良性肝腫瘍りょうせいかんしゅよう
良性肝腫瘍とは、肝臓に発生する腫瘍のうち、がん化の可能性が低い腫瘍の総称です。多くは無症状で、健康診断や画像検査で偶然発見されます。種類によっては経過観察が中心ですが、まれに手術が必要になることもあります。
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良性肝腫瘍とは
良性肝腫瘍とは、肝臓にできる腫瘍のうち、がんのように周囲へ浸潤したり転移することがない、良性の腫瘍を指します。多くは偶然に健康診断や他の疾患の精査中に発見され、自覚症状がほとんどありません。
代表的な良性肝腫瘍には以下の3種類があります。
- 肝血管腫(かんけっかんしゅ):最も頻度が高く、血管が拡張してできる腫瘍
- 限局性結節性過形成(FNH):女性に多く、肝臓の構造が局所的に変化したもの
- 肝細胞腺腫:稀だが、経口避妊薬の使用と関連があり、まれに出血やがん化のリスクあり
これらは悪性腫瘍と異なり命に関わることは少ないものの、腫瘍の種類や大きさによっては出血や圧迫症状を引き起こすこともあるため、適切な診断と経過観察が重要です。
原因
良性肝腫瘍の発生原因は明確には解明されていないものもありますが、いくつかのリスク因子や関連が示唆されています。
肝血管腫
- 原因は不明だが、先天的な血管奇形と考えられている
- 女性に多く見られ、ホルモン(特にエストロゲン)の影響が関与しているとされる
- 妊娠中やホルモン治療中に増大することがある
限局性結節性過形成(FNH)
- 異常な血流(動脈の奇形)により肝細胞が局所的に過形成を起こす
- 女性に多く、20〜50歳代が中心
- 経口避妊薬との関連も報告されているが、明確な因果関係は不明
肝細胞腺腫
- まれな腫瘍で、長期にわたる経口避妊薬の使用がリスク因子
- 男性ではアナボリックステロイドの使用との関連もある
- 肥満や糖尿病との関連も指摘されている
腫瘍の種類により背景が異なるため、精密検査による分類が重要です。
症状
良性肝腫瘍はほとんどが無症状で、健康診断や腹部エコー、CT、MRIなどの画像検査で偶然見つかることがほとんどです。しかし、大きさや部位によっては症状が現れることがあります。
無症状の場合
- 最も多く、特に肝血管腫やFNHは無症候性のことがほとんど
腫瘍が大きくなった場合の症状
- 右上腹部の不快感、圧迫感
- 食欲不振、腹部膨満感
- 体重減少(非常にまれ)
- 腹痛(腫瘍が破裂・出血した場合)
- 腫瘤を触れることがある(瘤状に大きくなった場合)
- まれにホルモン異常症状(肝細胞腺腫など)
腫瘍が10cm以上になると、周囲の臓器を圧迫することがあり、定期的な経過観察が推奨されます。
診断方法と治療方法
診断
- 問診:症状の有無、既往歴、ホルモン剤の使用状況などを確認
- 血液検査:肝機能、腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-IIなど)で悪性との鑑別を行う
- 画像検査
- 腹部超音波:簡便かつ非侵襲的なスクリーニング手段
- CT:造影剤を使用して腫瘍の性状を評価
- MRI:肝細胞特異的造影剤を使うと診断精度が高い - 肝生検:画像だけで診断が確定できない場合に行うこともある(出血リスクあり)
治療
- 基本的には無症状・小型の腫瘍は治療不要で経過観察
- 定期的な画像検査(半年〜1年ごと)でサイズや形状の変化を追う
- 以下のケースでは手術を検討する
- 腫瘍径が大きく、症状がある場合
- 出血のリスクが高いと判断された場合(特に肝細胞腺腫)
- 鑑別困難な腫瘍や悪性の可能性が否定できない場合
治療は腫瘍の性質、患者の年齢や背景に応じて選択されます。
予後
良性肝腫瘍はがん化のリスクが極めて低く、通常は生命に関わることはありません。そのため、予後は一般的に良好で、日常生活に制限は不要です。
良好な経過をたどるケース
- 肝血管腫やFNHは経過観察のみで問題なし
- 大きさに変化がなければ治療の必要はない
- ホルモン薬を中止した後に縮小することもある
注意が必要なケース
- 肝細胞腺腫では、まれに破裂やがん化のリスクがあるため注意
- 10cm以上の大型腫瘍、または急激に増大する腫瘍は経過観察より積極的な対応が望ましい
- 経過観察中に症状が出現した場合は再評価が必要
基本的には、定期的な画像検査を続けることで安全に経過をみることが可能です。
予防
明確な予防法があるわけではありませんが、良性肝腫瘍の発症や増大のリスクを下げるためにできることはあります。
生活習慣の見直し
- バランスのとれた食事と適度な運動により肥満を防ぐ
- 糖尿病や高脂血症の管理を適切に行う
ホルモン剤の使用に注意
- 経口避妊薬(ピル)やホルモン補充療法の長期使用については、医師と相談しながら適正な管理を行う
- 既に肝腫瘍がある場合、ホルモン剤の使用中止により腫瘍の増大が抑えられることがある
定期的な検査
- 健診で肝腫瘍を指摘された場合は、専門医での評価を受ける
- サイズや症状の変化がないか定期的にモニタリング
予防よりも「早期発見・経過観察」が基本的な対応になります。
関連する病気や合併症
良性肝腫瘍自体は通常、重大な合併症を引き起こすことはありませんが、腫瘍の種類や大きさによっては注意が必要です。
関連疾患・合併症
- 腫瘍破裂:肝細胞腺腫でまれに見られ、腹腔内出血を引き起こす
- 貧血:腫瘍からの出血が持続すると慢性的な鉄欠乏性貧血となることも
- 肝機能障害:大きな腫瘍が肝臓内の血流を妨げた場合に起こる
- がん化:肝細胞腺腫はまれに肝がんに進展する可能性がある
- 鑑別困難な腫瘍:画像で悪性腫瘍との区別がつかない場合には外科的切除が検討されることも
重大な合併症はまれですが、経過観察中の変化には注意が必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本肝臓学会「肝腫瘍診療ガイドライン」(https://www.jsh.or.jp/)
厚生労働省e-ヘルスネット「肝の腫瘍」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
国立国際医療研究センター「良性肝腫瘍の管理と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)
日本消化器病学会「肝腫瘍の種類と対応」(https://www.jsge.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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