小児ぜんそくしょうにぜんそく
小児ぜんそくは、気道の慢性炎症によって繰り返す咳や喘鳴、呼吸困難を起こす病気です。アレルギーが関与することが多く、発作は夜間や早朝に起こりやすい傾向があります。吸入ステロイドなどの継続治療と生活環境の整備が予防と管理の鍵です。
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小児ぜんそくとは?
小児ぜんそくとは、気道の慢性的な炎症を背景として、繰り返し咳や喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー音)、呼吸困難などの症状を引き起こす病気です。医学的には「気管支喘息」と呼ばれ、アレルギー反応やウイルス感染などが誘因となって気道が狭くなり、発作が生じます。
日本では乳幼児期から学童期にかけての発症が多く、全体の約10%前後の子どもが一度は喘息様症状を経験するとされています。多くは成長とともに軽快しますが、一部は思春期以降まで持ち越すこともあります。
小児ぜんそくは発作がないときは無症状であることも多いため、適切な診断と日常的な管理が重要です。治療の基本は、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイドと、発作時に使用する気管支拡張薬の使い分けです。
発作の重症度や発現頻度に応じて治療方針を決定し、保護者と医師が連携しながら長期管理を行うことで、発作を予防し、生活の質を高めることができます。
原因
小児ぜんそくの原因は多因子性であり、気道の過敏性と慢性炎症にアレルギー反応や環境要因が加わることで発症します。
主な要因
- アレルギー体質(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、家族歴など)
- 気道の過敏性(刺激に対して気道が狭くなりやすい)
- ウイルス感染(風邪をきっかけに発作が起こることが多い)
- ダニやハウスダスト、動物の毛、花粉などのアレルゲン
- タバコの煙(受動喫煙含む)
- 天候や気圧の変化、運動、強い感情刺激
遺伝的要素
- 親や兄弟に喘息やアレルギー疾患がある場合、発症リスクが高まる
気道の特徴
- 小児の気道は狭く、炎症や粘液分泌によってさらに狭くなりやすいため、喘息症状が出やすい
その他の要因
- 低出生体重児、早産児
- 母親の妊娠中の喫煙
- 室内環境(湿気、カビなど)
アレルギーと環境要因が重なったときに症状が悪化することが多く、原因を特定し、それを回避・管理することが発作予防に直結します。
症状
小児ぜんそくの症状は、気道の慢性炎症と過敏性によって起こるもので、以下のような特徴的な症状があります。
主な症状
- 咳(特に夜間〜早朝、運動後に出やすい)
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー音)
- 呼吸困難(息がしにくくなる)
- 胸部圧迫感(胸が苦しいと訴えることもある)
- 痰(乳幼児では咳払いができずに嘔吐することも)
発作時の症状
- 激しい咳と喘鳴
- 呼吸が速く浅くなる(頻呼吸)
- 肩を使った呼吸(努力性呼吸)
- 顔色不良、口唇の紫色(チアノーゼ)
- 話せない、食べられないなどの重症サイン
日常でみられる軽微な兆候
- 風邪を引くと必ず咳が長引く
- 運動後に咳き込む
- 夜間に咳で目が覚める
- 朝起きたときに咳が出る
症状の時期と変動
- 春・秋の季節の変わり目に多くみられる
- 風邪やアレルゲン曝露後に数日して発作が出現する
重症度分類
- 軽症間欠型:年に数回の軽い発作
- 軽症持続型:月に1回以上の軽度発作
- 中等症持続型:週に1回以上の発作
- 重症持続型:ほぼ毎日症状がある
こうした症状を見逃さず、発作の早期対処と予防策を取ることが、重症化を防ぐポイントです。
診断方法と治療方法
診断
- 問診
・症状の発現時期、頻度、家族歴、アレルギー歴、誘因などを詳細に確認 - 聴診
・喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼー音)があるかを聴取
・発作が軽度または発作間欠期には聴こえないこともある - 呼吸機能検査
・学童以上で可能。ピークフローメーターで呼気流速を測定し、変動の有無を評価
・可逆性(気管支拡張薬で改善するか)を調べることが重要 - アレルギー検査
・血液検査でIgE、好酸球、RAST(特異的IgE)などを測定
・原因アレルゲンの特定と回避策の立案に活用 - 胸部X線検査
・肺過膨張や合併症(肺炎、無気肺など)の有無を確認
