肺炎はいえん
肺炎は、肺に細菌やウイルスなどが感染して炎症を起こす疾患で、発熱や咳、呼吸困難を伴います。重症化すると命に関わることもあり、高齢者では特に注意が必要です。抗菌薬による治療が中心で、予防にはワクチン接種や生活習慣の改善が有効です。
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肺炎とは?
肺炎とは、肺に細菌、ウイルス、真菌などの病原体が感染して炎症を起こす疾患です。気管支よりも奥の肺胞と呼ばれる部分に炎症が生じることで、酸素と二酸化炭素の交換機能が障害され、咳や発熱、呼吸困難といった症状が現れます。
肺炎は子どもから高齢者まで幅広い年齢層に発症しますが、特に高齢者や基礎疾患のある人、免疫力が低下している人では重症化しやすく、命に関わることもあります。日本では、肺炎は死因の上位に位置しており、医療上の重大な疾患とされています。
原因や発症の背景によって、肺炎は以下のように分類されます。
- 市中肺炎(一般的な生活環境で感染する肺炎)
- 院内肺炎(入院中に発症する肺炎)
- 誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が気道に入り込むことによって発症)
- 非定型肺炎(マイコプラズマなど特殊な病原体による肺炎)
治療は原因に応じた抗菌薬の使用が基本ですが、症状や重症度によっては入院が必要になることもあります。
原因
肺炎は、さまざまな病原体によって引き起こされます。最も一般的なのは細菌性肺炎ですが、ウイルスや真菌、異物の誤嚥なども原因になります。
細菌性肺炎
- 肺炎球菌:最も頻度が高く、急性の発熱と咳、痰を伴う
- インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス:高齢者に多い
- 黄色ブドウ球菌、クレブシエラなど:重症化しやすい
非定型肺炎
- マイコプラズマ:若年者に多く、乾いた咳が続くのが特徴
- クラミドフィラ:咽頭痛や頭痛を伴いやすい
- レジオネラ:水回りの設備が感染源となり、全身症状が強く出る
ウイルス性肺炎
- インフルエンザウイルス、RSウイルス、新型コロナウイルス(COVID-19)などが原因
- 重症化しやすく、二次的な細菌感染を併発することもある
誤嚥性肺炎
- 加齢や脳血管障害、神経疾患などで嚥下機能が低下し、食べ物や唾液が気道に入って炎症を起こす
- 常在菌による慢性的な肺炎として経過することが多い
真菌性肺炎
- 免疫力が低下した状態で、カンジダやアスペルギルスなどが原因となる
- がん治療中や臓器移植後の患者で注意が必要
発症の背景によって原因菌の種類や治療薬の選択が異なるため、正確な診断が重要です。
症状
肺炎の症状は、病原体や患者の年齢・健康状態によって異なりますが、典型的には次のような症状が見られます。
全身症状
- 発熱(38℃以上の高熱が多いが、高齢者では微熱や無熱も)
- 倦怠感
- 悪寒、震え
- 食欲不振
- 頭痛、筋肉痛(特に非定型肺炎で見られる)
呼吸器症状
- 咳(湿性または乾性)
- 痰(黄色や緑色、膿性痰)
- 胸痛(深呼吸や咳で悪化することが多い)
- 息切れ、呼吸困難
- 呼吸音の異常(聴診でラ音や捻髪音)
高齢者に特徴的な症状
- 発熱や咳などの典型的症状が乏しいことがある
- せん妄(意識の混乱)や脱水、体動困難などが先に現れる
- 「なんとなく元気がない」「食事をとらない」などの変化に注意
非定型肺炎の特徴
- 比較的軽い症状でも画像上は肺炎が認められることがある
- 空咳が長く続き、全身倦怠感を伴う
- 若年者に多く、集団感染(学校、職場)を起こしやすい
誤嚥性肺炎の症状
- 明確な発熱や咳がないまま、徐々に呼吸状態が悪化
- 夜間や食後の咳込み、むせがきっかけになることが多い
肺炎の症状はかぜやインフルエンザと似ており、特に高齢者や基礎疾患を持つ人では進行が早いため、早期の医療機関受診が重要です。
診断方法と治療方法
診断
- 問診と診察
・発熱、咳、痰、呼吸困難などの有無
・基礎疾患の有無(糖尿病、COPDなど)、誤嚥のリスク - 聴診
・肺の異常音(ラ音、捻髪音)を確認 - 胸部X線検査
・肺の炎症を確認するための基本検査
・白い陰影があることで肺炎を疑う - 胸部CT検査
・X線では見逃される小さな病変を詳細に観察可能
・特に免疫不全患者や非定型肺炎の診断に有用 - 血液検査
・白血球数、CRP、プロカルシトニンなど炎症マーカーの上昇
・腎機能、電解質、血糖などの全身状態の評価 - 微生物検査
・喀痰培養、血液培養により病原体を同定
・マイコプラズマ抗体、レジオネラ尿中抗原などの迅速検査も
治療
- 抗菌薬治療(細菌性肺炎)
・肺炎球菌:アモキシシリン、セフトリアキソンなど
・非定型肺炎:マクロライド系(クラリスロマイシン)、ニューキノロン系
・院内感染や重症例では、広域スペクトラムの抗菌薬が必要 - 対症療法
