亜急性甲状腺炎あきゅうせいこうじょうせんえん

亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染の後などに甲状腺に炎症が生じ、一時的に甲状腺ホルモンが過剰に放出される病気です。発熱と甲状腺の痛みが特徴で、自然軽快することが多いものの、適切な対症療法が重要です。

亜急性甲状腺炎とは?

亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染後などをきっかけに甲状腺に炎症が起こり、甲状腺ホルモンが一過性に大量に放出される疾患です。「痛みを伴う甲状腺炎」として知られており、首の前側の痛みと発熱を主症状とします。

多くは自己限定性であり、時間の経過とともに自然に軽快しますが、症状が強い場合には治療が必要です。病気の経過中に、ホルモン値の急激な変動(中毒症状→低下症状)を伴うことがあるため、定期的な検査と経過観察が大切です。

主に30~50代の女性に多くみられ、春から秋にかけての発症が多いとされています。

原因

亜急性甲状腺炎の原因は明確にはわかっていませんが、ウイルス感染に関連して発症することが多いとされています。直接的なウイルス感染ではなく、感染後の免疫反応によって甲状腺の濾胞細胞が破壊され、炎症が生じると考えられています。

主な関連要因

  • 風邪や上気道炎などのウイルス感染の後
  • コロナウイルスやインフルエンザウイルスの関与が報告されている
  • 免疫反応の異常:自己免疫反応の一種とする説もある

発症の好発因子

  • 30〜50代の女性に多い
  • 季節性(春から秋にかけて多い)
  • 過去のウイルス感染歴との関連が示唆されるが、明確な特定ウイルスは不明

感染から数週間後に発症することが多く、免疫反応が過剰になって甲状腺が障害されることで発病すると考えられます。

症状

亜急性甲状腺炎では、急性の痛みと全身症状が特徴的に現れます。典型的には片側の甲状腺に始まり、数日かけて反対側に波及することがあります。

初期の主な症状

  • 前頸部(首の前側)の痛み
  • 痛みは耳の下からあご、胸元に放散することがある
  • 甲状腺の腫れと圧痛(触ると強く痛む)
  • 発熱(38度前後)、倦怠感、疲労感
  • 嚥下時や首を動かすときの痛み

中期以降の症状(ホルモン変動による)

  • 動悸、手の震え、発汗、体重減少(甲状腺中毒症状)
  • 数週間後にホルモンが低下し、だるさや便秘、寒がり(甲状腺機能低下症状)

その他の所見

  • 血液検査で炎症反応(CRP、白血球増加)
  • 一時的な甲状腺ホルモンの上昇(FT3、FT4)

症状の出現と経過には個人差があり、経過中に無症状の期間があることもあります。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診と身体診察:首の痛み、発熱、発症時期、風邪様症状の有無を確認
  • 血液検査
    - 甲状腺ホルモン(FT3、FT4):初期は上昇、後期は低下傾向
    - TSH:初期は抑制傾向
    - CRP、白血球数:炎症反応が高値
  • 甲状腺自己抗体:基本的に陰性
  • 甲状腺超音波検査:低エコー領域、血流低下がみられる
  • シンチグラフィー(必要時):ホルモン産生の低下を確認し、バセドウ病との鑑別に使用

治療

  • 対症療法が基本
    - 軽症:アセトアミノフェンやNSAIDs(痛み・発熱の緩和)
    - 中等症以上:副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)の内服
  • ホルモン異常に応じた補充
    - 機能低下が一時的であれば経過観察
    - 症状が強ければ甲状腺ホルモン製剤を一時的に使用

症状改善までに2〜8週程度を要しますが、ほとんどは数か月以内に自然治癒します。

予後

亜急性甲状腺炎は自然経過で軽快することが多く、予後は良好とされます。ただし、経過中に再燃や一時的な甲状腺機能低下が見られることがあるため、定期的なフォローアップが重要です。

良好な予後が期待できるケース

  • 早期に適切な対症療法を受けた場合
  • 軽症で自然に回復した場合
  • 甲状腺機能が速やかに正常化するケース

注意すべき経過

  • 約10〜20%の患者で一時的な甲状腺機能低下がみられる
  • 約5〜15%で永続的な甲状腺機能低下に移行する可能性あり
  • まれに再発することもある(数年後に反対側に発症など)

治癒後も数か月間はホルモン値の経過観察を続けることが推奨されます。

予防

亜急性甲状腺炎はウイルス感染後に発症することが多いため、完全な予防は難しいものの、免疫機能を整える生活習慣が発症リスクの低減につながる可能性があります。

予防のための生活習慣

  • 風邪やインフルエンザなどの感染予防(手洗い、うがい、ワクチン接種)
  • 栄養バランスの良い食事を心がける
  • 十分な睡眠と休養をとる
  • 過労やストレスの蓄積を避ける
  • 感染症流行期は人混みを避け、マスクを着用する

早期発見のために

  • 首に違和感や痛みがある場合は早めに受診
  • 風邪の後に熱が長引く、動悸や体重減少がある場合は内科や内分泌科へ

発症しても適切な対応で重症化を防げるため、早期対応が鍵です。

関連する病気や合併症

亜急性甲状腺炎自体は一過性の疾患ですが、経過中に他の甲状腺疾患や機能異常、または再発などを合併することがあります。

主な合併症・関連疾患

  • 甲状腺機能低下症(一過性または永続的)
  • 再発性亜急性甲状腺炎(まれに数年後に反対側で発症)
  • 無痛性甲状腺炎との鑑別(特に授乳期の女性)
  • バセドウ病との鑑別(発症時にホルモン異常が類似)
  • 副腎皮質ステロイド使用による副作用(長期使用時の骨粗鬆症、感染リスク)

これらのリスクに対して、定期的な血液検査と医師による経過観察が必要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「亜急性甲状腺炎」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本甲状腺学会「甲状腺炎の種類と診療」(https://www.japanthyroid.jp/)

国立国際医療研究センター「甲状腺の病気」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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