治療
- 長期管理薬(発作予防)
・吸入ステロイド薬(ICS):第一選択。炎症を抑える根本治療薬
・ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA):飲み薬として補助的に使用
・長時間作用型β2刺激薬(LABA):ICSとの併用で使用 - 発作時の治療薬(頓用)
・短時間作用型β2刺激薬(SABA):サルブタモールなど、吸入で即効性
・ステロイド内服または点滴:中等症以上の発作時に使用 - 吸入療法のポイント
・年齢に応じてスペーサーやマスク付きデバイスを使用
・吸入後はうがいを徹底(口腔内副作用の予防) - 入院管理
・中等症〜重症発作では酸素投与、点滴治療、持続吸入などを行う
・生命に関わる重症発作(ステータス喘息)は集中治療が必要
発作の頻度や重症度に応じて治療ステップを調整し、症状が安定した状態(コントロール良好)を維持することが目標です。
予後
小児ぜんそくの予後は比較的良好で、多くの子どもは成長とともに症状が軽快、あるいは消失します。特に学童期以降に発症し、適切に管理された症例では成人喘息への移行が防がれることもあります。
良好な予後の要因
- 早期からの継続的な治療と吸入療法の導入
- 発作の頻度が少なく、軽症である
- アレルゲン管理や生活環境の整備が徹底されている
- 成長とともに気道の発達が進む
悪化や慢性化のリスク
- 頻回の重症発作
- 吸入ステロイドの導入が遅れた場合
- 環境因子(喫煙、ダニ、カビなど)への曝露が継続
- アレルギー疾患の合併が多い場合(鼻炎、皮膚炎など)
成人喘息への移行
- 約30〜50%は成人後も喘息症状が続くとされる
- 小児期に重症持続型であった場合、成人期まで持ち越すことがある
予後を良好に保つには、医療者・保護者・学校が連携し、子どもの自己管理能力を育てることも重要です。
予防
小児ぜんそくの発症予防には、遺伝的な素因に加えて、環境要因への配慮が不可欠です。また、発症後も重症化や再発を防ぐ生活管理が求められます。
発症予防
- 妊娠中・出産後の受動喫煙を避ける
- 母乳育児(アレルギーリスクの低減に寄与)
- 室内の清掃・換気によるダニ・ハウスダストの除去
- 過剰な抗菌環境を避け、適度な自然環境との接触を保つ
再発・増悪の予防
- アレルゲン回避(ダニ、ペット、花粉など)
- 感染予防(手洗い、うがい、マスク)
- ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌)
日常生活での工夫
- 風邪を引いたときは早めに医師に相談
- 運動制限は不要だが、準備運動や発作予防薬の使用を徹底
- 環境整備(カーペットの撤去、空気清浄機の導入など)
適切な予防策を継続することで、発作の頻度と重症度を抑え、日常生活への支障を最小限にとどめることができます。
関連する病気や合併症
小児ぜんそくは単独でも管理が必要な病気ですが、以下のような関連疾患や合併症にも注意が必要です。
アレルギー疾患との合併
- アレルギー性鼻炎:上気道の炎症が下気道に影響し、喘息を悪化させる
- アトピー性皮膚炎:皮膚バリア機能の障害がアレルギーの感作につながる
- 食物アレルギー:重症型では喘息の悪化因子になる
感染症との関連
- ウイルス性呼吸器感染:RSウイルス、ライノウイルス、インフルエンザなどが誘因
- 細菌感染による増悪:中耳炎、副鼻腔炎の合併で発作が悪化することがある
心理社会的な合併症
- 発作による不安、恐怖心
- 学校生活への支障(欠席、体育制限など)
- 過干渉や自己肯定感の低下
早期から合併症を含めた包括的な管理を行うことで、喘息そのもののコントロールだけでなく、心身の健やかな発達を支えることが可能となります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息診療ガイドライン」(https://www.jspaci.jp/)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「小児喘息」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「小児気管支喘息」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。
日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2025/07/16
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