好酸球性肺炎こうさんきゅうせいはいえん

好酸球性肺炎は、肺に好酸球が異常に集まり炎症を起こす疾患です。急性型と慢性型があり、咳や息切れ、発熱を伴います。正確な診断とステロイド治療により多くは改善しますが、再発例も多く長期的な管理が求められます。

好酸球性肺炎とは?

好酸球性肺炎とは、肺に好酸球と呼ばれる特定の白血球が異常に集まり、肺組織に炎症を引き起こす疾患群の総称です。好酸球は本来、寄生虫の排除やアレルギー反応に関与する免疫細胞ですが、過剰に集まることで肺にダメージを与えることがあります。

この疾患は大きく「急性好酸球性肺炎(AEP)」と「慢性好酸球性肺炎(CEP)」に分類されます。AEPは突然の高熱、激しい呼吸困難で発症し、数日以内に症状が急速に悪化するのが特徴です。一方CEPは、咳や息切れが数週間から数か月かけてゆっくり進行し、発熱や体重減少なども伴う慢性疾患です。

好酸球性肺炎は間質性肺炎の一種とされますが、特有の炎症機序を持っており、早期診断・早期治療により完全に治癒することも可能です。特にステロイド治療への反応が良好な点が大きな特徴で、他の間質性肺炎と区別されます。

原因

酸球性肺炎は、原因により一次性(特発性)と二次性に分けられます。特発性の場合、明確な発症原因は不明であり、アレルギー体質を持つ人に多く見られます。特に慢性型(CEP)は中年女性に多く、喫煙歴のない人にも発症します。

一方、二次性の好酸球性肺炎は、特定の原因により引き起こされます。代表的な原因には、薬剤(抗菌薬、NSAIDs、抗てんかん薬など)、寄生虫感染(アスカリスや回虫)、膠原病、がん(ホジキンリンパ腫など)、放射線治療後などが挙げられます。

急性型(AEP)は、若年〜中年男性に多く見られ、特に喫煙の開始や喫煙量の急増、受動喫煙との関連が指摘されています。また、ダストや排気ガスなどの吸入も発症の引き金となることがあります。

これらの原因のうち、薬剤や感染症が関与する場合には、原因物質の除去とともに治療が必要となり、特発性の場合とは治療経過が異なることがあります。

症状

好酸球性肺炎の症状は、急性型と慢性型で大きく異なります。急性型(AEP)では、発熱、悪寒、乾いた咳、急激な呼吸困難が特徴で、発症後数日以内に急速に進行することが多く、酸素吸入や集中治療が必要になる場合もあります。血液中の好酸球は初期には正常ですが、病状が進行すると増加してきます。

AEP

両側の肺にびまん性の浸潤影(すりガラス状陰影)が見られ、これは肺胞に好酸球が浸潤し、気体交換が障害されていることを示しています。重症化すると急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のような病態を呈することもあります。

慢性型(CEP)

数週間から数か月にわたり持続する乾性咳嗽、労作時呼吸困難、倦怠感、微熱、体重減少などが見られます。夜間や早朝に咳が悪化することが多く、ぜんそく症状を伴うこともあります。血液中の好酸球は著しく上昇し、末梢血好酸球数の増加は重要な診断所見です。

画像所見として、CEPでは肺の外側(末梢領域)に多発する浸潤影が典型的で、「写真のネガフィルムを裏返したような陰影」と表現されることもあります。好酸球が肺胞内に蓄積し、慢性の炎症を引き起こしているため、症状は治療しなければ長期に持続します。

診断方法と治療方法

診断方法

診断には、詳細な病歴聴取、身体診察、血液検査、画像検査、肺機能検査、喀痰検査、気管支鏡検査などが組み合わされます。好酸球性肺炎の診断において重要なのは、肺における好酸球の浸潤を証明することです。

血液検査では好酸球数の上昇が見られ、特にCEPでは白血球に占める好酸球の割合が20〜40%に達することもあります。血清IgE濃度も高値を示すことが多く、アレルギー傾向を反映しています。

