尿失禁にょうしっきん

尿失禁は、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう排尿障害です。加齢や出産、前立腺疾患、神経疾患などさまざまな原因によって起こり、種類ごとに適した治療法があります。生活の質に大きく影響するため、早期の対応が重要です。

尿失禁とは?

尿失禁とは、本人の意思に反して尿が漏れてしまう状態を指します。年齢や性別を問わず起こりますが、高齢者や出産経験のある女性に多くみられます。尿が漏れるタイミングや原因によって分類され、それぞれに適した治療が必要です。

主に「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」の4つがあり、混合型も存在します。症状は日常生活に支障をきたし、外出や仕事、睡眠に悪影響を及ぼすことがあります。

患者の多くは恥ずかしさから相談をためらいがちですが、治療やトレーニングで改善が可能なケースも多いため、医療機関への相談が勧められます。

原因

尿失禁はさまざまな要因によって起こります。骨盤底筋のゆるみ、膀胱や尿道の機能異常、神経の障害、内服薬の副作用などが関与しており、年齢や性別、基礎疾患に応じて原因が異なります。

主な原因別分類

  • 腹圧性尿失禁:骨盤底筋のゆるみ(出産、加齢、肥満など)によって、咳やくしゃみ、運動時に尿が漏れる
  • 切迫性尿失禁:膀胱が過敏になり、突然強い尿意を感じてトイレまで間に合わない
  • 溢流性尿失禁:前立腺肥大などにより膀胱内に尿が溜まりすぎてあふれる
  • 機能性尿失禁:運動障害や認知機能の低下で、トイレに行けない、操作が難しい

その他の誘因

  • 利尿薬、睡眠薬、抗うつ薬などの薬剤
  • 脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病性神経障害
  • 便秘による膀胱圧迫

原因を正確に評価し、個別に対応することが大切です。

症状

尿失禁の症状は、尿が漏れる状況や頻度、量、随伴する感覚などによって異なります。それぞれのタイプに特有の症状があるため、診断と治療の手がかりになります。

腹圧性尿失禁の主な症状

  • 咳、くしゃみ、笑い、重いものを持ち上げたときなどに尿が漏れる
  • 運動中や階段の昇降時に漏れる
  • 突然の尿意は感じにくい

切迫性尿失禁の主な症状

  • 急な尿意があり、トイレまで間に合わない
  • 冷たい水や水の音で尿意を感じやすい
  • 夜間頻尿を伴うことがある

溢流性尿失禁の主な症状

  • 尿が常に少しずつ漏れる
  • 残尿感、排尿困難、尿勢の低下がある
  • 膀胱がパンパンになっても尿意を感じにくい

機能性尿失禁の主な症状

  • トイレの場所が分からない、操作できない
  • 歩行困難でトイレに間に合わない

それぞれの症状の背景には異なる病態があるため、正確な判断が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診:尿漏れの頻度、状況、生活への影響、既往歴や内服薬
  • 排尿日誌:排尿回数や尿失禁のタイミングを記録
  • 身体診察:骨盤底筋の評価、神経学的所見
  • 尿検査:感染や血尿の有無を確認
  • 残尿測定:超音波で排尿後の残尿を確認
  • 尿流動態検査(ウロダイナミクス):膀胱と尿道の圧を測定
  • パッドテスト:尿漏れ量の客観的評価

治療

  • 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操):腹圧性尿失禁に有効
  • 行動療法:膀胱訓練、トイレ誘導(切迫性・機能性に有効)
  • 薬物療法:
     - 抗コリン薬、β3作動薬(切迫性)
     - α遮断薬(溢流性に用いることも)
  • 外科的治療:中部尿道スリング手術など(重度の腹圧性)

患者の状態に応じた多面的な治療が求められます。

予後

尿失禁は命に関わる疾患ではありませんが、生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、予後管理が重要です。原因に応じた治療を継続すれば、多くの場合、症状の改善やコントロールが可能です。

予後が良好なケース

  • 骨盤底筋トレーニングや行動療法が早期に効果を示した場合
  • 薬物療法で過活動膀胱の症状が改善した場合
  • 手術が成功し、尿漏れが消失した場合

注意が必要なケース

  • 高齢や神経疾患を伴う場合
  • 排尿障害の背景に進行性疾患(認知症や脊髄病変など)がある場合
  • 治療が中断され、社会活動や心理的状態が悪化する場合

再発や進行を防ぐためにも、定期的な経過観察が望まれます。

予防

尿失禁は完全に防げない場合もありますが、生活習慣の改善や筋力トレーニングなどにより、発症のリスクを減らすことができます。特に中高年以降の女性では予防的対応が効果的です。

予防のためにできること

  • 骨盤底筋トレーニング:毎日の実践で筋力を維持
  • 適切な体重管理:肥満は腹圧上昇の原因に
  • 便秘の予防:骨盤底への負担を減らす
  • 定期的な排尿:膀胱の過伸展を避ける
  • 利尿作用のある飲料(カフェイン、アルコール)の摂取を控える
  • トイレの環境整備:高齢者や身体障害者では特に重要

また、尿失禁の初期症状を放置せず、早めに医療機関を受診することも予防の一環です。

関連する病気や合併症

尿失禁は、他の泌尿器疾患や神経系疾患と密接に関連しており、場合によっては合併症や重篤な基礎疾患の初発症状となることもあります。

関連疾患

  • 前立腺肥大症、神経因性膀胱、脊髄損傷、糖尿病性神経障害
  • 脳血管障害(脳梗塞、脳出血後)
  • パーキンソン病、アルツハイマー型認知症
  • 膀胱炎、膀胱腫瘍、尿道狭窄

合併症

  • 皮膚炎、尿路感染症(おむつ湿潤による)
  • 社会的孤立、抑うつ、睡眠障害
  • 転倒リスク(夜間頻尿やトイレへの移動中)

医学的な合併症だけでなく、心理・社会面への影響も大きいため、包括的なケアが求められます。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「尿失禁」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本泌尿器科学会「尿失禁診療ガイドライン」(https://www.urol.or.jp/)

日本排尿機能学会「排尿障害の診断と治療」(https://japanese-continence-society.or.jp/)

国立国際医療研究センター「高齢者の排尿トラブル」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

住谷 昴一医師

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2026/02/19

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