腺腫様甲状腺腫せんしゅようこうじょうせんしゅ

腺腫様甲状腺腫は、甲状腺が部分的または全体的に結節状に腫大する良性の疾患で、ホルモン機能が正常なことが多く、無症状のまま経過することもあります。見た目のしこりや圧迫感で発見され、必要に応じて手術や経過観察が行われます。

腺腫様甲状腺腫とは?

腺腫様甲状腺腫は、甲状腺内に複数の結節(しこり)が形成され、部分的または全体的に甲状腺が腫大する疾患です。良性腫瘍の一種であり、甲状腺の機能(ホルモン産生)は多くの場合正常に保たれています。

本症は「びまん性結節性甲状腺腫」とも呼ばれ、特に中年以降の女性に多く見られます。単発または多発性の結節が徐々に大きくなり、外見上のしこりや頸部の圧迫感から発見されることがあります。

機能性(ホルモン過剰)ではないため、代謝症状を伴わないことがほとんどで、甲状腺機能検査では異常が認められない場合が多いのが特徴です。大部分は良性であるものの、悪性腫瘍との鑑別や経過観察が重要です。

原因

腺腫様甲状腺腫の原因ははっきりとは解明されていませんが、加齢、ホルモン環境、慢性的な甲状腺刺激などが関与していると考えられています。

主な原因・要因

  • 加齢による甲状腺の変性と再生の繰り返し
  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)のわずかな持続刺激
  • ヨウ素摂取の地域差:不足や過剰が長期的に甲状腺に影響する
  • 女性ホルモンの影響:閉経後女性に多いことから、エストロゲンとの関連が示唆されている
  • 遺伝的背景:家族内発症の報告がある

結節の増殖は多くの場合ゆっくりと進行し、複数の小結節が合体して大きな結節を形成することもあります。

症状

腺腫様甲状腺腫は、ゆっくりと進行するため初期は無症状のことが多く、健康診断や人間ドックなどで偶然発見されるケースも少なくありません。しかし、結節が大きくなるにつれて症状が出ることもあります。

主な症状

  • 頸部のしこり:皮膚から触れる程度に目立つことがある
  • 頸部の圧迫感:のどの違和感や重苦しさ
  • 嚥下障害:結節が食道を圧迫して飲み込みにくくなる
  • 呼吸障害:大きな腫瘍が気道を圧迫すると呼吸困難を招く
  • 嗄声(声のかすれ):反回神経への圧迫が原因

その他の所見

  • ホルモン異常による症状はほとんど見られない
  • 稀に結節の出血によって急な腫れや痛みが出ることがある

症状がない場合でも、サイズの拡大や悪性化リスクを考慮して経過観察が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診と触診:しこりの存在、大きさ、可動性、圧痛などを確認
  • 血液検査
    - 甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)値は通常正常
  • 甲状腺超音波検査(エコー)
    - 結節の大きさ、数、内部構造(嚢胞性・実質性など)を評価
  • 細胞診検査(FNA:穿刺吸引細胞診)
    - 悪性との鑑別のために行われる
  • CT/MRI(必要時):大きな腫瘍の範囲や圧迫の程度を評価

治療

  • 経過観察:無症状で小型の場合、定期的なエコー検査と血液検査
  • 外科的治療
    - 腫瘍が大きく圧迫症状がある場合や、美容的・心理的理由がある場合
    - 結節に悪性の疑いがある場合は手術が推奨される

外科的切除後も定期的なホルモンモニタリングが必要です。

予後

腺腫様甲状腺腫の予後は一般的に良好で、悪性化することは稀です。治療の必要がないケースも多く、定期的な経過観察のみで対応できる場合がほとんどです。

良好な予後が期待できるケース

  • 腫瘍の大きさが安定している場合
  • 甲状腺機能に異常が認められない場合
  • 悪性所見が細胞診や画像診断で否定されている場合

治療が必要となるケース

  • 腫瘍が急速に増大している場合
  • 圧迫症状や外見上の問題がある場合
  • 細胞診で悪性の疑いがある場合

手術後のホルモン補充が必要になるケースもありますが、適切な管理で日常生活に支障をきたすことは少ないです。

予防

腺腫様甲状腺腫の明確な予防法は確立されていませんが、生活習慣や健康管理によって早期発見・早期対応につなげることは可能です。

予防的な生活習慣

  • ヨウ素の適切な摂取:海藻類などからの摂取は適度に
  • 定期的な健康診断を受ける
  • 喉元のしこりや圧迫感に気づいたら早めに受診
  • ホルモン異常がある場合には内科や内分泌科での管理を継続
  • ストレスをため込まない、睡眠を確保するなどの生活習慣の改善

早期発見のために

  • エコー検診の活用(特に中高年女性)
  • 家族に甲状腺疾患の既往がある場合は定期チェックを

大半は進行が緩やかなため、予防というよりはモニタリングが重要です。

関連する病気や合併症

腺腫様甲状腺腫は良性疾患ですが、経過中に他の疾患や機能異常を合併することがあり、注意が必要です。

主な関連疾患・合併症

  • 機能性甲状腺腺腫:稀にホルモンを自律的に分泌し、甲状腺中毒症を引き起こす
  • 甲状腺機能低下症:長期的な腺腫の変化に伴ってホルモンが不足することもある
  • 甲状腺出血:結節内の出血により急な腫れや痛みが出る
  • 甲状腺嚢胞の破裂
  • 甲状腺がんとの鑑別:一部の結節で悪性変化が疑われる場合がある
  • 声帯麻痺:極めて大型の場合、反回神経圧迫によって起こる

これらを見逃さないために、定期的な超音波検査と内分泌的評価が必要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

内科の診療を受ける

クラウドドクターは24時間365日対応。 風邪・腹痛・喉の痛み・吐き気などの急な体調不良に。

現在の待ち時間

3

クラウドドクターの
オンライン診療

クラウドドクターのオンライン診療

クラウドドクターでは、問診内容を元に全国から適したドクターがマッチングされ、あなたの診療を行います。診療からお薬の処方までビデオ通話で受けられるため、お忙しい方にもおすすめです。

  • 24時間365日
    いつでも診療OK
  • 保険診療が
    ご利用可能
  • お近くの薬局やご自宅で
    お薬の受取り可能

■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「甲状腺腫瘍」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本甲状腺学会「甲状腺結節性疾患の診療指針」(https://www.japanthyroid.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「甲状腺疾患について」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

即時、あなたに適した
ドクターをマッチング

現在の待ち時間

3