下痢症げりしょう
下痢症とは、通常よりも水分の多い便が頻繁に排泄される状態を指し、感染、食事、ストレス、薬剤、消化管疾患など多様な原因で起こります。急性と慢性に分けられ、原因に応じた対症療法や根本治療が必要です。特に高齢者や乳幼児では脱水に注意が必要です。
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下痢症とは?
下痢症とは、腸の内容物が通常よりも速く移動し、水分の吸収が不十分なまま排泄される状態で、一般的には「軟便」「水様便」「頻回の排便」として認識されます。便の水分量が通常の約70~75%を超えると下痢とされ、便の回数が1日3回以上になることが多いです。
下痢症は、「急性下痢症」と「慢性下痢症」に大きく分類され、急性型は多くが感染症や食あたり、一時的なストレス、薬剤などが原因で数日以内に自然軽快します。慢性型は消化管疾患、吸収不良、炎症性腸疾患などが背景にあることが多く、長期間(通常4週間以上)にわたって症状が持続します。
日常的に見られる症状ではあるものの、重症化すれば脱水や電解質異常を引き起こす危険性があるため、正確な診断と適切な対応が求められます。
原因
下痢症の原因は多岐にわたり、大きく以下のように分類されます。
急性下痢症の原因
- 感染症:細菌(カンピロバクター、サルモネラ、大腸菌など)、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)、寄生虫
- 食事性:腐敗食品、過剰な脂肪・糖質摂取、食物アレルギー
- 薬剤性:抗生物質(腸内細菌叢の乱れ)、下剤、マグネシウム含有薬
- ストレス:精神的緊張による一時的な腸の過活動
- 毒素:細菌が産生する腸管毒素など
慢性下痢症の原因
- 過敏性腸症候群(IBS):ストレスなどによる腸の運動異常
- 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病など
- 吸収不良症候群:乳糖不耐症、セリアック病、慢性膵炎など
- ホルモン異常:甲状腺機能亢進症など
- 悪性疾患:大腸がん、神経内分泌腫瘍など
原因によって治療方法は大きく異なるため、詳細な問診と検査が不可欠です。
症状
下痢症の主な症状は、便性の変化と排便習慣の異常ですが、原因によって次のような症状を伴います。
共通症状
- 水様便、泥状便、粘液便
- 排便回数の増加(1日3回以上)
- 腹痛、腹部不快感
- 腹鳴(ゴロゴロという腸の音)
- 便意切迫感(急にトイレに行きたくなる)
- 全身倦怠感、食欲不振
感染性の場合
- 発熱(38℃以上になることもある)
- 悪寒、嘔吐、筋肉痛
- 血便(細菌感染や出血性腸炎の場合)
慢性の場合
- 体重減少、栄養不良
- 貧血(鉄やビタミンの吸収障害による)
- 浮腫(低アルブミン血症による)
- 便の脂っぽさや悪臭(脂肪便)
重度の場合は、脱水症状(口渇、皮膚の乾燥、意識障害)や電解質異常に至ることがあり、特に乳幼児や高齢者では注意が必要です。
診断方法と治療方法
診断
診断は、症状の経過、排便状況、食事・薬歴、基礎疾患の有無などを基に行われ、必要に応じて以下の検査が追加されます。
- 問診:発症時期、便の性状、回数、発熱・嘔吐の有無、旅行歴や食事内容など
- 便検査:白血球、血液、寄生虫卵、細菌培養、ウイルス抗原検査など
- 血液検査:炎症反応、電解質、腎機能、栄養状態など
- 内視鏡検査:慢性化している場合や血便が続く場合に実施
- 画像検査:腹部X線、CTなどで腸管の状態を確認
治療
- 急性下痢
- 安静と水分補給(経口補水液または点滴)
- 整腸剤(乳酸菌、ビフィズス菌)
- 下痢止め薬(非感染性に限る)
- 抗菌薬(細菌感染が明らかな場合) - 慢性下痢
- 原因疾患の治療(IBD、吸収不良症候群など)
- 生活指導(食事内容、ストレス対策)
- 消化酵素、整腸剤、止瀉薬などの長期管理
治療は原因に応じた選択が必要で、むやみに下痢を止めることは避けるべき場合もあります。
予後
下痢症の予後は原因に大きく左右されますが、急性下痢症の多くは自然に軽快し、予後は良好です。水分と電解質の補正を行うことで、数日以内に回復するケースがほとんどです。
一方で、慢性下痢症は原因の特定と治療が難航することもあり、長期的な経過を要することがあります。特に炎症性腸疾患や膵外分泌不全、吸収不良症候群などが原因の場合、再燃や再発の可能性があるため、専門的な管理が必要です。
高齢者や乳幼児では、わずかな脱水や電解質異常でも重篤化しやすいため、早期の受診と慎重なフォローが求められます。また、出血や高熱、急激な症状悪化がある場合には、重篤な消化管疾患の可能性を考慮して精査が必要です。
適切な治療により、多くのケースで良好な経過が期待できます。
導が重要です。予後を良好に保つためには、再発予防と医師による継続的な経過観察が必要です。
予防
下痢症の予防には、日常生活での衛生管理と腸内環境の維持が重要です。
感染性下痢症の予防
- 手洗い・うがいを徹底(外出後、トイレ後、調理前後)
- 加熱不十分な食材や生水を避ける(特に旅行先では注意)
- 調理器具の清潔保持(まな板・包丁の使い分け)
- 乳幼児へのロタウイルスワクチン接種
- 感染者との接触後は消毒と隔離を徹底
非感染性下痢症の予防
- 暴飲暴食を避ける
- 脂肪分や乳製品の過剰摂取を控える(乳糖不耐症がある場合)
- 食物繊維の過不足に注意し、バランスのよい食事を心がける
- 過度なストレスを避け、規則正しい生活を送る
- 薬剤使用は医師の指導のもと行う(下剤や抗生物質の乱用を避ける)
腸内環境を整えるために、ヨーグルトや発酵食品の摂取も有効です。
関連する病気や合併症
下痢症は、多くの疾患や病態と関連しており、以下のような病気や合併症が見られます。
関連する疾患
- 感染性腸炎(細菌性・ウイルス性・寄生虫性)
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 潰瘍性大腸炎、クローン病(炎症性腸疾患)
- 乳糖不耐症、セリアック病(吸収不良症候群)
- 大腸がん、小腸腫瘍
- 膵外分泌不全、胆汁性下痢
- 甲状腺機能亢進症、糖尿病性腸症などの内分泌・代謝性疾患
合併症
- 脱水症、電解質異常(低カリウム、低ナトリウムなど)
- 腎機能障害:脱水が重度の場合に発症
- 低栄養、体重減少:慢性下痢による吸収不良
- 二次感染:免疫力の低下した患者では重篤な感染症へ進行することも
こうした疾患の一部として下痢が出現している可能性もあるため、軽視せず医師の診察を受けることが大切です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本消化器病学会「慢性下痢症診療ガイドライン」(https://www.jsge.or.jp/)
厚生労働省e-ヘルスネット「下痢とその対応」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
国立国際医療研究センター「感染性腸炎・慢性下痢症の診断と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)
日本小児科学会「小児の急性下痢症に関するガイドライン」(https://www.jpeds.or.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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