血球貪食症候群けっきゅうどんしょくしょうこうぐん

免疫が暴走し血球を破壊する重篤な炎症症候群。 発熱・肝脾腫・汎血球減少と高フェリチンが特徴で、速やかなステロイドやエトポシド等の免疫抑制治療が重要です。

⚫︎血球貪食症候群とは?

血球貪食症候群(HLH)は、免疫が暴走して「サイトカイン」という炎症物質が大量に放出され、全身の炎症反応が急激に高まる病気です。活性化しすぎたマクロファージやT細胞が、骨髄や脾臓・肝臓などで自分の血球(赤血球・白血球・血小板)を取り込み破壊してしまう現象(“貪食”)が起こります。進行は早く、放置すると短期間で重症化することがあるため早期の気づきと治療開始が非常に重要です。

⚫︎血球貪食症候群の原因

HLHには大きく一次性(家族性)と二次性(続発性)があります。

一次性

ウイルス感染細胞を処理する仕組み(細胞傷害)の遺伝子に先天的な異常があり、乳幼児期に発症しやすいタイプです。免疫の“ブレーキ”が弱く、暴走しやすい体質が背景にあります。

二次性

何らかの“引き金”で免疫が制御不能になるタイプです。

  • 感染症:EBウイルス(伝染性単核症の原因)、サイトメガロウイルス、インフルエンザなど
  • 膠原病・自己免疫疾患:成人Still病、SLEなど(この場合はMAS:マクロファージ活性化症候群と呼ばれることも)
  • 悪性腫瘍:とくに血液がん(悪性リンパ腫、白血病など)
  • 臓器移植・免疫抑制下・重症感染後など:根底には、NK細胞や細胞傷害性T細胞の働きが弱まり炎症の消火活動が追いつかないという免疫バランスの破綻があります。

⚫︎血球貪食症候群の症状は?

炎症が全身に広がるため、数日〜数週間で次の症状が進行します。

  • 持続する高熱(38〜39℃以上)
  • 強い倦怠感、食欲低下、体重減少
  • 肝脾腫(肝臓・脾臓が腫れてお腹が張る、左上腹部の違和感)
  • 皮下出血・あざ、鼻血、歯ぐき出血(血小板減少)
  • 感染を繰り返す、肺炎になりやすい(白血球減少)
  • 息切れ・動悸・顔色不良(貧血)
  • 進行すると:意識障害、けいれん、呼吸不全、肝不全、腎不全、DIC(血が固まらなくなる) など生命を脅かす状態へ

⚫︎受診の目安

  • 高熱が続く/解熱してもすぐ再燃する
  • あざ・出血が増えた、息切れ・だるさが強い(汎血球減少のサイン)
  • 肝脾腫やリンパ節腫脹を指摘された
  • フェリチンが異常に高いと検査で言われた

→ これらに当てはまる場合は、急ぎ受診してください。血液内科・小児科(小児)を中心に、必要に応じて集中治療科・感染症科・膠原病内科などと多職種連携で治療します。

 

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

HLH は短時間で悪化しうる救急領域の疾患です。診断は、症状・身体所見に加えて特徴的な検査異常(後述)を複合的に満たすかどうかで判断します。
治療は、

  1. 暴走した炎症(サイトカインストーム)を早く鎮める
  2. 引き金(感染・膠原病・悪性腫瘍など)を同時に治す
  3. 多臓器不全を防ぐ支持療法

の3本柱です。必要に応じてICUでの集中治療が行われます。

 

⚫︎血球貪食症候群の診断

診断では、「HLHを疑う決め手となる検査」を組み合わせます。

1)血液検査

  • フェリチン高値(しばしば著明に高い)
  • 可溶性IL-2受容体(sIL-2R)高値
  • トリグリセリド高値、フィブリノゲン低値(脂質・凝固の異常)
  • 汎血球減少(赤血球・白血球・血小板が同時に下がる)
  • AST/ALT上昇、ビリルビン上昇、LDH高値(肝障害・溶血の指標)

2)骨髄検査

  • マクロファージが血球を貪食する像(血球貪食像)の確認

3)免疫機能評価

  • NK細胞活性低下、細胞傷害に関わる蛋白の異常

4)画像検査

  • 肝脾腫・リンパ節腫脹の評価、感染巣・悪性腫瘍の検索

5)原因探索

  • EBウイルス等のウイルス検査、自己抗体、腫瘍の有無(PET-CTを含む)、必要に応じて遺伝子検査(一次性が疑われる小児など)

