食道癌しょくどうがん
食道がんは、食道の内壁に発生する悪性腫瘍で、特に中高年男性に多く見られます。初期には無症状のこともありますが、進行すると食べ物が飲み込みにくくなり、体重減少や痛みなどを引き起こします。喫煙や飲酒が主な危険因子であり、定期的な内視鏡検査による早期発見が重要です。治療は進行度に応じて内視鏡治療、手術、放射線治療、化学療法などが行われます。
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食道がんとは?
食道がんは、食道の粘膜に発生する悪性腫瘍です。食道の内側を覆う上皮細胞に起こるもので、日本では大部分が「扁平上皮がん」です。一方で欧米では「腺がん」の割合が高く、これはバレット食道を背景に生じることが多いです。
発生部位は、食道の上部・中部・下部のいずれにも生じ得ますが、日本人では中部食道が好発部位とされています。進行が早く、早期に周囲の組織やリンパ節に転移しやすいという特徴があります。
食道がんは早期には自覚症状が少なく、気づかないうちに進行しているケースもあります。そのため、リスクの高い人では定期的な内視鏡検査が重要です。
世界的には発症率が高い地域もあり、日本では男性に多く、特に50歳以上の中高年に多くみられます。生活習慣と密接な関係があるため、予防と早期発見が非常に大切ながんのひとつです。
原因
食道がんの主な危険因子として挙げられるのは、飲酒と喫煙です。アルコールはアセトアルデヒドという発がん性物質に変化し、食道の粘膜にダメージを与えるとされています。特にALDH2遺伝子に変異がある日本人の一部では、アセトアルデヒドの分解能力が低く、がんリスクがさらに高まります。
喫煙は、タバコに含まれる多数の発がん物質が直接的に食道粘膜に作用し、がんの発生を促進します。飲酒と喫煙の両方を習慣的に行っている人は、食道がんの発症リスクが著しく上昇します。
その他、熱い飲食物の摂取、慢性的な逆流性食道炎、バレット食道、栄養不足(特に野菜・果物不足)、過度な塩分摂取、咽頭がんや頭頸部がんの既往などもリスク因子です。
まれに、食道アカラシアや腐食性食道炎などの慢性疾患を背景に発症することもあります。こうした疾患は慢性的に食道粘膜を刺激し、がん化の土壌を形成します。
症状
初期の食道がんは無症状で経過することが多く、健康診断や別の病気の検査中に偶然発見されることがあります。
症状が現れるのは、がんがある程度進行してからで、最もよく見られるのが「嚥下困難」です。食べ物が喉や胸につかえるように感じることが多く、最初は固形物で感じ、進行すると液体でも同様の症状が出るようになります。
次に多いのが「胸の痛み」や「胸部圧迫感」で、食道を通過する際の不快感や鈍い痛みが出ることがあります。また、「食欲不振」や「体重減少」など、がん特有の全身症状も現れてきます。
進行例では、声のかすれ(反回神経麻痺による)、慢性咳嗽、喉の違和感、吐血や黒色便(出血による)などがみられることもあります。腫瘍が気管や肺に浸潤すると、再発性肺炎や呼吸困難を起こすこともあり、命に関わる症状へと進展します。
診断方法と治療方法
診断の第一歩は、上部消化管内視鏡(胃カメラ)です。食道の粘膜を直接観察し、病変の有無を確認するとともに、疑わしい部分から組織を採取して病理検査(生検)を行います。これにより、がんの有無、組織型(扁平上皮がん・腺がんなど)、がんの深さ(病期)を評価します。
がんの広がりを確認するために、胸部・腹部CT、頸部エコー、PET-CT、内視鏡的超音波検査(EUS)などの画像検査も併用されます。これにより、リンパ節転移や遠隔転移の有無を調べ、治療計画を立てます。
治療はがんの進行度によって異なります。早期がんであれば、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や粘膜下層剥離術(ESD)での切除が可能です。進行がんの場合は、食道切除術(開胸・腹手術または胸腔鏡手術)が行われます。
また、化学療法(抗がん剤)や放射線療法、あるいはそれらを組み合わせた化学放射線療法(CRT)も選択肢となります。高齢や合併症のある患者では、手術に代わる治療が選ばれることもあります。
予後
食道がんの予後は、診断時の進行度(ステージ)に大きく左右されます。早期に発見され、内視鏡的切除が可能な場合は、治療後の予後は比較的良好で、5年生存率も高くなります。
一方、進行がんとして発見された場合は、治療成績は低下し、再発のリスクも高くなります。特に、リンパ節や遠隔臓器への転移がある場合には、予後が厳しくなります。
食道がんは食事摂取に影響を与えるため、術後も含めて栄養状態の管理が重要です。また、術後の合併症(肺炎、縫合不全、狭窄など)も予後に関与します。
がんの再発を早期に見つけるためには、治療後も定期的な内視鏡検査や画像検査を継続することが重要です。多職種によるフォローアップ体制が、長期的な生存と生活の質の維持に大きく寄与します。
予防
食道がんの予防には、まず危険因子を避けることが重要です。特に飲酒と喫煙は強いリスク因子であり、禁酒・禁煙によってがん発生の確率を大幅に下げることができます。
次に、野菜や果物を豊富に含んだバランスの良い食事を心がけ、塩分や脂肪の摂りすぎ、熱すぎる飲食物は控えましょう。肥満の予防や適度な運動もがん予防に役立ちます。
また、逆流性食道炎やバレット食道のある人は、胃酸の逆流を抑える治療を継続し、定期的な内視鏡検査を受けることが推奨されます。慢性的な嚥下障害や胸の違和感がある場合には、早めの医療機関受診が大切です。
食道がんは初期症状が乏しいため、リスクが高い人(50歳以上の男性、飲酒・喫煙習慣がある人)は、症状がなくても定期的な検診や内視鏡検査を受けることが早期発見・早期治療に直結します。
関連する病気や合併症
食道がんと関連する病気には、まず「逆流性食道炎」「バレット食道」が挙げられます。これらの疾患は長期的に食道粘膜に炎症を与え、腺がんのリスクを高めます。特にバレット食道では、高度異形成を経て腺がんへと進展することがあります。
また、「咽頭がん」や「頭頸部がん」を既往に持つ人は、飲酒・喫煙の影響で食道がんを合併するリスクが高く、スクリーニングが勧められます。
治療後には「食道狭窄」や「嚥下障害」「誤嚥性肺炎」といった合併症が起こりやすく、日常生活に影響を与えることがあります。加えて、「肺転移」「肝転移」「骨転移」など、遠隔臓器への転移にも注意が必要です。
心理的な負担や栄養状態の悪化、治療の副作用も患者の生活の質(QOL)に関与するため、多角的なサポート体制が重要となります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本食道学会「食道癌診療ガイドライン」(https://www.jses.jp/)
国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん」(https://ganjoho.jp/)
厚生労働省e-ヘルスネット「食道がん」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)
順天堂大学医学部附属順天堂医院「食道がん」(https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/shokaki/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/06/25
- 更新日:2025/06/26
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