画像検査では、胸部X線やCTで両側肺野のすりガラス状陰影や末梢優位の浸潤影が確認されます。CT画像では、気管支血管束周囲の浸潤や、移動性の陰影が典型的所見とされます。

確定診断には、気管支肺胞洗浄(BAL)で回収した洗浄液中の好酸球比率の上昇(通常25%以上)や、経気管支肺生検(TBLB)での好酸球浸潤の組織学的証明が有用です。

治療方法

治療の中心は副腎皮質ステロイドの内服です。プレドニゾロンを初期には中等量(30〜60mg/日)から開始し、症状と画像所見の改善に応じて徐々に減量していきます。多くの患者は治療開始から数日以内に著明な症状改善を示します。

AEPでは比較的短期間のステロイド治療で治癒に至ることが多く、再発も稀です。一方CEPでは、ステロイドの反応は良好であるものの、治療を中断したり、急激に減量した場合に再発するケースが約半数に上ると報告されています。そのため、少量の維持療法を長期に継続することが勧められる場合があります。

予後について

好酸球性肺炎の予後は、疾患の型や重症度、治療のタイミングによって大きく異なります。急性型(AEP)は適切な治療を受ければ、ほとんどの症例で後遺症なく完全に治癒します。ステロイドに対する反応も迅速で、予後は非常に良好です。

一方、慢性型(CEP)は経過が長く、再発率が高いのが特徴です。ステロイド治療によって短期的には改善しますが、減量中や中止後に再燃することが少なくありません。特に数回にわたり再発を繰り返す場合は、慢性化しやすく、肺機能の低下や線維化のリスクが生じることがあります。

また、好酸球性肺炎は喘息や他のアレルギー性疾患と併存することもあり、包括的な治療と管理が必要です。再発予防には、医師の指導のもとでの継続的な薬物療法、定期的な画像検査や呼吸機能検査が重要です。

予防について

好酸球性肺炎は、特発性で発症することが多いため、完全な予防は困難ですが、二次性の場合には原因となる薬剤や環境因子の回避が有効です。服薬中に咳や呼吸苦、発熱が生じた場合にはすぐに医師へ相談することが大切です。

喫煙が急性型の引き金となる場合があるため、禁煙は重要な予防手段です。また、アレルギー体質のある人では、ハウスダストや花粉、カビなどのアレルゲン対策も発症予防につながります。

慢性型では、再発防止のために薬の自己中断を避け、定期的に呼吸器内科を受診することが重要です。症状が軽快しても、画像や血液所見での評価を継続することにより、早期の再発発見と対応が可能になります。

関連する病気や合併症

好酸球性肺炎と関連が深い疾患には、喘息、好酸球増多症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎(EGPA:旧称チャーグ・ストラウス症候群)、慢性好酸球性白血病などがあります。これらはすべて好酸球の活性化や増殖が関与する疾患であり、鑑別診断が必要です。

特にCEPでは、喘息との合併率が高く、患者の約半数が喘息を併発しているとされています。両者の病態が重なることで、治療方針の調整が必要になることがあります。

また、再発を繰り返すCEPでは、肺の線維化が進行し、慢性的な間質性肺疾患に移行する可能性があります。この場合、長期にわたる呼吸機能低下や労作時呼吸困難などの生活障害を生じることがあります。

さらに、治療に用いるステロイド薬の副作用として、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、感染症のリスク増加などがあるため、治療中は副作用の管理も含めた包括的なケアが必要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本呼吸器学会「好酸球性肺炎診療ガイドライン」
(https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=28)

MSDマニュアル プロフェッショナル版「好酸球性肺炎」
(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/pulmonary-disorders/interstitial-lung-disease/eosinophilic-pneumonia)

日本アレルギー学会「アレルギー性肺疾患の解説」
(https://www.jsaweb.jp/modules/diseases/index.php?content_id=11)

■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。

日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。

  • 公開日:2025/07/08
  • 更新日:2025/07/08

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