※診断は総合判定です。すべてが揃わなくても、臨床的に強く疑えば治療を先行することがあります。

 

⚫︎血球貪食症候群の治療

治療は時間との勝負です。施設・年齢・重症度によって細かな違いはありますが、考え方の骨子は以下の通りです。

A. まず炎症の暴走をとめる(初期治療)

  • 副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン等):炎症と免疫の過活性を抑えます。
  • エトポシド:リンパ球の異常な活性化を抑える目的で用います(とくにEBV関連HLHや重症例)。
  • シクロスポリン、タクロリムス:T細胞の過剰な働きを抑制する。
  • IVIG(免疫グロブリン静注):免疫のバランスを整える目的で併用することがあります。
  • 近年の難治例では、JAK阻害薬やインターロイキン阻害薬が検討される場合もあります(専門施設で適応判断)。

B. 引き金を同時に治す(原因治療)

  • 感染症:抗菌薬・抗ウイルス薬・抗真菌薬等を原因に合わせて使用する。EBV関連ではリツキシマブを併用することがあります。
  • 膠原病/自己免疫:ステロイドに加え、シクロスポリンや生物学的製剤(IL-1/IL-6阻害など)を選択する。
  • 悪性腫瘍:リンパ腫/白血病に対する標準治療を同時並行で行います。

C. 支持療法(臓器を守る)

  • 発熱・痛みのコントロール、輸血、電解質・凝固管理、栄養管理
  • DICや肝不全、腎不全、呼吸不全に対する集中治療(必要時は人工呼吸、血漿交換、腎代替療法など)

D. 再燃・難治例への対応

  • 初期治療に反応が乏しい、再発を繰り返す、遺伝性が強く疑われる場合は、造血幹細胞移植が検討されます。長期寛解をめざす治療です。

 

⚫︎血球貪食症候群の予後

早期診断・早期治療で改善が期待できますが、重症化した場合や基礎疾患が難治性の場合は生命に関わることがあります。

  • 予後に影響する因子:発症年齢、重症度、原因(EBV関連・悪性腫瘍関連など)、多臓器不全の有無、治療開始までの時間、治療への反応性。
  • 小児の一次性は再燃しやすく、移植を含む長期計画が必要なことがあります。
  • 二次性は原因治療が奏功すれば良好な経過も十分見込めます。

治療後も、再発の早期発見、感染予防、ワクチン計画の見直し、ステロイド副作用対策などを含む長期フォローが大切です。

 

⚫︎血球貪食症候群の予防

一次性(遺伝性)は発症予防が困難ですが、家族歴がある場合の遺伝カウンセリングは有用です。二次性については、

  • 感染予防:手洗い・うがい、十分な睡眠、流行期の体調管理、早期受診
  • 基礎疾患のコントロール:膠原病の治療継続、悪性腫瘍の標準治療
  • 薬剤・免疫抑制下での体調管理:発熱・咽頭痛・リンパ節腫脹などの早期報告

が役立ちます。治療中は生ワクチンの是非や接種時期を主治医と必ず相談してください。

 

⚫︎血球貪食症候群に関連する病気や合併症

  • EBウイルス感染症/伝染性単核症(HLHを引き起こす代表的な感染)
  • 悪性リンパ腫・白血病(腫瘍随伴HLH)
  • 成人Still病・SLEなどの膠原病(MASとして表現されることあり)
  • DIC(播種性血管内凝固)、肝不全・腎不全・呼吸不全
  • 二次免疫不全・二次感染(強い免疫抑制治療による)
  • 治療関連合併症(ステロイド・エトポシド・シクロスポリンの副作用、移植後合併症など)

⚫︎まとめ

血球貪食症候群(HLH)は、免疫細胞が暴走して自分の血液細胞を攻撃してしまうことで、高熱・強い倦怠感・肝脾腫(肝臓や脾臓が腫れる)などが急速に進む、重症化しやすい病気です。感染症や自己免疫疾患、血液のがんなどが引き金になることがあり、早期診断と治療がとても重要です。治療はステロイドや免疫抑制薬、原因となる病気への治療を組み合わせて行います。

放置すると臓器障害が進む可能性があるため、「熱が下がらない」「ぐったりする」といった症状が続くときは早めの受診が大切です。不安なときは一人で抱え込まず、主治医と相談しながら慎重に治療方針を決めていきましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/02/25
  • 更新日:2026/02/25

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