蠕虫ぜんちゅう

蠕虫は、人や動物の体内にすみつく細長い寄生虫の総称です。多くは腸に寄生し、腹痛や下痢、貧血、体重減少などを起こしますが、種類によっては肝臓や脳など全身に広がり、重い合併症の原因になることもあります。

⚫︎蠕虫とは?

蠕虫(ぜんちゅう)は、ミミズのような細長い形をした寄生虫のグループの呼び名です。
寄生虫とは、人や動物の体の中や表面にすみつき、宿主(すみついた相手)の栄養などを利用して生きる生物のことを指します。

蠕虫は大きく次の3つに分けられます。

  • 線虫:回虫、鉤虫(こうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)、糞線虫(ふんせんちゅう)、蟯虫(ぎょうちゅう)など
  • 条虫:サナダムシと呼ばれることが多い寄生虫(豚や牛、魚を介してうつるタイプなど)
  • 吸虫:肝吸虫、肺吸虫、横川吸虫など

世界的には、土壌や飲み水、衛生状態が不十分な地域で蠕虫感染が多く、日本では生魚・生肉の摂取や海外渡航がきっかけになることが少なくありません。

 

⚫︎蠕虫の原因

蠕虫感染の原因となる主な経路は次のとおりです。

飲食物を介した感染

  • 十分に洗えていない生野菜、汚染された水で育った野菜
  • 加熱が不十分な肉(豚肉・牛肉など)、内臓
  • 生の魚やイカ・タコなど(条虫や一部の線虫など)

土や砂を介した感染

  • 裸足で土の上を歩く
  • 素手で土や泥をさわる作業(農作業、砂場遊びなど)
  • このようなとき、土の中にいた幼虫が皮膚から体内に入りこむタイプの蠕虫もいます

人から人へうつる場合

  • 蟯虫のように、肛門周囲に産みつけられた卵が手や衣類に付き、口から入り直すことで家族内で繰り返し感染するものもあります

動物やペットからの感染

  • 犬猫の回虫、その他の寄生虫が、ふん便や土を介して人にうつることがあります

 

⚫︎蠕虫の症状は?

蠕虫の種類、寄生している場所、寄生している数によって症状はさまざまですが、よく見られるものをまとめると次のようになります。

  • 腹痛、下痢、軟便、便秘、腹部の張り
  • 吐き気、嘔吐、食欲不振
  • 栄養障害・貧血
  • 体重減少、痩せてきた
  • だるさ、疲れやすさ、立ちくらみ
  • 顔色が悪い、息切れがする

「おなかの調子が長くおかしい」「体重が勝手に減ってきた」「便やおしりから虫のようなものが出た」などのときは、蠕虫感染を疑って受診を検討しましょう。

 

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めに医療機関(内科・小児科・消化器内科など)を受診してください。

  • 腹痛や下痢が数週間以上続く
  • 体重減少や貧血(だるさ・息切れなど)が気になる
  • 夜間の肛門かゆみがつづく(特に子ども)
  • 便やおしりから白く細長いものが出た、虫のようなものを見た
  • 発熱やじんましんを伴う強い腹痛があり、魚や肉を生で食べた後である
  • 海外渡航後に、原因不明の腹部症状や全身症状が続く

受診時には、食事内容(生ものの有無)や海外渡航歴、ペットの有無などをあらかじめメモにしておくと診察がスムーズになります。

 

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

  • 蠕虫感染が疑われる場合、問診・診察とともに、便検査や血液検査、必要に応じて画像検査などを組み合わせて診断します。
    どの種類の蠕虫なのかによって治療薬が変わるため、可能な限り種類を特定することが大切です。
  • 治療の中心は、寄生虫を駆除する飲み薬(駆虫薬)です。
    症状に応じて、貧血や脱水に対する点滴・鉄剤投与、痛み止めなどをあわせて行います。
    重い合併症(腸閉塞、脳や眼への寄生など)があれば、入院して詳しい検査や手術を行うこともあります。

 

▶︎蠕虫の診断

1)問診・診察

  • いつから、どのような症状が出ているか
  • 最近食べたもの(生魚・生肉・生ガキなど)、海外渡航歴
  • ペット(犬猫など)との生活状況、農作業や砂場遊びの有無
  • 体重変化、全身状態(だるさ、熱、発疹など)

