アジソン病あじそんびょう

アジソン病は、副腎から分泌される副腎皮質ホルモン(コルチゾールやアルドステロン)が慢性的に不足することで起こる疾患です。全身の倦怠感や低血圧、色素沈着などの症状が見られ、生命に関わる副腎クリーゼを防ぐためにも早期の診断とホルモン補充治療が重要です。

アジソン病とは?

アジソン病は、副腎の機能が低下することにより、副腎皮質ホルモン(主にコルチゾールとアルドステロン)が十分に分泌されなくなる慢性副腎不全です。副腎は腎臓の上に位置する内分泌器官で、ストレスへの対応や血圧、電解質の調整に関わるホルモンを分泌しています。

アジソン病は「原発性副腎皮質機能低下症」とも呼ばれ、下垂体や視床下部の異常によって起こる「続発性副腎不全」とは区別されます。特に自己免疫反応によって副腎が破壊される自己免疫性副腎炎が原因の多くを占めます。

ゆっくりと症状が進行するため見逃されやすく、診断が遅れると命に関わる「副腎クリーゼ(急性副腎不全)」に陥る危険があります。

原因

アジソン病は、両側の副腎皮質が破壊・萎縮し、ホルモンが分泌されなくなることで発症します。主な原因は以下の通りです。

主な原因

  • 自己免疫性副腎炎:日本でもっとも多く、自己免疫反応で副腎皮質が徐々に破壊される
  • 結核性副腎炎:結核菌が副腎に感染して組織が破壊される(かつては主要因)
  • 副腎出血、アミロイドーシス、サルコイドーシス、転移性腫瘍などによる副腎障害
  • 先天性副腎低形成
  • 薬剤による副腎障害(ケトコナゾールなど)

二次性(続発性)との違い

  • アジソン病は原発性であり、副腎そのものが障害される
  • 下垂体からのACTH分泌障害による副腎機能低下は「続発性副腎不全」として別に扱われる

正確な診断により、原発性と続発性の鑑別が必要です。

症状

アジソン病の症状は、副腎皮質ホルモンの慢性的な欠乏によるもので、多くは非特異的であるため診断が遅れることがあります。

全身症状

  • 強い倦怠感、脱力感
  • 体重減少、食欲不振
  • 筋力低下、無気力

循環器・消化器系

  • 低血圧(起立性低血圧を伴うことも)
  • めまい、立ちくらみ
  • 吐き気、嘔吐、便秘または下痢
  • 低ナトリウム血症、高カリウム血症
  • 低血糖(特に小児)

皮膚症状

  • 皮膚や粘膜の色素沈着(特に日焼けしやすい部位、歯肉、関節部)

女性に特有の症状

  • 月経不順、無月経
  • 体毛の減少(アンドロゲン欠乏)

副腎クリーゼ(急性増悪)

  • 急激な血圧低下、ショック、意識障害、低血糖など

日常的な疲労感の延長と見なされやすく、注意深い診察が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 血液検査
    - コルチゾール値:低下
    - ACTH:上昇(原発性では高値)
    - ナトリウム低下、カリウム上昇、血糖低下
  • ACTH刺激試験:合成ACTHを投与し、コルチゾール分泌反応を確認(反応が乏しければアジソン病を示唆)
  • 副腎CT/MRI:副腎の萎縮や石灰化、腫瘍性病変の有無を評価
  • 自己抗体検査:抗21-水酸化酵素抗体などで自己免疫性の判定

治療

  • 副腎皮質ホルモン補充療法
    - グルココルチコイド(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン)
    - ミネラルコルチコイド(フルドロコルチゾン)
  • 副腎クリーゼ予防のため、感染症や外科手術時には補充量の増加が必要
  • 水分・電解質の補正(特にクリーゼ時)

生涯にわたるホルモン補充と、急性悪化時の対応が治療の基本です。

予後

適切なホルモン補充療法が行われれば、アジソン病の予後は比較的良好です。日常生活を支障なく送ることが可能ですが、副腎クリーゼの発症には常に注意が必要です。

良好な予後が期待できるケース

  • 早期診断・治療が行われ、患者が自己管理を徹底している
  • 外傷・感染・ストレス時の対応を理解し、適切に対応できる
  • 定期的に通院してホルモン量を調整している

注意すべきケース

  • 副腎クリーゼ:感染や手術、ストレス時に補充量が不足すると致命的になる可能性がある
  • 急激なホルモン欠乏により意識障害やショックに陥ることがある
  • 慢性的な低ナトリウム血症や低血糖による生活の質の低下

日常的な体調の変化に敏感になり、自己管理が予後に大きく関与します。

予防

アジソン病は自己免疫性疾患であり、発症自体を完全に予防する方法はありませんが、早期発見と副腎クリーゼの予防が最も重要です。

予防的アプローチ

  • 慢性の倦怠感、低血圧、色素沈着がある場合は内分泌科で評価を受ける
  • 自己免疫疾患の既往がある人は定期的な内分泌評価が有用
  • 副腎機能不全の家族歴がある場合、注意深い観察を行う

副腎クリーゼの予防

  • 感染や外傷、ストレスがかかった時にはホルモン補充を増量(ストレス用量)
  • 副腎不全患者は「医療用ステロイドカード」や緊急時の注射薬を携帯する
  • 長期ステロイド使用中に突然中止しない(医師の指導下で漸減)

教育と対応マニュアルの共有が生命を守る鍵です。

関連する病気や合併症

アジソン病は自己免疫性疾患であるため、他の自己免疫疾患と合併することがあります。また、ホルモン不足に起因する二次的な合併症にも注意が必要です。

合併しやすい自己免疫疾患

  • 1型糖尿病
  • 自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)
  • 悪性貧血(自己免疫性胃炎)
  • 自己免疫性肝炎
  • 白斑、円形脱毛症
  • 多腺性自己免疫症候群(APS):複数の自己免疫疾患が同時に現れる症候群

ホルモン不足に伴う合併症

  • 低血糖発作
  • 低ナトリウム血症
  • 心血管系への負担(低血圧による)
  • 副腎クリーゼ(急性副腎不全)

これらの併発を予防するためにも、定期的な検査と病状把握が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「アジソン病」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本内分泌学会「副腎疾患の診療指針」(https://www.j-endo.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「副腎疾患について」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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