洞不全症候群どうふぜんしょうこうぐん
洞不全症候群は、心臓の電気信号を作る洞結節の機能低下により、脈が遅くなったり不規則になる疾患です。軽度では無症状ですが、重症では失神や突然死のリスクもあり、治療にはペースメーカー植込みが有効です。
洞不全症候群とは?
洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)は、心臓の電気的興奮の起点である「洞結節」の機能が低下または停止することで、正常な心拍リズムが維持できなくなる疾患です。英語ではSick Sinus Syndrome(SSS)と呼ばれます。
洞結節は右心房の上部に位置し、一定のリズムで電気刺激を発生させ、心房から心室へと伝え、心臓を拍動させる「自然のペースメーカー」の役割を果たしています。この洞結節の機能が障害されると、脈が異常に遅くなったり(徐脈)、不規則になったり(徐脈頻脈症候群)し、血液循環に影響が出る可能性があります。
洞不全症候群は、高齢者に多くみられる不整脈の一種で、加齢による心臓の電気伝導系の変性が主な原因です。軽度の場合は無症状で経過することもありますが、重度では失神や心停止の原因となることもあり、日常生活に支障をきたすことがあります。
診断には心電図やホルター心電図などを用いて、洞結節の異常な電気活動を確認します。根本的な治療としては、必要に応じてペースメーカーを植え込むことで正常なリズムを補うことができます。
原因
洞不全症候群の原因は、洞結節自体の機能低下とそれに関連する心臓や全身の状態に分けられます。加齢に伴う変化が最も多い要因ですが、その他にもさまざまな誘因が存在します。
加齢変化(最も多い原因)
- 高齢になると心臓の電気伝導系が線維化や脂肪変性を起こし、洞結節の機能が徐々に低下
- 70歳以上で多くみられ、日本では高齢化に伴い患者数が増加している
心疾患に伴う二次性変化
- 心筋梗塞:特に右冠動脈領域に梗塞があると、洞結節への血流障害が生じる
- 心筋症、弁膜症:心筋構造の変化や心房の拡張により洞機能が低下
- 心臓手術後:心房手術や弁形成術の影響で洞結節が障害される
薬剤性
- β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリスなどの陰性変時作用をもつ薬剤により、洞機能が一過性に抑制される
電解質異常・代謝異常
- 高カリウム血症、甲状腺機能低下症などが洞機能不全を引き起こすことがある
神経調節性因子
- 過度の副交感神経緊張(迷走神経反射など)が一時的に洞結節を抑制することがある
その他
- サルコイドーシス、アミロイドーシスなどによる心臓の浸潤病変
原因に応じて治療方針が異なるため、詳細な病歴聴取と検査が必要です。
症状
洞不全症候群の症状は、心拍数の異常や不整脈により脳や全身への血流が不安定になることで生じます。症状の出現は一過性のものから慢性的なものまでさまざまです。
主な症状
- めまい、ふらつき:一時的な脳血流低下による
- 失神:数秒~数十秒の心停止が起こることで意識を失う
- 動悸:徐脈の後に頻脈が出現する徐脈頻脈症候群で特に多い
- 胸部不快感、息切れ:心拍出量の低下により、労作時に出現しやすい
- 倦怠感、集中力の低下:慢性的な低心拍数により全身の酸素供給が不十分になるため
徐脈型洞不全症候群
- 心拍数が極端に遅く(40回/分未満)、疲労感や息切れが強くなる
- 夜間や安静時に悪化することが多い
- 場合によっては心停止に至る
徐脈頻脈型洞不全症候群(Brady-Tachy Syndrome)
- 心房細動や心房粗動などの頻脈性不整脈と、洞停止や洞機能低下による徐脈が交互に出現
- 頻脈時には動悸や胸部不快、徐脈時にはめまいや失神が起こる
洞停止・洞房ブロック
- 洞結節からの電気信号が一時的に発生しない(停止)、または心房に伝わらない(ブロック)
- 心電図上でP波の欠如がみられ、症状が重度であれば意識消失に至る
無症候性の場合
- 健診や心電図モニタリングで偶然発見されることもある
- 症状がなくても長期的にはペースメーカー植込みの適応となることもある
症状が出現した時点で精密検査が必要となるため、軽視しないことが重要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診と症状の確認
・失神、めまい、動悸の出現状況や持続時間、誘因を聴取
・既往歴(心疾患、手術歴、薬剤使用)も重要 - 安静時心電図
・徐脈(心拍数50回/分未満)、洞停止、洞房ブロックなどを評価
・一過性の異常は捉えにくいこともある - ホルター心電図(24時間心電図)
・日常生活中の不整脈を記録
・徐脈や洞停止、徐脈頻脈症候群などが診断できる - イベントレコーダー
・症状が不定期な場合に使用。症状出現時に患者自身が記録 - 運動負荷心電図
・運動時に心拍が増加するかを確認し、洞結節の反応性を評価 - 薬剤投与試験・電気生理学的検査(EPS)
・洞結節の機能や房室結節伝導の状態を詳細に評価
治療
- 原因除去
・薬剤性の場合は薬の中止または変更
・電解質異常や甲状腺機能低下などは原疾患の治療 - ペースメーカー治療
・根治的な治療法として、恒久的ペースメーカーの植込みが推奨される
・植込みの適応:失神や高度徐脈、徐脈頻脈症候群でQOLが著しく低下している場合
・デュアルチャンバーペースメーカー(DDD型)が主流
・ペースメーカーにより心拍が一定に保たれ、失神や疲労感が解消される - 薬物治療(補助的)
