バレット食道ばれっとしょくどう

バレット食道は、長期間の胃酸逆流により食道の粘膜が胃や腸のような性質に変化する病気です。逆流性食道炎が原因で発症しやすく、食道がん(特に腺がん)のリスクが高まることから、注意が必要です。胸やけや呑酸などの症状を伴うこともあれば、無症状のまま経過することもあります。診断には内視鏡検査が必要で、定期的な観察と管理が求められます。

バレット食道とは?

バレット食道とは、本来は扁平上皮で覆われているはずの食道の粘膜が、長期にわたる胃酸の逆流により胃や腸に似た「円柱上皮」に置き換わってしまう状態です。これは「上皮化生」と呼ばれる変化で、組織学的には異常な反応に分類されます。

バレット食道は、逆流性食道炎(GERD)の慢性的な炎症によって発生します。胃酸が食道粘膜に繰り返し刺激を与えることで、粘膜がその環境に適応しようとし、酸に強い円柱上皮へと変化するのです。

この変化自体は一見適応反応のように見えますが、実際には「前がん病変」として知られており、バレット食道から食道腺がんが発生するリスクが高まるとされています。特に欧米では、バレット食道に関連した腺がんの増加が問題となっており、日本でも今後注意すべき疾患とされています。

原因

バレット食道の最も大きな原因は、胃酸や胆汁の食道への逆流です。これは逆流性食道炎と密接に関連しており、長期にわたる胃酸の逆流によって食道粘膜が慢性的に刺激され、円柱上皮への変化が引き起こされます。

このような胃食道逆流の背景には、下部食道括約筋(LES)の機能低下、食道裂孔ヘルニア、肥満、加齢、喫煙、過度なアルコール摂取などが関係しており、これらの要因が重なることで発症リスクが高まります。

また、食生活の欧米化も要因のひとつです。脂肪の多い食事や過食、食後すぐに横になる習慣などが胃酸の逆流を助長し、結果としてバレット食道の形成につながります。

胃の切除術後や特定の内科的疾患(強皮症など)に伴う食道運動障害でも胃酸が逆流しやすくなり、バレット食道が生じることがあります。逆流症状が長く続く人ほど、上皮の変化が進行しやすいとされています。

症状

バレット食道の症状は、背景にある逆流性食道炎と共通することが多く、代表的なものには「胸やけ」や「呑酸(酸っぱい液体がこみ上げる感じ)」があります。

その他、食後の胸部不快感、喉の違和感、咳、声のかすれなどの非典型的な症状もみられることがあります。逆流症状は特に、食後や就寝時に悪化しやすく、日常生活に支障をきたすこともあります。

しかしながら、バレット食道自体は無症状で経過することも珍しくありません。そのため、内視鏡検査で偶然発見されることも多くあります。症状が軽微な場合でも、粘膜変化が進行しているケースがあるため注意が必要です。

潰瘍や出血を合併した場合には、嚥下困難や吐血、黒色便(タール便)などの症状が出現することもあります。バレット食道が進行して「異形成」や「腺がん」に至ると、体重減少や食欲不振などの全身症状が現れることもあります。

診断方法と治療方法

診断には、上部消化管内視鏡(胃カメラ)が必須です。内視鏡検査では、食道と胃の境界部(胃食道接合部)を詳しく観察し、通常の扁平上皮とは異なる赤みを帯びた円柱上皮が見られるかを確認します。

内視鏡所見だけでは確定診断できないため、組織の一部を採取して病理検査(生検)を行い、粘膜が円柱上皮に置き換わっていること、さらには異形成(がんの前段階)があるかどうかを確認します。

治療の基本は、逆流を抑える薬物療法です。プロトンポンプ阻害薬(PPI)やP-CABを用いて胃酸分泌を抑えることで、食道への刺激を軽減します。

異形成が認められない場合は、薬物治療と定期的な内視鏡検査による経過観察が中心となります。一方で、高度異形成や早期がんが発見された場合は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や粘膜下層剥離術(ESD)が行われることがあります。進行がんの場合は外科手術が必要となることもあります。

予後

バレット食道そのものは、適切な管理と治療を行えば長期にわたって安定した経過をたどることが多い病気です。しかし、無治療で放置された場合には、約0.1〜0.5%の割合で食道腺がんに進行するとされており、予後に大きな影響を及ぼす可能性があります。

特に「異形成」と呼ばれる前がん状態が進行してくると、がん化リスクが高まり、定期的な検査による監視と早期治療が極めて重要となります。早期発見できれば内視鏡治療による完治も可能であり、予後は良好です。

一方で、進行がんとして見つかった場合は、外科手術や化学療法が必要となり、予後が悪化する可能性があります。そのため、バレット食道と診断された場合には、無症状でも計画的な内視鏡フォローが不可欠です。

薬物療法で症状のコントロールが可能であっても、定期的な評価を怠らず、がん化の兆候がないか慎重に見守る必要があります。

予防

バレット食道の予防には、逆流性食道炎の管理が最も重要です。食べ過ぎや脂っこい食事、アルコール、カフェイン、チョコレートなどの摂取を控え、胃酸の逆流を起こしにくい生活習慣を心がけましょう。

食後すぐに横になるのは避け、就寝の2〜3時間前までに食事を終えるようにすることも有効です。就寝時に頭を高くして寝ることも、逆流の予防に役立ちます。

禁煙も重要な予防策です。タバコは下部食道括約筋の働きを弱め、胃酸の逆流を促すことが知られています。肥満も逆流のリスクを高めるため、適正体重の維持が推奨されます。

また、逆流症状が長く続く場合は、自己判断せずに消化器内科を受診し、早期に内視鏡検査を受けることが予防につながります。日常的な胃の不調を軽視せず、継続的な対応が将来のリスク低下につながります。

関連する病気や合併症

バレット食道と関連が深いのは、逆流性食道炎です。慢性的な胃酸逆流により発症するため、逆流症状を繰り返す患者ではバレット食道の有無を確認することが大切です。

最も重要な合併症は「食道腺がん」の発生です。特に高度異形成からの移行が知られており、バレット食道は前がん状態として取り扱われます。発見が遅れると、外科手術や抗がん剤治療が必要になるため、定期的な内視鏡検査と病理検査による経過観察が必要です。

その他、「食道潰瘍」「出血」「食道狭窄」などの炎症性合併症や、咳・喉の痛み・喘息様症状などの呼吸器症状を伴うこともあります。

バレット食道と診断された患者には、がんの早期発見のための監視体制が不可欠です。併存疾患や生活背景も含めて、包括的に管理していくことが求められます。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本消化器病学会「GERD・バレット食道診療ガイドライン」(https://www.jsge.or.jp/)

厚生労働省e-ヘルスネット「胃食道逆流症(GERD)」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)

順天堂医院 消化器内科「バレット食道」(https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/shokaki/)

国立国際医療研究センター「食道腺がんとバレット食道」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/06/25
  • 更新日:2025/06/26

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