便秘症べんぴしょう
便秘症とは、排便の回数が少なかったり、排便が困難であったりする状態が持続する病気です。生活習慣や食事、ストレス、薬の影響などが原因となり、腹部の不快感や健康への影響を及ぼすこともあります。治療には生活改善、薬物療法、場合によっては医療機関での精密検査が必要です。
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便秘症とは?
便秘症とは、排便が3日に1回未満である、または排便に困難を伴う状態が慢性的に続く病気です。ただ単に排便回数が少ないというだけではなく、「硬い便」「排便時のいきみ」「残便感」「排便後のすっきり感がない」といった症状も便秘症に含まれます。
日本内科学会では「本来体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されており、日常生活に支障をきたすレベルである場合は治療の対象となります。
便秘症は大きく「器質性便秘(腸の病気によるもの)」と「機能性便秘(腸の動きや排便の習慣によるもの)」に分けられ、さらに機能性便秘は「慢性便秘」として分類されます。特に女性や高齢者に多く見られますが、現代では若い世代にも増加傾向があります。
原因
便秘症の原因は多岐にわたり、以下のように分類されます。
【機能性便秘】
- 食物繊維や水分の摂取不足
- 運動不足
- ストレスや生活リズムの乱れ
- 便意を我慢する習慣
- 高齢による腸の運動機能低下
- 妊娠や女性ホルモンの影響
【薬剤性便秘】
- 鉄剤、抗コリン薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗てんかん薬など
- 麻薬性鎮痛薬(オピオイド)による腸の運動抑制
【器質性便秘】
- 大腸がんや大腸ポリープによる通過障害
- 直腸瘤や骨盤底の異常
- 腸管癒着や狭窄(手術後など)
【症候性便秘】
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病による自律神経障害
- パーキンソン病、脊髄疾患などの神経疾患
これらの原因が単独または複合的に作用して、便の通過や排出が困難となることで、便秘症が慢性化します。
症状
便秘症の症状は多様で、以下のような腹部および全身の不調を伴います。
- 排便回数が週3回未満
- 硬くコロコロした便が出る
- 排便時に強くいきまないと出ない
- 排便後もすっきりしない(残便感)
- 排便に非常に時間がかかる
- 排便に指や浣腸などの手技が必要
- 腹部膨満感(お腹が張る)
- 腹痛、食欲不振、吐き気
- 便が腸内に長くとどまることによる口臭や肌荒れ
慢性便秘では、便が腸内に長期間とどまり続けることで、水分が過剰に吸収されて便が硬くなり、悪循環に陥ることがあります。また、排便時の強いいきみによって痔や直腸脱などを引き起こすこともあります。
重症例では、腸閉塞や腸管穿孔といった重大な合併症を起こすこともあり、軽視できない疾患です。
診断方法と治療方法
診断
便秘症の診断には、まず問診と身体診察が行われます。具体的には排便の頻度、便の形状、生活習慣、薬の使用歴、排便時の状況などを詳しく聞き取ります。
【検査】
- 腹部X線(単純撮影):腸内ガスや便のたまり具合を評価
- 腹部超音波・CT:腸管の構造異常や腫瘍性病変の確認
- 大腸内視鏡検査:大腸がんやポリープなど器質的疾患の除外
- 血液検査:甲状腺機能や電解質の異常評価
- 直腸肛門機能検査(排便造影・肛門内圧検査):排出障害の有無を確認
治療
- 食事療法:食物繊維の摂取(野菜、果物、海藻、豆類など)、水分摂取の強化
- 運動療法:軽い運動(ウォーキング、腹筋など)を習慣化
- 排便習慣の改善:毎日同じ時間にトイレに座る、我慢しない習慣作り
- 薬物療法:
- 浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど)
- 刺激性下剤(センナ、ピコスルファート)
- 上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチドなど)
- 腸管刺激薬や整腸剤、漢方薬
便秘のタイプに応じて薬を選ぶ必要があり、自己判断で市販薬を長期使用すると悪化を招くこともあるため、医師の指導が重要です。
予後
便秘症は、命に関わる病気ではありませんが、慢性化すると生活の質(QOL)を大きく損なう原因となります。腹部不快感や排便への不安により、外出や仕事に支障をきたす人も少なくありません。
治療により多くの患者で症状は改善しますが、原因が明確でない場合や複数の因子が重なっている場合は、長期的な管理が必要になります。
薬物療法だけに頼らず、食事や運動、排便習慣など生活全体を見直すことで、症状の軽減と再発予防が期待できます。
また、便秘症の放置により痔疾患や直腸脱、腸閉塞、憩室炎などの二次的な疾患が発生するリスクもあるため、定期的な評価と医師との連携が重要です。
予後を良好に保つには、個人の体質に合わせた継続的な治療と、根気強い生活改善が必要です。
予防
便秘を予防するには、日常生活の中で腸にやさしい習慣を継続することが重要です。
- 十分な水分を摂る(1日1.5〜2リットル目安)
- 野菜・果物・海藻・豆類など、食物繊維を意識して摂取
- 規則正しい食生活(朝食を抜かない)
- 適度な運動(ウォーキング、ストレッチ)
- 毎日決まった時間にトイレに座る習慣をつける
- 排便を我慢しない
- 過度なダイエットを避ける
- 便意に敏感になる(トイレを我慢しない)
また、ストレスや睡眠不足、長時間の座り仕事なども腸の働きを鈍らせるため、心身のバランスを整えることも予防につながります。
薬に頼る前に、まずはこうした基本的な生活習慣を見直すことが、便秘の発症を防ぐうえで最も重要です。
関連する病気や合併症
便秘症は、以下のような関連疾患や合併症と密接に関係しています。
- 痔核、裂肛:いきみや硬便によって肛門に負担がかかる
- 直腸脱:長期間のいきみによって直腸が外に出てしまう
- 大腸憩室症:便の停滞により腸管壁が袋状に突出
- 腸閉塞(イレウス):便の貯留により腸が詰まることがある
- 憩室炎:憩室に便がたまり炎症を起こす
- 大腸がん:長期的な便秘が大腸がんリスクとされることがある(ただし明確な因果関係は議論中)
- 過敏性腸症候群(IBS):便秘型IBSとして分類される
- うつ病や不安障害:便秘が精神疾患の症状の一部となることもある
慢性便秘は身体だけでなく精神面にも影響を及ぼすため、全人的なアプローチが必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本消化器病学会「胃憩室の診療ガイドライン」(https://www.jsge.or.jp/)
国立国際医療研究センター「胃憩室の診断と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)
順天堂大学医学部附属順天堂医院「上部消化管疾患」(https://www.juntendo.ac.jp/)
■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/09
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