ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群(WPW症候群)うぉるふ・ぱーきんそん・ほわいとしょうこうぐん

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群(WPW症候群)は、副伝導路によって心房から心室に異常な電気信号が伝わることで、不整脈を引き起こす先天的な疾患です。突然の動悸や失神を生じることがあり、治療にはカテーテルアブレーションが有効です。

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群

WPW症候群とは?

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome:WPW症候群)は、心房と心室の間に通常とは別の電気信号の通り道(副伝導路)が存在することにより、異常な電気興奮が発生して発作性の頻脈(頻拍)を引き起こす疾患です。

心臓の電気信号は通常、洞結節から房室結節を通り、心房から心室へと順序正しく伝わります。しかし、WPW症候群では副伝導路(ケント束)が存在するため、この異常経路を通じて心房から心室へ、あるいは逆方向に電気が流れることで再興奮が起こり、頻拍性の不整脈が発生します。

この副伝導路は先天的な異常であり、生まれつき存在します。小児や若年成人で初めて発症することもありますが、年齢を問わず突然の動悸やめまい、時には失神や意識消失を招くこともあります。

発作が起きていない時には無症状であることも多く、心電図検査で特徴的な波形(デルタ波)が偶然見つかることから診断されるケースもあります。治療は発作の有無や重症度によって異なり、必要に応じてカテーテルアブレーションによる副伝導路の焼灼が行われます。

原因

WPW症候群の直接的な原因は、心房と心室の間に存在する「副伝導路(accessory pathway)」の形成です。この副伝導路は本来存在しないはずの異常な電気的通路で、胎児期の発達段階において房室間の線維組織が完全に閉鎖されずに残ることで形成されます。

先天的要因

  • 副伝導路の存在は出生時からのもので、遺伝的要因も関与していると考えられています
  • 一部の家族性WPW症候群では、常染色体優性遺伝の形式が示唆されています

心疾患との関連

  • 単独で発生することも多いですが、先天性心疾患(特にエプスタイン奇形)に合併することもあります
  • 心筋の構造異常や電気伝導系の障害と関連している場合もあります

副伝導路の特徴

  • 副伝導路は心房と心室を直接つなぐため、房室結節をバイパスして心室へ早期に電気が伝わります。この結果、心電図上にデルタ波と呼ばれる特徴的な波形が現れ、PR間隔の短縮が見られます
  • 副伝導路は1本だけでなく、複数存在することもあります

誘因

  • 発作性頻拍は、運動、精神的ストレス、カフェインやアルコールの摂取、脱水などが誘因になることがあります
  • ただし、多くの例では明確な誘因がないまま突然発症します

副伝導路の有無は先天的なものであるため、完全な予防は困難ですが、診断がつけば適切な管理と治療が可能です。

症状

WPW症候群の症状は、副伝導路を介した異常な電気回路によって起こる頻拍性不整脈に由来します。発作の頻度や重症度は個人差が大きく、無症状で経過する例もあれば、日常生活に支障をきたす例もあります。

主な症状

  • 突然の動悸:最も典型的な症状で、数秒〜数時間続くことがある
  • めまい、ふらつき:心拍が速くなることで脳への血流が一時的に低下
  • 胸部不快感、胸痛:頻脈による心筋への酸素供給不足が原因
  • 息切れ:心拍数が上がることで酸素消費が増大し、呼吸が苦しくなる
  • 冷や汗、不安感:交感神経刺激による自律神経症状
  • 失神:心拍数が著しく上昇し、心拍出量が低下することで意識を失うことも

頻拍の種類と症状の関係

  • 房室回帰性頻拍(AVRT):WPW症候群で最も一般的。発作性で突然始まり、突然終わる
  • 心房細動:副伝導路を介して急速に心室へ信号が伝わり、心室細動に移行する危険がある
  • 心室細動:非常にまれだが、突然死に直結することもある

症状の出現時期

  • 乳児期や小児期に発症することもありますが、多くは思春期以降の若年成人で初発
  • 無症状のまま成人後に初めて発作を経験するケースもあります

無症候性WPW症候群

  • 定期健診やスポーツ心電図で偶然デルタ波が見つかることがあります
  • 無症状でも心房細動のリスクを伴うため、精密検査が必要です

頻拍発作が繰り返される場合や、失神・心停止の既往がある場合は、治療介入が強く推奨されます。

診断方法と治療方法

診断

  1. 心電図(ECG)
    ・デルタ波(QRS波の初期に緩やかな立ち上がり)
    ・PR間隔の短縮(0.12秒未満)
    ・QRS波の軽度広延(0.12秒以上)
  2. ホルター心電図(24時間心電図)
    ・発作性頻拍が日中に出現する例では、記録により診断がつく
  3. イベントレコーダー・植込み型ループレコーダー
    ・発作の頻度が低く、タイミングがつかめない場合に有用
  4. 心臓電気生理学的検査(EPS)
    ・副伝導路の部位、伝導速度、両方向性の伝導の有無などを詳細に評価
    ・心房細動の際の心室応答速度を確認し、危険性を判断する