これらを丁寧に聞き取り、腹部や皮膚、肛門周囲の診察を行います。

2)便検査

  • 便中の虫卵や成虫、虫体の一部を顕微鏡で確認します
  • 蟯虫が疑われる場合は、早朝に肛門周囲にセロハンテープを貼って卵を採取する検査(セロハンテープ法)が行われることがあります

3)血液検査

  • 白血球の一種である好酸球(こうさんきゅう)が増えていないか
  • 貧血の有無、栄養状態(アルブミンなど)
  • 炎症の程度などを調べます

4)血清学的検査・画像検査

  • 特定の蠕虫が疑われる場合、血液中の抗体を調べて感染の証拠を確認することがあります
  • 肝臓・肺・脳・筋肉などに嚢胞(袋状の病変)ができるタイプでは、超音波検査やCT、MRIなどの画像検査が役立ちます

 

▶︎蠕虫の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

  • 症状の評価:腹痛の強さ、発熱、脱水(口の乾き、尿の量)や貧血の程度を確認します
  • 二次感染予防:手洗いの徹底、便やおむつの適切な処理、タオルや下着の共用を避けるなど、家族内への広がりを抑える説明を行います

B. 駆虫薬による治療

  • アルベンダゾール、メベンダゾール、プラジカンテルなど、蠕虫の種類に合った薬を選び、決められた日数だけ内服します
  • 薬の種類や量は、年齢、体重、妊娠の有無、肝臓・腎臓の状態などに応じて医師が調整します
  • 治療中には、一時的に虫体が体外に出ることで驚かれることがありますが、多くは治療がうまくいっているサインでもあります

C. 合併症への対応・入院治療

  • 重い貧血や脱水、腸閉塞がある場合は入院し、点滴や血液製剤、場合によっては外科的手術が必要になることがあります
  • 脳や眼など重要な臓器に寄生した場合は、専門医による評価のもと、駆虫薬とステロイド、手術などを組み合わせて治療します

 

⚫︎蠕虫の予後

多くの蠕虫感染症は、適切な薬による治療を行えば、完全に駆虫でき、予後(治りやすさ)も良好です。

ただし、栄養障害や貧血が進んでいる場合、成長期の子どもでは身長や体重の伸びに影響することがあります。

また、脳・眼・心臓・肝臓などに寄生した場合や免疫力が低い方では、重い後遺症を残すことがあり、早期発見・早期治療が重要です。

治療後もしばらくは、定期的な便検査や血液検査で、再感染や取り残しがないかを確認することがあります。

 

⚫︎蠕虫の予防

蠕虫感染を完全にゼロにすることは難しいですが、次のような工夫でリスクを下げられます。

  • 肉や魚、貝類は十分に加熱して食べる
  • 生食用以外の魚や肉を生で食べない
  • 野菜や果物はよく洗ってから食べる
  • 安全な水道水を利用し、井戸水・川の水は直接飲まない
  • トイレの後やおむつ替えの後、調理前・食事前には石けんで手洗いを徹底する
  • 土の上を裸足で歩かない(特に海外や衛生環境のよくない場所)
  • 砂場遊びの後はしっかり手洗いする

 

⚫︎蠕虫に関連する病気や合併症

蠕虫そのものは治療がしやすい病気ですが、放置すると次のような問題につながることがあります。

他の性感染症との合併

  • クラミジア、淋菌、梅毒、HIVなど、他の性感染症と同時にかかっていることがあります
  • 粘膜に炎症があると、HIVなど他の性感染症にも感染しやすくなるとされています

女性の生殖器への影響

  • 長引く腟炎や子宮頸管炎が、他の感染症と重なって骨盤内炎症性疾患(PID)や不妊、慢性的な骨盤痛などと関係する可能性が指摘されています
  • 妊娠中の感染では、早産や前期破水などのリスクが高まる可能性があります

男性の泌尿器合併症

  • 尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎などの原因となることがありますが、多くは軽症です

 

⚫︎まとめ

蠕虫は、ミミズのような形をした寄生虫の総称で、多くは腸にすみつきます。

腹痛や下痢、貧血、体重減少など、さまざまな症状の原因となりますが、薬で治療できるものがほとんどです。

生ものや衛生状態に注意し、手洗い・加熱・ペットの管理を心がけることで予防につながります。

気になる症状が続くときは、早めに医療機関で相談しましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/06
  • 更新日:2026/03/06

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