原発性マクログロブリン血症げんぱつせいまくろぐろぶりんけっしょう

骨髄のリンパ形質細胞が増えIgMが過剰となる血液がん。貧血やリンパ節腫脹、過粘稠で頭痛・視力低下を来す。症状に応じてリツキシマブ併用療法やBTK阻害薬、血漿交換を行います。

⚫︎原発性マクログロブリン血症とは?

原発性マクログロブリン血症は、骨髄でリンパ球が成熟する途中の細胞(リンパ形質細胞)が増え続け、血液中に「IgM」というたんぱく質(抗体)が過剰につくられる病気です。
増えたIgMは血液を「どろっと」させる性質があり、頭痛・めまい・見えにくさ・鼻血などの原因になります。病理学的には「リンパ形質細胞リンパ腫」に分類される、ゆっくり進行するタイプの血液がんで、年単位の経過を取ることが少なくありません。症状が軽い時期は経過観察のみとすることもありますが、貧血や過粘稠(かねんちょう)症候群、臓器の
はれ、神経症状などが出てきたら治療を検討します。

⚫︎原発性マクログロブリン血症の原因

発症の直接の引き金は特定できないことが多いですが、骨髄の造血細胞に偶然生じた遺伝子変化が背景にあると考えられています。代表的なのがMYD88という遺伝子の変化で、
細胞が自律的に増えやすくなります。ほかにCXCR4などの変化がみられることもあります。
生活習慣や食事が直接の原因ではなく、家族に必ず遺伝する病気でもありません。年齢と
ともに細胞の「設計図」の誤りが蓄積すること、免疫の働きのゆらぎなどが関係すると考えられています。ご本人の努力不足で起こる病気ではありません。

⚫︎原発性マクログロブリン血症の症状は?

症状は「IgMが増える影響」「正常な血液が作りにくくなる影響」「病気が体の一部に
広がる影響」の三つで整理すると分かりやすいです。

  • gMが増える影響(過粘稠症候群)は血液が濃く粘くなることで、頭痛、めまい、耳鳴り、見えにくさ(視力低下・かすみ)、鼻血・歯ぐき出血、倦怠感が出ます。ひどい場合は意識障害や心不全のような症状を起こすこともあり、緊急の治療が必要です。
  • 造血が低下する影響骨髄が病気の細胞に占領されると、赤血球が減って息切れ・動悸・だるさ(貧血)、血小板が減ってあざ・出血(出血傾向)、白血球の機能低下で感染を繰り返す、といった症状が出ます。
  • 浸潤・免疫反応の影響はリンパ節のはれ、脾臓・肝臓の腫大、四肢のしびれや痛み(末梢神経障害)、寒さで悪化する溶血(寒冷凝集素症)、冷えで指先が白く痛む(レイノー様症状)、皮膚の点状出血、手足や顔のむくみなど。ごくまれに脳・脊髄へ広がる「Bing–Neel症候群」を来すことがあります。

⚫︎受診の目安

  • 倦怠感、息切れ、動悸など貧血症状が続く
  • 原因不明の鼻血、歯ぐき出血、あざが増える
  • めまい、視力低下、手足のしびれがある
  • 黒っぽい便が出る、鼻血がのどへ流れ込むなど出血が続く
  • 健康診断で貧血や免疫グロブリンの異常を指摘された

→ こうした症状がある場合は、内科・血液内科で血液検査や必要に応じて骨髄検査を受けましょう。早期診断と適切な治療計画が、症状のコントロールと合併症予防の鍵になります。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、血液検査でIgMの単クローン性増加(M蛋白)を確認し、骨髄検査でリンパ形質細胞の増殖を確かめることで行います。目の奥(眼底)で血管のうっ血をチェックすることや、遺伝子検査でMYD88変化を確認することもあります。治療は、症状の強さと合併症の有無で決めます。症状が軽ければ「治療せず経過観察(ウォッチ・アンド・ウェイト)」、貧血・出血、過粘稠症候群、臓器の圧迫、神経障害などがあれば薬物療法や血漿交換を行います。支持療法(感染予防、栄養・運動・心理的サポート)を並行して、安全に治療を続けます。

⚫︎原発性マクログロブリン血症の診断

血液検査

血算(赤血球・白血球・血小板)、総タンパク・アルブミン、腎機能・肝機能、LDH、β2ミクログロブリン、電気泳動・免疫固定(SPEP/IFE)でIgMのM蛋白を確認します。血清粘稠度やクリオグロブリン、寒冷凝集素の評価が役立つこともあります。

骨髄検査

骨盤の骨から骨髄液・骨片を採取し、リンパ形質細胞の浸潤を確認します。フローサイトメトリーで細胞表面の特徴を解析し、病型を確かめます。

遺伝子検査

MYD88(L265P)やCXCR4などの変化を調べ、診断の裏づけや治療選択の参考にします。

画像・その他

リンパ節や脾臓の大きさは超音波やCTで評価します。眼底検査で網膜のうっ血や点状出血を確認することがあります。末梢神経障害が疑われる場合は神経伝導検査を行います。

鑑別診断

IgM型MGUS(良性の単クローン性IgM増加)、マントル細胞リンパ腫、その他のリンパ腫・形質細胞腫瘍、ALアミロイドーシスなどと見分けます。

⚫︎原発性マクログロブリン血症の治療

治療の開始基準

以下のいずれかがあれば治療を検討します。貧血や血小板減少による症状、過粘稠症候群、臓器の腫大や腫瘤による圧迫症状、進行する末梢神経障害、腎障害・アミロイドーシス・寒冷凝集素症・クリオグロブリン血症などの合併、全身のだるさや体重減少・発熱が続く場合、など。

