真性赤血球増加症(PV)しんせいせっけっきゅうぞうかしょう
PVはJAK2変異で赤血球が増える血液疾患。頭痛・入浴後のかゆみ・脾腫があり、血栓リスクが高い。治療は瀉血と低用量アスピリン、必要時に薬物療法。
目次
⚫︎真性赤血球増加症(PV)とは?
真性赤血球増加症(Polycythemia vera, PV)は、骨髄(血液をつくる工場)のはたらきが過剰になり、特に赤血球が増え過ぎる病気です。多くの方でJAK2という遺伝子の変化
(JAK2 V617F など)が見つかり、これが「血液をつくれ」という合図を出し続けることで、赤血球が必要以上につくられます。
赤血球が増えると血液が濃く・粘り気が強くなり、血管の中で血が固まりやすく(血栓)、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓などの合併症が起こりやすくなります。真性赤血球増加症は骨髄増殖性腫瘍(MPN)という仲間のひとつで、慢性的に経過しますが、適切な治療と生活管理で合併症を大きく減らせます。
⚫︎真性赤血球増加症(PV)の原因
はっきりとした外的な原因があるわけではなく、体内の造血細胞に偶然おこる遺伝子の変化が主な要因と考えられています。
代表はJAK2遺伝子の変化で、これにより赤血球をつくる指令が出続け、赤血球・白血球・血小板がまとめて増えることもあります。生活習慣や家族からの遺伝が直接の原因ではありません。
なお、低酸素状態(高度の喫煙、睡眠時無呼吸、慢性肺疾患、高地生活など)や、腎臓などからエリスロポエチン(EPO)が過剰に分泌されて起こる
「二次性赤血球増加症」とは区別されます。PVでは一般にEPOは低めになります。
⚫︎真性赤血球増加症(PV)の症状は?
初期は無症状のことも多く、健診でヘモグロビンやヘマトクリット(血の濃さ)高値を指摘されて見つかります。症状が出る場合は次のようなものがあります。
- 頭痛、めまい、耳鳴り、集中力低下
- 皮膚のかゆみ(特に入浴後に悪化するのが特徴)
- 顔面紅潮、手足の灼熱痛やしびれ(血栓が関わることがあります)
- 視覚の一過性のかすみ、倦怠感、息切れ
- 脾臓が大きくなることによる左上腹部の張り、早い満腹感
- 血栓や出血(鼻血・歯ぐき出血、まれに消化管や脳出血)
- 高尿酸血症に伴う痛風発作
⚫︎受診の目安
真性赤血球増加症は、血液が濃くなり血栓(血の固まり)ができやすくなる病気です。次のような症状に気づいた場合は、早めの受診が大切です。
- 頭痛・めまい・耳鳴り・倦怠感が続く
- 顔や手足が赤くなる、皮膚のかゆみが強い(特に入浴後)
- 息切れや動悸、手足のしびれがある
- 原因のわからない血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・下肢の血栓)を起こした
- 健康診断で赤血球・ヘモグロビン・ヘマトクリットの上昇を指摘された
→ こうした場合は、内科・血液内科で血液検査を受け、必要に応じて骨髄検査を行いましょう。早期診断と適切な治療の開始が、血栓症の予防と生活の質の維持につながります。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
- 診断は、血液検査で「血が濃い状態」を確認し、骨髄検査や遺伝子検査でPVの基準を満たすかを評価します。
- 二次性赤血球増加症や相対的な赤血球増加(脱水などで血液が濃く見えるだけ)を除外することが重要です。治療は、血液の濃さを安全域に保つこと(瀉血や薬)と、血栓を防ぐこと(低用量アスピリンや生活管理)が柱です。
- 血栓の危険度で「低リスク」と「高リスク」に分け、方針を決めます。
⚫︎真性赤血球増加症(PV)の診断
1)問診・診察
皮膚のかゆみ、頭痛、めまい、視覚症状、手足の灼熱痛、痛風歴、喫煙や睡眠時無呼吸の有無をくわしく確認します。脾臓の腫れがないかを診察で確かめます。
2)血液検査
ヘモグロビン・ヘマトクリットの高値、白血球や血小板の増加の有無を見ます。尿酸やLDHなども参考にします。
3)エリスロポエチン(EPO)測定
PVでは低めであることが多く、二次性赤血球増加症(EPO高値)との鑑別に役立ちます。
4)遺伝子検査
JAK2 V617FまたはJAK2エクソン12変化の有無を確認します。PVの診断で非常に重要です。
5)骨髄検査(必要に応じて)
骨髄が過剰形成(よく増えている)か、巨核球(血小板のもと)の形態の変化などを評価します。
6)除外診断
低酸素血症(血液ガス、睡眠時無呼吸の検査)、喫煙歴、腎腫瘍などEPO産生腫瘍の有無、脱水などを調べ、二次性・相対的増加を除外します。
