食細胞機能異常症しょくさいぼうきのういじょうしょう
好中球など貪食細胞の遊走・殺菌が先天的に低下する免疫不全。反復する細菌・真菌感染や膿瘍を来し、代表はCGD。予防内服やIFN-γ、重症例は造血幹細胞移植を検討します。
目次
⚫︎食細胞機能異常症とは?
食細胞機能異常症は、細菌や真菌を取り込んで退治する白血球(主に好中球・単球/マクロファージ)の働きに生まれつき不具合があり、感染をくり返しやすい体質となる疾患群の総称です。
食細胞の役目は「現場へ急行(遊走)→敵を飲み込む(貪食)→内部で殺菌」という一連の流れですが、どこかの工程が弱いと、皮膚・リンパ節・肺・肝臓・骨などに膿瘍(うみのたまり)や難治性の感染を生じます。
代表例として、殺菌力(呼吸 burst)に必要な酵素の遺伝的欠損による慢性肉芽腫症(CGD)、細胞同士がくっついて血管外へ出る力が弱い白血球接着不全症(LAD)、細胞内輸送の異常によるChédiak–Higashi症候群(CHS)などがあります。乳幼児から発症する例が多い一方、軽症で学童期以後に見つかるケースや成人期まで診断に至らない例もあります。
⚫︎食細胞機能異常症の原因
多くは先天性(遺伝性)で、以下のような仕組みの障害が知られています。
- 殺菌能の低下:NADPHオキシダーゼの欠損(CGD)により活性酸素が作れず、取り込んだ菌を殺せない。
- 接着・遊走の異常:白血球が血管壁に接着して組織へ出ていく工程が障害される(LAD)。臍帯がなかなかとれない・創傷治癒が遅いなどが手がかり。
- 細胞内輸送・顆粒融合の異常:CHSなどでリソソームの働きが悪く、貪食した菌の分解が不十分。
まれに二次性(後天性)に食細胞機能が落ちることもありますが、臨床的には先天性免疫不全症の一群として扱われることが一般的です。
⚫︎食細胞機能異常症の症状は?
病型や年齢で幅がありますが、共通点は同じ部位や似た部位に感染をくり返す・治りが遅いことです。
- 持続する高熱(38〜39℃以上)
- 強い倦怠感、食欲低下、体重減少
- 肝脾腫(肝臓・脾臓が腫れてお腹が張る、左上腹部の違和感)
- 皮下出血・あざ、鼻血、歯ぐき出血(血小板減少)
- 感染を繰り返す、肺炎になりやすい(白血球減少)
⚫︎受診の目安
- 同じ部位で化膿・膿瘍をくり返す/抗菌薬が効きにくい
- 肝膿瘍・肺膿瘍・骨髄炎・真菌感染など重い感染歴がある
- 乳幼児期からの発熱・皮膚感染・リンパ節腫脹の反復
- LADが疑われる臍帯遺残・創傷治癒遅延、CHSの色素異常 など
→ これらに当てはまる場合は、免疫不全の専門評価(機能検査・遺伝子検査を含む)を検討しましょう。治療は、感染対策・予防内服・必要時の移植を患者さんごとに組み合わせて行います。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、くり返す感染の背景に“食細胞の働きの弱さ”がないかを検査で確かめ、病型を特定します。治療は、
- 感染の早期発見と徹底した治療
- 再発予防(抗菌薬・抗真菌薬の予防内服、生活指導)
- 根治をめざす治療(適応例で造血幹細胞移植)
が柱になります。重症度や年齢、合併症によって組み合わせを最適化します。
⚫︎食細胞機能異常症の診断
感染歴と身体所見の整理
いつ・どこに・どの菌で・どのくらいくり返すか、治療への反応、家族歴を丁寧に確認します。
基本の血液検査
末梢血、炎症反応、肝腎機能。必要に応じて培養・画像検査(CT/MRI)で膿瘍や骨髄炎を評価。
好中球機能検査
- 酸化的殺菌の検査:DHR(ジヒドロローダミン)試験やNBT(ニトロブルーテトラゾリウム)試験で活性酸素産生を評価(CGDのスクリーニング)。
- 遊走・接着の検査:ケミオタキシス試験、細胞表面接着分子の発現(LADの評価)
遺伝学的検査
NCF1、CYBB(X連鎖CGD)などのNADPHオキシダーゼ関連遺伝子、LADやCHS関連遺伝子を解析し、確定診断・家族への説明や将来設計に役立てます。
合併症の評価
