脱水症だっすいしょう

脱水症は、体内の水分と電解質のバランスが崩れた状態で、軽度から重度まで幅広く、生命に関わることもあります。特に高齢者や乳幼児では症状が出にくいため、こまめな水分補給と早期の対応が重要です。

脱水症とは?

脱水症とは、体内の水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)が不足し、細胞や臓器の機能に支障をきたす状態を指します。体液は体温調節、血液循環、代謝、老廃物の排出など多くの生理機能に関わっており、それが失われると全身に影響が及びます。

脱水は、体内の水分が失われる「水分欠乏型」、ナトリウムなどの電解質も同時に失われる「混合型」、ナトリウムだけが相対的に失われる「低張性脱水」などに分類されます。

原因は発汗、下痢、嘔吐、発熱、利尿剤の使用など多岐にわたり、特に高齢者や乳幼児、持病のある人では脱水の進行が早く、症状が表に出にくいことがあります。重度の脱水では意識障害やショック状態に陥ることもあるため、早期の予防と対応が必要です。

原因

脱水症の原因は、体液の喪失や水分摂取の不足、またはその両方によって引き起こされます。年齢や体調、環境によってもリスクが変わるため、個別の事情に応じた予防が重要です。

水分喪失の主な原因

  • 発汗:高温多湿な環境、激しい運動、発熱など
  • 下痢・嘔吐:感染性胃腸炎、食中毒、腸疾患など
  • 利尿:糖尿病、利尿剤の服用
  • 出血:外傷、大量出血
  • 熱傷:皮膚の損傷による体液喪失

水分摂取の不足

  • 高齢者:のどの渇きを感じにくくなる、飲み込みが困難
  • 乳幼児:体重当たりの水分喪失が多く、自己判断できない
  • 意識障害や寝たきりの患者:自力で水分補給ができない

その他の要因

  • 食事からの水分摂取が少ない
  • 気温の変化に対する適応が不十分

これらのリスク因子が重なることで、重度の脱水につながる可能性があります。

症状

脱水症の症状は、失われた水分の量や速度、体内の電解質のバランスによって異なります。軽度ではあまり自覚がないこともありますが、進行すると重篤な状態に至ることもあります。

軽度〜中等度の症状

  • のどの渇き
  • 尿量の減少(濃い尿)
  • 口の中の乾燥
  • 倦怠感、集中力低下
  • めまい、立ちくらみ
  • 筋肉のけいれん(特にふくらはぎ)

重度の症状

  • 体温上昇(熱中症に進行)
  • 皮膚の乾燥、冷感
  • 血圧の低下、脈拍の上昇
  • 吐き気、意識混濁
  • 脱力感、歩行困難
  • ショック状態(最重症)

年齢別の特徴

  • 高齢者:倦怠感や食欲不振が目立ち、脱水に気づきにくい
  • 乳幼児:泣いても涙が出ない、尿が出ない、ぐったりする

早期の発見と対応が重症化を防ぐ鍵となります。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診:水分摂取状況、下痢や嘔吐、発熱の有無などを確認
  • 身体所見
    - 皮膚の乾燥、口腔粘膜の湿潤度、尿の色や量
    - 血圧・脈拍・体温・意識状態
  • 血液検査
    - 電解質(ナトリウム、カリウムなど)の評価
    - BUN/Cr比の上昇(脱水時に高値)
    - 血液濃度(ヘマトクリット上昇)
  • 尿検査:比重や浸透圧の測定

治療

  • 軽度〜中等度の場合
    - 経口補水液(ORS)による水分と電解質の補給
    - 食事からの水分摂取も有効(スープ、果物など)
  • 重度の場合
    - 点滴による輸液治療(生理食塩水、乳酸リンゲル液など)
    - 原因疾患(下痢、発熱など)の治療を同時に行う

症状に応じた水分と電解質の適切な補正が不可欠です。

予後

脱水症の予後は、脱水の程度と対応の早さ、基礎疾患の有無によって大きく左右されます。軽度であればすぐに回復しますが、重症例では生命に関わることもあります。

良好な予後が見込める場合

  • 軽度で、すぐに水分補給ができた
  • 若年者で全身状態が良好なケース
  • 熱中症の初期段階で適切に冷却・補水ができた

注意が必要なケース

  • 高齢者や乳幼児で進行に気づかれにくい場合
  • 心臓病や腎疾患を抱えている人(補液量に制限がある)
  • 長期間の嘔吐・下痢による電解質異常を伴っている場合
  • 意識障害やショックを呈していた重症例

重症化する前に早期対応することで、多くの場合は良好な経過が期待できます。

予防

脱水症の予防には、こまめな水分補給と環境調整、体調管理が重要です。特に高温多湿な時期や運動時には、早め早めの対応が重症化を防ぎます。

日常生活での予防策

  • のどの渇きを感じる前に水分を摂る習慣をつける
  • 経口補水液やスポーツドリンクの活用(発汗が多い場合)
  • 水分を含む食品(果物、汁物)を積極的に取り入れる
  • 室温管理と適切な衣類の選択(冷房や扇風機の使用)
  • 外出時には水筒を携帯し、定期的に休憩を取る

高齢者・乳幼児への配慮

  • 定期的に声かけして水分摂取を促す
  • 介助が必要な人には飲みやすい工夫(とろみ付き飲料など)
  • 日中の活動量や体調に応じて補水量を調整する

「いつでも・どこでも・こまめに」が脱水予防の基本です。

関連する病気や合併症

脱水症はさまざまな身体機能の低下を引き起こし、他の疾患を誘発・悪化させる要因となります。早期に対応しないと、重篤な合併症を招く可能性があります。

関連する主な病態・合併症

  • 熱中症:脱水が進行して体温調節ができなくなる
  • 腎機能障害:腎血流が低下し、急性腎障害(AKI)に
  • 電解質異常:低ナトリウム血症、低カリウム血症など
  • 循環不全:血圧低下によるショック状態
  • 脳梗塞:脱水により血液が濃縮し、血栓形成を促進
  • 筋肉障害:けいれん、横紋筋融解症(重症例)
  • 便秘や食欲不振:腸管の働きが低下する

脱水症は他の病気の引き金になり得るため、早期対応と予防が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「脱水症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本救急医学会「熱中症・脱水症の対応指針」(https://www.jaam.jp/)

国立国際医療研究センター「高齢者と脱水症」(https://www.ncgm.go.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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