⚫︎真性赤血球増加症(PV)の治療
治療の目的は、血栓や出血などの合併症を予防し、症状を和らげ、長期の安全性を高めることです。年齢や血栓の既往でおおまかにリスクを分け、次のように組み立てます。
A.瀉血療法
定期的に一定量の血液を抜き、ヘマトクリットを目標値(一般に45%未満)に保ちます。最も基本的で効果的な方法です。貧血や鉄欠乏症状が出ないよう、採血間隔や量を調整します。
B.抗血小板療法
多くの方で低用量アスピリンを用いて血栓を予防します。胃腸障害や出血傾向がある場合は使い分け・中止を検討します。
C.サイトレダクション(細胞を減らす薬物療法)
- 高リスク(60歳以上、血栓の既往がある、血球が強く増えるなど)の場合や、瀉血だけでコントロール困難な場合に検討します。
- ヒドロキシウレア:よく使われる内服薬です。
- インターフェロン(主にペグ化製剤):若年者や妊娠希望のある方にも選択されることがあります。
- JAK阻害薬(ルキソリチニブなど):抵抗性や不耐の場合、症状(かゆみ、脾腫)や血球のコントロールに有用なことがあります。
D.症状対策
- 入浴後のかゆみには、保湿、抗ヒスタミン薬、場合によっては薬の調整や他剤の併用を検討します。手足の灼熱痛(エリスロメラルギー)にはアスピリンが奏功することがあります。高尿酸血症・痛風には食事指導や尿酸降下薬を用います。
E.生活習慣の調整
- 脱水は血液をさらに濃くするため、水分摂取を心がけます。喫煙は強い血栓リスクなので禁煙が重要です。長距離移動ではこまめな足の運動、場合により弾性ストッキングを使用します。高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理は血栓予防に直結します。
F.妊娠・手術などの場面
- 妊娠中は薬の選択が限られるため、妊娠前から主治医へ相談を。手術や抜歯の前後は血栓と出血のバランスを評価し、ヘマトクリットや薬剤の調整を行います。
⚫︎真性赤血球増加症(PV)の予後
適切なヘマトクリット管理と血栓予防により、PVの長期予後は改善してきました。一方で、経過中に骨髄線維症や急性白血病(AML)へ移行する可能性がわずかにあります。予後を左右するのは、血栓の発生をいかに防ぐか、合併症を早期に見つけて対処できるかです。定期通院と検査で病状を丁寧に見守ることが大切です。
⚫︎真性赤血球増加症(PV)の予防
PVそのものを完全に予防する方法は分かっていません。
ただし、合併症の予防は可能です。
- 十分な水分摂取、過度の飲酒を避ける
- 禁煙、体重管理、適度な運動
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症のコントロール
- 長時間同じ姿勢を避ける、飛行機ではときどき歩く
- 発熱、息切れ、胸痛、片麻痺などの急な症状はすぐ受診
- ワクチン接種や市販薬・サプリの使用は主治医に相談
⚫︎真性赤血球増加症(PV)に関連する病気や合併症
- 血栓症:脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓など
- 出血傾向:鼻出血、消化管出血、まれに重症出血
- 骨髄線維症への移行:貧血や脾腫、全身倦怠が強くなることがあります
- 急性白血病(AML)への移行:まれですが注意が必要です
- 高尿酸血症・痛風、腫瘍崩壊様の電解質異常は稀にみられます
- 二次性赤血球増加症、相対的赤血球増加:PVと似た血液検査所見を示し
鑑別が必要です(睡眠時無呼吸、慢性肺疾患、喫煙、EPO産生腫瘍、脱水など)
⚫︎まとめ
真性赤血球増加症は、JAK2の遺伝子変化などにより赤血球が過剰に増える慢性の血液の病気です。血液が濃くなることで血栓が起こりやすくなるため、瀉血と低用量アスピリンを基本に、必要に応じて薬物療法を組み合わせて、ヘマトクリットを安全域に保ちます。
二次性赤血球増加症や脱水との見分けが重要で、診断には血液検査、EPO測定、遺伝子検査、骨髄検査を組み合わせます。生活面では水分摂取、禁煙、長時間同一姿勢の回避、生活習慣病の管理が血栓予防に直結します。定期通院で血液の状態を確認し、体調の変化があれば自己判断せず、早めに主治医へ相談してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/02/25
- 更新日:2026/02/25
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