・頻脈発作には抗不整脈薬(ベラパミル、β遮断薬など)を慎重に使用
・徐脈への薬剤治療は効果が限られるため、ペースメーカーが基本 - 心房細動合併例への対応
・抗凝固療法(ワルファリン、DOACなど)による脳梗塞予防
・必要に応じてアブレーション治療
治療の基本はペースメーカーであり、生活の質を向上させるためにも早期の対応が必要です。
予後
洞不全症候群の予後は、症状の重症度、治療の有無、および合併症の有無によって異なります。適切な治療により、多くの患者で日常生活の維持が可能です。
予後良好な場合
- ペースメーカー植込み後は心拍が安定し、失神や疲労感などの症状が大幅に改善
- 治療によって社会復帰や通常の生活が可能になる
予後不良のリスク
- 治療されない重度の徐脈:失神による外傷や突然死のリスク
- 心房細動の合併:脳梗塞や心不全のリスク上昇
- 高齢者、基礎心疾患の重症度が高い場合
再発と進行性
- 洞不全症候群は進行性であり、症状がない状態から悪化することもある
- ペースメーカーによっても頻脈成分(心房細動など)は制御できないため、併存治療が必要
QOLへの影響
- ペースメーカーにより症状が安定すれば、運動制限や労作時の不安が軽減
- 定期的なフォローと設定の調整が必要
長期管理と医療機関との連携により、安定した生活が可能です。
予防
洞不全症候群そのものを完全に予防することは困難ですが、進行の遅延や症状の出現を遅らせることは可能です。
一次予防(発症予防)
- 動脈硬化予防:高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理
- 心筋梗塞や心不全の予防:虚血性心疾患を未然に防ぐ
- 電解質異常の是正:カリウム・カルシウム・マグネシウムの異常に注意
- 副交感神経過緊張の回避:過度のストレスや過換気を避ける
二次予防(症状の進行防止)
- 定期健診や心電図での異常の早期発見
- 薬剤性要因のチェックと調整
- 心房細動や心不全の管理:症状進行の主因を防ぐ
生活習慣の見直し
- 禁煙、節酒、適度な運動、十分な睡眠
- バランスの取れた食生活と塩分制限
ペースメーカー植込み後の再発予防
- 定期的なチェックと設定調整
- 感染予防(創部管理、ワクチン接種など)
継続的なモニタリングと全身状態の管理が予防の基本です。
関連する病気や合併症
洞不全症候群は、単独で存在することもありますが、さまざまな心疾患や全身疾患と関連し、多くの合併症を引き起こします。
心疾患との関連
- 心房細動:徐脈頻脈症候群の一部で、最も頻度が高い合併症
- 心筋梗塞:右冠動脈支配領域の障害で発症しやすくなる
- 心不全:心拍出量の低下により症状が悪化しやすい
- 他の伝導障害:房室ブロックや脚ブロックの併存
不整脈関連合併症
- 心停止:洞停止や重度徐脈により
- 多形性心室性期外収縮や心室細動(まれ)
血行動態の異常による合併症
- 脳虚血:失神や意識消失による脳酸素不足
- 転倒外傷:特に高齢者では骨折や頭部外傷のリスク
ペースメーカー関連合併症
- 感染(創部感染、リード感染)
- リード脱落や不全、機器不具合による再手術
- 血栓形成(特に心房細動との合併時)
精神・社会的影響
- 失神による生活不安、QOLの低下
- 就労制限や運転制限などの社会的制限
適切な治療とフォローアップにより、合併症リスクは大幅に軽減できます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本循環器学会「不整脈診療ガイドライン」(https://www.j-circ.or.jp/)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「洞不全症候群」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
厚生労働省 e-ヘルスネット「不整脈」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
■ この記事を監修した医師
石見 成史医師 いしみ内科・心臓内科クリニック
大阪医科大学 卒業
父、祖父の代より60年以上、地元の健康を守るお手伝いをしてきました。
今まで循環器内科を専門として、心不全、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症(足の痛みや、足の傷など)を主に治療してきました。
これからは父が行ってきた診療に加え、胸の症状(動悸、息切れ、胸の痛みなど)、足の症状(足の痛み、傷など)などで困ることがあればいつでもご相談ください。
2011年3月 大阪医科大学卒業
2011年4月 大阪大学医学部付属病院 初期研修医
2012年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 初期研修医
2013年4月 大阪大学医学部付属病院 循環器内科 入局
2013年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 心臓内科
2016年4月 JCHO星ヶ丘医療センター 循環器内科
2019年7月 大阪南医療センター 循環器内科
2021年1月 医療法人 石見医院 継ぐ
- 公開日:2026/02/17
- 更新日:2026/02/17
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