感染症に関連する病気や合併症
肺炎・気管支拡張症の増悪
慢性的に緑膿菌がすみついていると、肺の炎症がくり返され、呼吸不全や肺性心(肺の病気で心臓に負担がかかる状態)につながることがあります。
尿路感染症の重症化
高齢者やカテーテル留置中の方では、膀胱炎から腎盂腎炎、敗血症へと進むことがあります。
皮膚・軟部組織感染
傷口・やけどの感染が広がると、皮下や筋肉まで炎症が及び、場合によっては手術的な処置が必要になることもあります。
耳・眼の重症感染
- 悪性外耳道炎や眼内炎などでは、骨や眼球の深い部分まで感染が及び、聴力・視力に後遺症を残す場合があります。
- 薬剤耐性緑膿菌感染症(MDRP)
複数の抗菌薬が効かない緑膿菌による感染症で、感染症法上の5類感染症に指定されています。国内でも発生動向が監視されており、院内感染対策や抗菌薬の適正使用が特に重要視されています。
⚫︎まとめ
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、湿潤環境に広く分布する代表的な日和見(ひよりみ)感染症の原因菌です。健常者に発症することは稀ですが、基礎疾患を有する方や免疫抑制状態にある方においては、難治性の肺炎や敗血症を惹起するリスクがあります。
近年、多剤耐性緑膿菌(MDRP)の存在が公衆衛生上の課題となっており、早期の確実な診断と、感受性試験に基づいた適切な抗菌薬の選択が極めて重要です。
臨床現場において、創部からの緑色膿の排出や、原因不明の発熱を認める場合は、速やかな細菌検査が推奨されます。ご家族や周囲にハイリスク者がいらっしゃる場合は、感染経路の遮断を念頭に置いた衛生管理を徹底し、異常を感じた際は遅滞なく専門医にご相談ください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 厚生労働省 薬剤耐性緑膿菌感染症
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-42-01.html) - 国立感染症研究所 薬剤耐性緑膿菌感染症
(https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ma/dr-pa/020/dr-pa-intro.html)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/05
- 更新日:2026/03/05
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