クッシング症候群くっしんぐしょうこうぐん

クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に分泌されることで発症する疾患です。肥満、高血圧、骨粗鬆症、糖尿病など多くの代謝異常を引き起こします。原因に応じた的確な診断と治療が必要です。

クッシング症候群とは?

クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンの一つであるコルチゾールが体内で過剰に分泌されることにより、多彩な症状を呈する病態を指します。コルチゾールはストレス応答、血糖・脂質代謝、免疫抑制などに関与するホルモンであり、過剰な状態が持続すると全身の臓器に悪影響を及ぼします。

クッシング症候群は、内因性と外因性に分けられます。内因性では、脳下垂体腫瘍が副腎を刺激するACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を過剰に産生する「クッシング病」が最も多く、他には副腎腫瘍や異所性ACTH産生腫瘍が原因となることがあります。外因性では、長期間にわたるステロイド薬の使用が原因になります。

男女比では女性に多く、特に20〜40代に好発します。

原因

クッシング症候群の原因は、コルチゾールの過剰分泌や体内での持続的なホルモン作用によります。発症メカニズムに応じて以下のように分類されます。

内因性

  • クッシング病:下垂体腺腫がACTHを過剰に分泌し、副腎を刺激してコルチゾールが増加
  • 副腎腫瘍:副腎皮質の良性または悪性腫瘍からコルチゾールが自律的に分泌される
  • 異所性ACTH産生腫瘍:肺小細胞がん、胸腺腫瘍などがACTHを産生する

外因性

  • 医原性(ステロイド性)クッシング症候群:プレドニゾロンなどのステロイド薬を長期使用した場合に発症
  • 吸入薬、関節注射なども原因となることがある

いずれもコルチゾール濃度が高まることが共通しており、原因を正確に診断することが治療方針の決定において重要です。

症状

クッシング症候群は多くの臓器系統に影響を与えるため、症状は非常に多彩です。進行とともに特徴的な外見の変化や代謝異常が顕著になります。

外見上の特徴

  • 満月様顔貌:顔が丸くなる
  • 中心性肥満:体幹部や腹部が太るが、手足は比較的細い
  • 水牛肩(肩甲部の脂肪沈着)
  • 皮膚の菲薄化と紫斑(毛細血管の脆弱化による)
  • 多毛(女性の顔面や体毛)
  • にきび、吹き出物

代謝・内分泌症状

  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症
  • 骨粗鬆症、骨折のリスク増加
  • 筋力低下、特に大腿四頭筋
  • 経異常、性機能低下
  • 易感染性(免疫抑制)
  • 精神症状(うつ、不眠、情緒不安定、認知障害)

これらの症状が徐々に進行するため、見逃されやすく、長期にわたる不調として扱われることがあります。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診・身体診察:満月様顔貌、肥満の分布、皮膚所見などを確認
  • ホルモン検査
    - 血中・尿中コルチゾール値:高値を示す
    - 夜間唾液コルチゾール検査(通常は夜間に低下するが、異常に高値)
    - デキサメタゾン抑制試験:外因性抑制の有無を確認
    - 血中ACTH測定:ACTH依存性かどうかを鑑別

画像検査

  • 頭部MRI:下垂体腺腫の確認(クッシング病疑い)
  • 腹部CT:副腎腫瘍の評価
  • 胸部CT・PET-CT:異所性ACTH産生腫瘍の検索

治療

  • 下垂体腫瘍:経蝶形骨的手術による摘出
  • 副腎腫瘍:副腎摘出術
  • 異所性腫瘍:原発腫瘍の切除または化学療法
  • 医原性の場合:ステロイド薬の漸減と代替療法
  • 対症療法:高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などの管理

病因に応じた根本治療と、全身状態の管理が重要です。

予後

クッシング症候群の予後は、原因の特定と治療の成功によって大きく左右されます。早期に治療が行われれば、ホルモン値の正常化とともに症状も改善しますが、長期間放置された場合は合併症の進行や後遺症のリスクが高まります。

良好な予後が期待できるケース

  • クッシング病や副腎腫瘍で手術が成功し、ホルモン値が正常化
  • 軽度で早期に発見された場合
  • 内科的治療でコルチゾールが適切に管理されている

注意が必要なケース

  • 異所性ACTH産生腫瘍や悪性腫瘍が背景にある場合
  • 糖尿病や高血圧、骨粗鬆症などの合併症が重症化している場合
  • 再発例や術後のホルモン補充が不十分な場合

長期的なフォローアップと定期的なホルモン評価が必要です。

予防

クッシング症候群のうち、内因性のものは明確な予防法がないものの、外因性(医原性)に関しては薬剤使用の注意によって予防が可能です。

外因性クッシング症候群の予防

  • ステロイド薬の適正使用:最小必要量・最短期間の使用を心がける
  • 定期的な副作用チェック(体重増加、血糖上昇、皮膚症状など)
  • 突然の中止を避け、医師の指示で徐々に減量する
  • 他剤への切り替えを検討する(必要に応じて)

早期発見の工夫

  • 特徴的な身体変化(顔貌や肥満分布)に気づいたら受診
  • ホルモン値の定期検査(特にステロイド長期使用中)
  • 自己判断でのステロイド薬使用を避ける

医師の指導を守り、定期的なチェックを受けることが大切です。

関連する病気や合併症

クッシング症候群は慢性的な高コルチゾール状態が続くため、多くの全身性合併症を伴いやすく、これらが長期予後に大きく影響します。

主な関連疾患・合併症

  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症:動脈硬化のリスク増加
  • 骨粗鬆症、病的骨折:骨代謝の異常による
  • 心血管疾患:心筋肥大、虚血性心疾患など
  • 免疫抑制:感染症(肺炎、尿路感染など)への抵抗力低下
  • うつ症状、不安、不眠
  • 月経異常、不妊(性腺抑制)
  • 皮膚萎縮、創傷治癒遅延
  • 緑内障、白内障:ステロイド使用が長期化した場合

これらの管理と治療を並行して行うことが重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「クッシング症候群」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本内分泌学会「副腎疾患診療ガイドライン」(https://www.j-endo.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「副腎の病気」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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