・解熱鎮痛薬、去痰薬、咳止めなどの使用
・水分補給、安静、栄養管理 - 入院治療の適応
・高齢者、基礎疾患のある患者、呼吸困難が強い場合
・SpO₂が低い、意識障害、重度の脱水や電解質異常があるとき - 誤嚥性肺炎の対応
・嚥下訓練、口腔ケアの徹底
・食事形態の調整(ミキサー食、ゼリー食など)
・必要に応じて経管栄養の導入
治療開始から数日で改善することが多いですが、症状が長引く場合や悪化する場合は、再評価と治療方針の見直しが必要です。
予後
肺炎の予後は、年齢や基礎疾患の有無、病原体の種類、治療の開始時期によって大きく異なります。若年者で基礎疾患のない軽症例では、適切な抗菌薬治療によって数日〜1週間で回復します。
良好な予後が期待される場合
- 早期受診と早期治療
- 軽症の市中肺炎
- 非定型肺炎(マイコプラズマなど)は自然軽快することも多い
注意が必要な症例
- 高齢者(特に75歳以上)
- 心不全、糖尿病、慢性呼吸器疾患、腎不全などの合併症がある場合
- 誤嚥性肺炎や院内肺炎は再発・慢性化のリスクが高い
- 免疫力の低下した状態(がん治療中、糖尿病、ステロイド使用など)
再発・慢性化を防ぐために
- 治療終了後も咳や息切れが残ることがあるため、経過観察が重要
- 肺炎を契機にADL(日常生活動作)が低下し、寝たきりになる高齢者もいる
予後を良好に保つには、早期発見と医療機関での適切な治療が不可欠です。
予防
肺炎は予防可能な疾患であり、特に高齢者や基礎疾患を持つ人にとっては予防が重要です。
ワクチン接種
- 肺炎球菌ワクチン(PPSV23、PCV13):高齢者や慢性疾患のある人に推奨
- インフルエンザワクチン:インフルエンザからの二次感染予防
- 新型コロナウイルスワクチン:重症肺炎のリスク軽減
生活習慣の改善
- 禁煙(喫煙は気道粘膜を傷つける)
- 十分な栄養と水分補給
- 適度な運動で免疫力を保つ
- 口腔ケア(特に誤嚥性肺炎の予防に効果的)
感染対策
- 手洗い、うがい、マスクの着用(特に風邪やインフルエンザの流行時期)
- 人混みを避ける、高齢者施設では集団感染対策が重要
ワクチンと日常の予防行動を組み合わせることで、肺炎の発症・重症化を防ぐことが可能です。
関連する病気や合併症
肺炎は、以下のような病気と合併したり、他疾患を引き起こす原因にもなります。
呼吸器系の合併症
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):肺炎によって増悪することがある
- 気管支拡張症:慢性的な感染が肺構造に影響する
- 膿胸:肺炎の炎症が胸膜腔に広がり、膿がたまる
- 肺膿瘍:肺内に膿のかたまりを形成する
心血管系の合併症
- 心不全の増悪
- 不整脈の誘発
- 敗血症性ショック:全身性の炎症反応が循環障害を引き起こす
全身性合併症
- 敗血症:感染が血流に乗って全身に広がる重篤な状態
- 腎不全、肝機能障害などの多臓器不全
- 脳症:高齢者ではせん妄、認知機能低下のきっかけになる
これらの合併症を未然に防ぐためには、肺炎の早期診断と治療が極めて重要です。また、高齢者やハイリスク群では定期的な健康管理と予防策の徹底が求められます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 日本呼吸器学会「肺炎診療ガイドライン」(https://www.jrs.or.jp/)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「肺炎」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肺炎」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
■ この記事を監修した医師

石井 誠剛医師 イシイ内科クリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒後、済生会茨木病院で研修を行い、日本生命病院で救急診療科、総合内科勤務。
その後、近畿中央呼吸器センターで勤務後、西宮市立中央病院呼吸器内科で副医長として勤務。
イシイ内科クリニックを開設し、地域に密着し、 患者様の気持ちに寄り添った医療を提供。
日本生命病院では総合内科医として様々な内科診療に携わり、近畿中央呼吸器センターでは呼吸器の専門的な治療に従事し、 西宮市立中央病院では呼吸器内科副医長として、地域医療に貢献。
抗加齢学会専門医として、アンチエイジングだけを推し進めるのではなく、適切な生活指導と内科的治療でウェルエイジングを提供していくことを目指している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2025/07/16
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