治療

  1. 薬物療法
    ・発作の頻度が少ない場合や軽症例に対して用いられる
    ・ベラパミルやジルチアゼムなどのCa拮抗薬、β遮断薬、抗不整脈薬(プロパフェノン、フレカイニドなど)
    ・ただし、心房細動がある場合、副伝導路を介して心室へ急速伝導を促進する恐れがあるため注意が必要
  2. カテーテルアブレーション(高周波焼灼療法)
    ・副伝導路を焼灼し、異常な電気信号を遮断する治療法
    ・治癒率は95%以上で、再発率も非常に低い
    ・入院期間は数日程度で、身体への負担が少ない低侵襲治療
  3. 緊急治療
    ・頻拍発作が持続し、血行動態が不安定な場合には電気的除細動(カーディオバージョン)を行う
    ・アデノシン三リン酸(ATP)などを用いた薬物による停止も可能
  4. 無症候性WPWの管理
    ・心房細動が誘発されたり、失神歴がある場合にはEPSによるリスク評価を行い、アブレーションを推奨
    ・症状がない場合も、スポーツ選手やパイロットなどの職業によっては予防的治療が検討される

治療選択は年齢、症状の頻度、職業、既往歴を考慮して決定されます。

予後

WPW症候群の予後は、発作の重症度や頻度、副伝導路の特性によって異なりますが、適切な治療により予後は非常に良好です。

予後良好のケース

  • 症状が軽度で、発作の頻度が少ない
  • アブレーションにより完全治癒が得られた場合
  • 無症候性で心房細動や心室細動の既往がない場合

リスクのあるケース

  • 心房細動から心室細動への移行:副伝導路を介した急速伝導により突然死の可能性がある
  • 過去に失神や心停止の既往がある場合は高リスク群に該当

アブレーション後の再発

  • 治療成功率は高いものの、まれに副伝導路の再通が起こることがある
  • 再発例に対しても再アブレーションで対応可能

QOLへの影響

  • 発作性頻拍が生活に支障をきたすことが多く、学校や仕事への影響も大きい
  • 治療により自由な生活が可能になるケースがほとんど

スポーツや就業への配慮

  • 治療後は多くの人が運動や職業活動に制限なく復帰できる
  • ただし、心房細動既往例では注意が必要な場面もある

早期診断と適切な治療により、WPW症候群の予後は大幅に改善します。

予防

WPW症候群は先天的な副伝導路の存在が原因であるため、発症自体を予防することはできません。しかし、発作の予防や悪化を防ぐ生活習慣の工夫は可能です。

再発予防の生活指導

  • ストレスや過労を避ける
  • 十分な睡眠と休息を確保
  • 脱水を防ぐ(発作誘発のリスクあり)
  • カフェインやアルコールを控える:刺激によって発作が誘発される場合あり

薬物の管理

  • 自己判断で薬を中止しない
  • 発作が頻発する場合は抗不整脈薬の調整を主治医と相談

定期的なフォローアップ

  • 心電図モニタリングやホルター心電図による経過観察
  • 症状が再発した場合は再評価を受ける

予防的アブレーションの適応

  • 症状が軽くても、高リスク職業の方には予防的アブレーションを勧めることがある
  • 心房細動や失神歴のある無症候性WPWでは積極的な評価が必要

予後の安定化と生活の質の維持には、継続的な管理と自己理解が重要です。

関連する病気や合併症

WPW症候群は単独でも問題となることがありますが、他の疾患や合併症と組み合わさることでリスクが高まる場合があります。

頻脈性不整脈

  • 房室回帰性頻拍(AVRT):WPW症候群に最も典型的な合併不整脈
  • 心房細動:副伝導路を介して心室が異常に速く興奮し、心室細動に至るリスク
  • 心室細動:非常にまれだが、突然死に直結する重篤な状態

先天性心疾患

  • エプスタイン奇形:三尖弁の奇形に伴ってWPW症候群が高率で合併
  • その他の心房中隔欠損などの構造的心疾患

電解質異常や代謝疾患

  • 低カリウム血症、甲状腺機能亢進症などが発作の頻度を高める要因となる

薬物との相互作用

  • 一部の抗不整脈薬は心房細動時の危険性を増すことがあり、誤った使用に注意

精神的影響

  • 発作時の不安感やパニック状態
  • ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群予測不能な発作により日常生活の制限やQOL低下

WPW症候群は、診断と治療が的確であれば良好な経過が期待できる疾患であり、関連疾患への注意と予防的介入が重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本不整脈心電学会「WPW症候群・上室性頻拍ガイドライン」(https://new.jhrs.or.jp/)

MSDマニュアル プロフェッショナル版「WPW症候群」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)

厚生労働省 e-ヘルスネット「不整脈」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

■ この記事を監修した医師

石見 成史医師 いしみ内科・心臓内科クリニック

大阪医科大学 卒業

父、祖父の代より60年以上、地元の健康を守るお手伝いをしてきました。
今まで循環器内科を専門として、心不全、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、下肢閉塞性動脈硬化症(足の痛みや、足の傷など)を主に治療してきました。
これからは父が行ってきた診療に加え、胸の症状(動悸、息切れ、胸の痛みなど)、足の症状(足の痛み、傷など)などで困ることがあればいつでもご相談ください。

2011年3月 大阪医科大学卒業
2011年4月 大阪大学医学部付属病院 初期研修医
2012年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 初期研修医
2013年4月 大阪大学医学部付属病院 循環器内科 入局
2013年4月 大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター) 心臓内科
2016年4月 JCHO星ヶ丘医療センター 循環器内科
2019年7月 大阪南医療センター 循環器内科
2021年1月 医療法人 石見医院 継ぐ

  • 公開日:2026/02/17
  • 更新日:2026/02/17

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