伝染性単核〔球〕症でんせんせいたんかくきゅうしょう
EBウイルス初感染で発症。発熱・咽頭痛・リンパ節腫脹・強い倦怠感が主症状。多くは自然軽快するが、脾腫期は運動制限が必要で、悪化時は早めに受診。
目次
⚫︎伝染性単核〔球〕症とは?
伝染性単核症は、主にエプスタイン・バーウイルス(EBウイルス)の初感染で起こるウイルス性の病気です。思春期〜若年成人に多く、発熱・のどの痛み・リンパ節の腫れ・強いだるさが代表的な症状です。
唾液でうつることが多く、飲み物の回し飲みやキス、乳幼児では玩具の共有などが感染のきっかけになります。乳幼児期に感染すると軽症または気づかれないことが多い一方、思春期以降の初感染では症状がはっきり出やすい傾向があります。
通常は数週間で自然に軽快しますが、まれに脾臓(ひぞう)の腫れや破裂、肝機能障害などを合併することがあるため、適切な安静と経過観察が大切です。
⚫︎伝染性単核〔球〕症の原因
- 最も多い原因はEBウイルスです。EBウイルス以外でも、サイトメガロウイルス(CMV)などが似た症状(単核症様症候群)を引き起こすことがあります。
- 感染経路は主に唾液で、家族内・友人間など身近な接触で広がります。感染後は体内に潜伏し、元気な方でも一定期間は唾液中にウイルスが出るため、完全な遮断は難しい病気です。
- 好発年齢は学齢後半〜若年成人ですが、どの年齢でも発症の可能性はあります。
⚫︎伝染性単核〔球〕症の症状は?
典型的には、1〜2週間の潜伏期の後、次の症状がゆっくり出そろいます。
- 発熱(ときに高熱)
- のどの痛み(扁桃腺の腫れ・白苔)
- 首のリンパ節の腫れ・痛み
- 強い倦怠感(つかれやすさ)
- 肝脾腫(肝臓・脾臓が腫れる)による左上腹部の重さや違和感
- 発疹(特にアミノペニシリン系抗菌薬の投与時に出やすい薬疹)
- 食欲低下、頭痛、筋肉痛 などの全身症状
注意ポイント
- 脾臓が腫れている時期に激しい運動や接触スポーツを行うと、まれに脾破裂の危険があります。発症後は少なくとも3週間、状況により4週間程度の運動制限を検討します。
- 倦怠感は主症状の1つで、解熱後もしばらく続くことがあります。無理をせず体調に合わせて復帰を調整しましょう。
⚫︎受診の目安
- 発熱・強いのどの痛み・首のリンパ節腫れが数日続く
- 強い倦怠感で日常生活に支障が出ている
- 左上腹部痛や外傷後の腹痛・めまいがある(脾腫・脾破裂の可能性)
- 回復期の運動再開の目安を知りたい
→ 一般内科・小児科・耳鼻咽喉科などでご相談ください。必要に応じて血液検査・超音波検査・抗体検査で評価します。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断
問診・診察に加え、血液検査(白血球分画での異型リンパ球増加、肝機能の軽度上昇など)とウイルス抗体検査(EBV抗体)を組み合わせて行います。必要に応じてCMV抗体などで類似疾患を鑑別します。
治療
基本的に対症療法(症状をやわらげる治療)で、十分な休養・水分・栄養と解熱鎮痛薬が中心です。抗菌薬は細菌感染が疑われる場合のみ使用します。アミノペニシリン系は
発疹が出やすいため、EBウイルスが疑われる時期は原則避けます。
ステロイドは重度の扁桃腫大による気道狭窄、重い溶血性貧血・血小板減少などの合併症があるときに限って短期間用います。通常、抗ウイルス薬は不要です。
⚫︎伝染性単核〔球〕症の診断
1)問診・診察:発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹、倦怠感、左上腹部痛(脾腫)などの
有無感染が疑われる接触歴を確認します。
2)血液検査:白血球分画で異型リンパ球の増加、肝酵素(AST/ALT)軽度上昇
ときに軽い貧血や血小板減少を認めることがあります。
3)ウイルス学的検査:EBV-VCA(IgM/IgG)、EBNAなどの抗体の組み合わせで急性感染か既感染かを推定します。類似症状を示すCMVや、場合により他のウイルスの検査を追加して鑑別します。