肺・肝・脾・骨・中枢神経などの障害、栄養状態、成長発達の確認。ワクチン歴や同居家族の感染症状況も確認します。
⚫︎食細胞機能異常症の治療
A感染の治療(急性期)
- 適切な抗菌薬・抗真菌薬を十分量・十分期間投与します。膿瘍は切開排膿を併用し、組織内まで薬が届くようにします。
- 重症感染では入院のうえ静脈投与、必要に応じ集中治療を行います。
B再発予防(慢性期管理)
- 抗菌薬予防:**ST合剤(トリメトプリム・スルファメトキサゾール)**などを少量長期で。
- 抗真菌薬予防:アゾール系などを背景・季節・地域流行に応じて調整。
- 免疫調整療法:**インターフェロンγ(IFN-γ)**がCGDで用いられることがあります。
- 生活指導:土や枯れ葉・工事粉じんなど真菌の多い環境を避ける、入浴・保湿・爪管理・口腔ケア、栄養・睡眠。創傷は早めに洗浄・消毒。
- ワクチン:主治医と相談のうえ、不活化ワクチンを確実に。生ワクチンは状況に応じて可否判断。家族のワクチンも重要です(同居家族のインフルエンザワクチン等)
C根治をめざす治療
- 造血幹細胞移植(HSCT):重症例、乳幼児発症で感染が制御困難、生活の質が大きく損なわれる場合などで検討します。移植は根治の可能性がある一方、合併症リスクもあるため、施設・年齢・病型で慎重に判断します。
- グラニュロサイト輸注:難治感染に対する一時的な補助的選択肢として。
- 臓器合併症の外科的治療:難治性肝膿瘍・肺膿瘍などで、内科治療に加えて外科的介入を行うことがあります。
⚫︎食細胞機能異常症の予後
- 発症年齢が早い/重症感染をくり返す/真菌感染が多い
LADやCHSで重い合併症があるといった場合は、臓器障害や生活の質への影響が
長期に残ることがあります。専門医の下で定期的なフォロー(感染リスク、発育・栄養、ワクチン、歯科・皮膚科・耳鼻科などの多職種連携)を続けることが大切です。
⚫︎食細胞機能異常症の予防
- 予防内服(ST合剤・抗真菌薬)を処方どおりに継続。
- 環境整備:カビの多い場所(堆肥・落ち葉・埃っぽい屋内)や、傷をつくりやすい作業は避ける。マスク・手袋などの防護を。
- 日常ケア:スキンケアと口腔ケア、便秘・下痢時の肛囲ケア、十分な睡眠と栄養。
- 早期受診:微熱でも長引く、局所の赤み・腫れ・痛み、咳や呼吸苦、腹痛など“いつもと違う”サインに注意。
- 家族・学校・職場との連携:発熱時の行動計画や通院スケジュールを共有し、無理のない日常を整えます。
⚫︎食細胞機能異常症に関連する病気や合併症
- 慢性肉芽腫症(CGD):NADPHオキシダーゼ欠損による代表的病型。肝膿瘍・肺膿瘍・骨髄炎、カタラーゼ陽性菌・真菌に易感染。
- 白血球接着不全症(LAD):臍帯遺残、創傷治癒遅延、化膿しにくいのに感染が遷延。
- Chédiak–Higashi症候群(CHS):単純感染+部分的な色素異常、神経症状。
- 反復性の肺炎・肝膿瘍・骨髄炎・直腸周囲膿瘍など。
- 栄養障害・発育障害、長期の抗菌薬使用に伴う腸内細菌叢の乱れや薬剤副作用。
- 感染の背景で血球貪食症候群(HLH)を合併することもあり、発熱の遷延や肝脾腫、血球減少に注意します。
⚫︎まとめ
食細胞機能異常症は、体を守る役割を持つ好中球やマクロファージといった「食細胞」が十分に働けないことで、細菌や真菌(カビ)に感染しやすくなる病気です。原因は先天的な遺伝子異常であることが多く、繰り返す発熱・皮膚や肺の感染症・傷が治りにくいといった症状が続きます。
治療は感染症の早期治療や予防、必要に応じて造血幹細胞移植を検討することもあります。放置すると重い感染につながることがあるため、気になる症状が続く場合は早めに専門科を受診することが大切です。不安なときは一人で抱え込まず、主治医と相談しながら自分に合った治療を一緒に考えていきましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/02/25
- 更新日:2026/02/25
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