A.リツキシマブ併用化学療法

代表的なのはベンダムスチン+リツキシマブ(BR)や、デキサメタゾン+リツキシマブ+シクロホスファミド(DRC)です。奏効率と副作用のバランスから幅広く用いられます。ボルテゾミブを組み合わせる方法(BDRなど)もあり、神経障害の既往がある場合は投与方法を工夫します。

B.BTK阻害薬

イブルチニブ、ザヌブルチニブなどの内服薬は、病気の増殖シグナルを遮断する分子標的薬です。高齢で化学療法が難しい方、再発時などに有用です。心拍の乱れや高血圧、出血傾向など薬剤ごとの注意点があり、定期的な診察と調整が必要です。

C.血漿交換(血漿成分除去)

視力低下、神経・出血症状などの過粘稠症候群があるときは、まず血漿交換でIgMを素早く下げ、症状を安全に和らげます。その上で薬物療法に移行します。

D.支持療法

感染予防(手洗い・口腔ケア、必要なワクチンの相談)、貧血・出血への対策、末梢神経障害の疼痛コントロール、低栄養の改善、運動・睡眠・心理的サポートなどを組み合わせます。

治療時の注意

リツキシマブ開始直後に一時的にIgMが上がる「IgMフレア」が起こることがあり、過粘稠症候群のある方では前もって血漿交換を行うなどの工夫をします。薬同士・サプリとの相互作用、心血管系の持病、感染症流行期の対応などは、必ず事前に主治医や薬剤師に確認してください。

服薬上の注意

JAK阻害薬をはじめとする薬は、飲み忘れや自己判断の中断で効果が落ちることがあります。他の薬やサプリとの相互作用、ワクチンや感染症流行時の対応など、気になる点は遠慮なく主治医・薬剤師へご相談ください。

⚫︎原発性マクログロブリン血症の予後

原発性マクログロブリン血症は一般にゆっくり進行する病気で、治療の進歩により長期に安定した経過をたどる方が増えています。見通しに影響する因子として、年齢、血色素量、血小板数、β2ミクログロブリン、IgM濃度、腎機能、体重減少・発熱の有無、遺伝子変化(MYD88・CXCR4)などが挙げられます。再発した場合でも、薬剤の切り替えや組み合わせの変更、BTK阻害薬へのスイッチなど、次の選択肢がいくつもあります。通院を継続し、検査結果と体調の変化を見ながら、その時点での最善策を一緒に選びましょう。

⚫︎原発性マクログロブリン血症の予防

この病気そのものを確実に防ぐ方法は分かっていません。いっぽう、合併症を減らし、安全に生活するためにできる工夫はあります。

  • 手洗い・うがい・口腔ケアを習慣化し、発熱時は早めに相談する
  • ワクチンの接種時期・種類は主治医と調整する(生ワクチンは避ける場合あり)
  • 寒冷で悪化しやすい症状(寒冷凝集素症など)がある場合は、体を冷やさない工夫をする
  • 十分な睡眠・栄養・適度な運動で体力を保つ
  • サプリ・市販薬は相互作用の可能性があるため、使用前に必ず確認する
  • 目のかすみ、ふらつき、鼻血など過粘稯が疑われるサインは早めに受診する

⚫︎原発性マクログロブリン血症に関連する病気や合併症

  • 過粘稠症候群:IgMの増加で血液が粘り、頭痛・視力低下・出血を来します
  • 末梢神経障害:しびれ・痛み・冷感など。治療選択や用量調整の目安になります
  • 寒冷凝集素症:寒さで赤血球が壊れ、貧血やレイノー様症状を起こします
  • クリオグロブリン血症:寒冷で蛋白が沈殿し、皮疹・関節痛・腎障害を来すことがあります
  • ALアミロイドーシス:蛋白が臓器に沈着し、心・腎・神経などの機能低下を来します
    リンパ節・脾腫:腹部膨満、早期満腹感、体重減少の原因になります
  • Bing–Neel症候群:脳・脊髄への浸潤。頭痛・麻痺・認知機能低下などを認めます
  • IgM型MGUS:良性のIgM増加。定期フォローで変化を早期に捉えます

⚫︎まとめ

原発性マクログロブリン血症は、骨髄のリンパ形質細胞が増えてIgMが過剰になることで、血液の粘りや貧血、神経症状、臓器の腫れなど多彩な症状を生じる、ゆっくり進行する血液のがんです。診断は血液検査と骨髄検査、必要に応じた遺伝子検査・画像・眼底検査などを組み合わせます。治療は症状の有無と程度で決め、リツキシマブ併用化学療法、BTK阻害薬、血漿交換、支持療法を状況に応じて選びます。治療の進歩により、長期に安定して生活できる方が増えています。体調の変化や不安があれば自己判断せず、早めに主治医へ相談してください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/02/17
  • 更新日:2026/02/24

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