4)画像検査:腹部エコーで脾腫の程度を確認し、運動再開の目安にすることがあります。左上腹部痛や外傷歴がある場合は、脾破裂の評価を優先します。
⚫︎伝染性単核〔球〕症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 安静・水分・栄養補給:脱水を避け、食べやすい形態で少量頻回の摂取を
- 解熱鎮痛薬:アセトアミノフェンなどを用いて発熱・咽頭痛を軽減します(NSAIDsの使用は医師に確認)
- 抗菌薬:細菌性咽頭炎などの重複感染が疑われる場合のみ。EBウイルスが疑われる時期は、アミノペニシリン系を避けます。
B. 合併症リスクがある場合の医療介入(重症度対応)
- ステロイド:気道狭窄や重篤な血液合併症があるときに短期間投与します。
C. 回復期の管理と復帰(再発・事故予防)
- 活動・運動制限:少なくとも3週間は激しい運動・接触プレーを控えるのが
一般的です。診察や超音波検査で脾腫の改善を確認しながら段階的に回復します。 - 入院適応:強い脱水、摂食不能、気道狭窄の疑い、重い肝障害・血液障害、社会的事情などがある場合は入院での管理を検討します。
⚫︎伝染性単核〔球〕症の予後
- 多くは2〜4週間で自然軽快しますが、倦怠感は長引くことがあり、体力の全回復まで数週間かかることがあります。
- 重症化はまれながら、脾破裂(頻度は極めて低い)、重い肝炎、気道狭窄、溶血性貧血・血小板減少などが起こり得ます。急な左上腹部痛・失神しそうな強いふらつき・息苦しさなどがあれば、直ちに医療機関へ。
- 長期に(3か月以上)発熱や肝脾腫、リンパ節腫脹が持続する場合は、慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)などの精査が必要です。
⚫︎伝染性単核〔球〕症の予防
完璧に防ぐことは難しいものの、次の工夫でリスクを下げられます。
- 手洗い・うがいの徹底、コップ・食器・歯ブラシの共有を避ける
- 体調不良時は無理をせず休養をとる(学校・職場は全身状態で判断)
- 回復期の運動再開はゆっくりと。特に接触スポーツは主治医の許可のもと段階的に再開します。
- 免疫が弱っている方(小児・高齢者・基礎疾患がある方)は、身近な人に発熱・咽頭痛がある場合の濃厚接触を避けましょう。
⚫︎伝染性単核〔球〕症に関連する病気や合併症
- 脾腫・脾破裂:左上腹部痛やショック症状に注意。運動制限が予防の第一歩です。
- 肝障害・黄疸:飲酒は回復まで控えてください。
- 血液の合併症:溶血性貧血、血小板減少など。出血傾向や黄疸があれば早めに受診を。
- 呼吸器合併症:扁桃・咽頭の高度腫脹による気道狭窄。
- 神経合併症 :顔面神経麻痺、無菌性髄膜炎 など。
- EBV関連疾患:慢性活動性EBV感染症(CAEBV)や、一部のリンパ増殖性疾患の背景因子になり得ます。長引く・増悪する場合は専門医で評価します。
⚫︎まとめ
伝染性単核球症は、EBウイルスなどの感染によって発熱・のどの強い痛み・リンパ節の腫れ・倦怠感が続く病気で、いわゆる「キス病」と呼ばれることもあります。多くは自然に回復しますが、無理をすると肝臓の炎症や脾臓が腫れるなどの合併症につながることがあります。治療は安静と対症療法が中心で、休養を十分に取ることがとても重要です。
高熱が続く、のどの腫れが強い、強い倦怠感が長引くなどの症状がある場合は、早めに内科を受診してください。不安なときは一人で抱え込まず、主治医と相談しながら体調に合った過ごし方を一緒に考えていきましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえるvol.1(血液)
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(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/02/24
- 更新日:2026/02/24
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