痔核(いぼ痔)じかく(いぼぢ)

痔核(いぼ痔)は、肛門周囲の血管がうっ血して腫れたり、膨らんだりする状態で、肛門の疾患の中で最も頻度が高いものです。出血や違和感、痛み、脱出感などの症状を伴い、便秘やいきみなどが原因で悪化します。生活習慣の改善と、症状に応じた治療が重要です。

痔核(いぼ痔)とは?

痔核とは、肛門付近の静脈(静脈叢)がうっ血して腫れ、いぼ状に膨らんだ状態を指します。一般的に「いぼ痔」と呼ばれ、日本人の約半数以上が一度は経験するといわれるほど、頻度の高い肛門疾患です。

痔核は発生部位によって「内痔核」と「外痔核」に分類されます。

  • 内痔核:肛門の内側(歯状線より奥)にできる。初期は痛みが少なく、出血が主な症状
  • 外痔核:肛門の外側にできる。痛みが強く、腫れや違和感が出やすい
  • 内外痔核:両者が同時に存在する混合型

初期には軽度の出血や違和感程度で済むこともありますが、進行すると痔核が肛門の外に出て戻らなくなったり、血栓ができて強い痛みを引き起こすこともあります。早期の対応が重要です。

原因

痔核の主な原因は、肛門周囲の血流がうっ滞し、静脈が拡張してしまうことにあります。特に以下のような要因が痔核を発症・悪化させるとされています。

主な原因・悪化要因

  • 排便時のいきみ:便秘や硬い便によって肛門に強い圧力がかかる
  • 長時間の座位:デスクワークや運転などで肛門部が圧迫され続ける
  • 妊娠・出産:骨盤内の静脈圧が上昇し、痔核ができやすくなる
  • 加齢:血管や支持組織の弾力が低下し、血流が滞りやすくなる
  • 過度のアルコール・刺激物の摂取:血管拡張作用によるうっ血
  • 下痢:頻繁な排便で肛門が刺激され、炎症を引き起こすこともある
  • 重い物を持つ習慣:腹圧が上がりやすく、痔核が悪化しやすい

痔核は一度発症すると慢性化しやすいため、これらの要因を避けることが予防・再発防止につながります。

症状

痔核の症状は、発生部位や進行度によって異なります。以下は主な症状です。

内痔核の症状

  • 排便時の出血(鮮血):便器が赤くなる、トイレットペーパーに血が付くなど
  • 脱出感:排便時に痔核が肛門の外に出てくることがある(進行例)
  • 痛みは少ない:内痔核は粘膜下にあり、痛みを感じにくい

外痔核の症状

  • 肛門の腫れ:しこりのような腫れが肛門の外に現れる
  • 強い痛み:血栓性外痔核では突然の激しい痛みを伴うことがある
  • 違和感・かゆみ:排便後に不快感が続くこともある

共通症状

  • 残便感:痔核の存在によって便が出切らない感じがする
  • 貧血:出血が長期にわたると鉄欠乏性貧血になることがある(まれ)

早期に対応すれば、軽度の症状で済む場合が多く、進行させないことが大切です。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診:出血の有無、排便状況、痛み、脱出感などの症状を確認
  • 視診:肛門周囲の腫れや出血の有無を確認
  • 直腸診(指診):肛門内に指を入れて腫れや異常を触知
  • 肛門鏡検査:内痔核の大きさや位置、出血源などを確認
  • 内視鏡検査:出血の原因が大腸にある可能性もあるため、必要に応じて実施

治療

  • 保存的治療(軽症〜中等症)
    - 食事指導:食物繊維と水分の摂取で便通を整える
    - 便秘・下痢の改善
    - 排便習慣の見直し(いきまない、トイレを長時間占有しない)
    - 軟膏や座薬:抗炎症成分、止血成分、鎮痛成分を含む薬剤を使用
    - 温浴(坐浴):血行促進と清潔保持の目的で行う
  • 外科的治療(重症例、再発例)
    - 結紮切除術:内痔核の根元を縛って切除
    - ジオン注(硬化療法):注射によって痔核を縮小させる
    - 超音波メスやレーザーによる低侵襲手術

患者の症状と生活背景に合わせて、段階的な治療が行われます。

予後

痔核の予後は、適切な治療と生活習慣の改善によって良好となるケースが多いです。保存療法でコントロール可能な症例が多く、重症であっても手術によって根治が可能です。

保存療法による経過

  • 軽度の出血や腫れは数日〜1週間で改善する
  • 薬物療法と生活指導により、再発を防ぎながら長期的にコントロール可能

手術後の経過

  • 術後1〜2週間は痛みや排便困難が残ることがある
  • 再発率は比較的低いが、便通や排便習慣が乱れると再発の可能性もある
  • 日常生活への復帰は、軽作業であれば術後数日〜1週間以内が目安

再発予防には術後も生活習慣の見直しが不可欠で、特に便通の維持が最も重要です。予後は全体として良好な疾患です。

予防

痔核を予防するには、排便習慣と肛門への負担を減らす生活を意識することが重要です。

便通管理

  • 食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、海藻、豆類)を日常的に摂取
  • 1日1.5〜2L程度の水分をしっかりとる
  • 便意を我慢せず、適切な時間に排便する
  • 排便時に強くいきまない
  • トイレで長時間スマートフォンなどを見ない(肛門への負担増)

生活習慣の改善

  • 長時間の座位や立位を避け、適度に体を動かす
  • 下半身の冷えを防ぎ、血流を良くする(特に冬場)
  • ストレスをためず、腸の動きを整える
  • 過度のアルコールや香辛料の摂取を控える
  • 重い物を頻繁に持ち上げる生活習慣を避ける

痔核は生活習慣に密接に関連しているため、日々の小さな工夫が予防に直結します。

関連する病気や合併症

痔核は単独で発症することも多いですが、以下のような疾患や状態と関連・鑑別が必要です。

関連疾患

  • 裂肛(きれ痔):肛門の皮膚が裂けて出血や痛みを伴う
  • 痔瘻:肛門周囲の膿瘍から管ができる疾患。慢性化しやすい
  • 直腸脱:直腸が肛門の外に飛び出す。高齢者に多い
  • 直腸がん、大腸がん:出血や便通異常が共通しており、鑑別が必要
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など):下血を繰り返すが、痛みの性質が異なる

合併症

  • 貧血:長期間の出血により発症することがある
  • 血栓性外痔核:血のかたまりができて激しい痛みを引き起こす
  • 脱出した痔核の嵌頓:戻らなくなり強い痛みと腫れを生じる
  • 感染症:まれに二次感染が起きることも

これらの疾患との正確な区別と適切な対応が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本大腸肛門病学会「痔核の診療ガイドライン」(https://www.coloproctology.gr.jp/)

厚生労働省e-ヘルスネット「痔核(いぼ痔)」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

国立国際医療研究センター「痔疾患の診断と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本臨床肛門病学会「肛門疾患の診療指針」(https://jacp-doctor.jp/society/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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