単純性びまん性甲状腺腫たんじゅんせいびまんせいこうじょうせんしゅ

単純性びまん性甲状腺腫は、甲状腺が全体的に腫れる良性疾患で、ホルモン機能は正常のことが多く、無症状で経過する場合もあります。特に思春期や妊娠期の女性に多くみられ、自然に改善することもありますが、定期的な経過観察が必要です。

単純性びまん性甲状腺腫とは?

単純性びまん性甲状腺腫は、甲状腺全体が均等に腫大する良性の疾患で、甲状腺ホルモンの分泌機能は正常のまま保たれている状態を指します。「思春期びまん性甲状腺腫」とも呼ばれ、特に成長期の若年女性に多くみられる傾向があります。

結節や腫瘍を伴わず、腫大は左右対称的で、触診や視診によって頸部の腫れとして発見されることが一般的です。甲状腺ホルモンに異常がないため、代謝異常の症状(動悸、体重減少、倦怠感など)は現れにくく、学校健診や定期健診で偶発的に見つかることが多いのも特徴です。

自然軽快する例もありますが、腫大が進行する場合や悪性腫瘍との鑑別が必要なケースもあるため、継続的な経過観察が求められます。

原因

単純性びまん性甲状腺腫の原因は多くの場合明確ではありませんが、一部ではホルモン需要の変化やヨウ素の摂取状況が関与していると考えられています。器質的異常が見られないため、「機能正常型甲状腺腫」として扱われます。

考えられている主な原因

  • 思春期:成長や性ホルモン分泌の変化により、甲状腺へのホルモン需要が増加する
  • 妊娠期:胎児や母体の代謝要求増大により一時的な腫大が起こることがある
  • 軽度のヨウ素不足:地域差があり、過不足どちらでも甲状腺に影響を与える
  • 一過性のTSH刺激:ストレスや急性疾患などで一時的にTSHが上昇する場合がある
  • 遺伝的要因:家族内発症が報告されることもある

環境や生理的変化に応じて一時的に起こる反応性腫大であることが多く、必ずしも病的とは限りません。

症状

多くの症例で無症状のまま経過しますが、甲状腺が一定以上に腫大すると圧迫感や違和感を伴うようになります。見た目や触診でのしこりが唯一の異常所見であることも多く、代謝異常に伴う自覚症状は通常見られません。

主な症状

  • 頸部前面の腫れ(しこり感)
  • のどの違和感、異物感
  • 嚥下しづらさ、軽い飲み込みにくさ
  • まれに呼吸時の圧迫感
  • 美容的・心理的な不快感(特に若年女性)

その他の臨床所見

  • 甲状腺ホルモン値(TSH、FT3、FT4)は正常であることが多い
  • 甲状腺の腫大は左右対称でびまん性(全体的)
  • 甲状腺表面は平滑で、結節や硬結を認めない

進行しても症状が軽微なため、検診などで早期に発見されることが多いです。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診と視診・触診:首のしこり、圧迫感の有無、発症時期などを確認
  • 血液検査
    - 甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)は通常正常範囲内
  • 甲状腺超音波検査(エコー)
    - びまん性腫大の確認、結節や石灰化の有無を調べる
  • 必要時
    - 抗甲状腺抗体の測定(橋本病やバセドウ病との鑑別)
    - 甲状腺シンチグラフィー(まれに行う)

治療

  • 原則として経過観察
    - 無症状かつ甲状腺機能正常であれば治療不要
    - 数か月~1年ごとの定期検査(ホルモン値・エコー)で経過観察
  • ホルモン補充療法(必要時)
    - 腫大が進行し見た目や圧迫症状が強い場合、TSHを抑える目的でチラージンを少量投与
  • 外科的治療は原則不要だが、腫大が著明な場合に限り検討される

ほとんどの場合、薬物や手術を要さずに経過を見ることができます。

予後

単純性びまん性甲状腺腫の予後は極めて良好で、自然に縮小することも多くみられます。甲状腺機能が保たれていれば、日常生活や発育に支障をきたすことはほとんどありません。

予後が良好なケース

  • 思春期に発症した腫大が成人後に自然に縮小
  • 妊娠期の一過性腫大が出産後に改善
  • 甲状腺ホルモン値が正常で、症状が軽微な場合

注意が必要なケース

  • 腫大が急速に進行している
  • 触診や画像検査で結節や石灰化、硬結を認める場合(悪性の可能性)
  • 数年以上にわたり腫大が持続し、圧迫症状が強くなる場合

必要に応じて専門医による定期的なフォローアップが勧められます。

予防

明確な予防法はありませんが、日常生活で甲状腺に負担をかけない習慣や早期発見のための健康管理が重要です。

予防的な取り組み

  • 適切なヨウ素摂取:過剰摂取(海藻のとりすぎ)を避け、適正量を維持
  • バランスの良い食事と生活習慣の改善
  • 過度なストレスや疲労を避ける
  • 成長期や妊娠期の女性は定期的な甲状腺チェックを
  • 喉の違和感があれば自己判断せず医療機関を受診

早期発見のポイント

  • 学校や職場の健康診断を活用
  • 家族に甲状腺疾患がある場合は注意深く観察する

自然経過で治癒することもあるため、予防よりも早期発見とモニタリングが大切です。

関連する病気や合併症

単純性びまん性甲状腺腫自体は良性疾患ですが、経過中に他の甲状腺疾患や合併症に移行することもあるため、注意が必要です。

関連する主な疾患・合併症

  • 橋本病(慢性甲状腺炎):数年後に自己免疫反応が始まり移行する場合がある
  • バセドウ病:甲状腺機能亢進症へと移行する可能性はごくまれにある
  • 結節性甲状腺腫:長期的な刺激により結節を形成することがある
  • 甲状腺機能異常:加齢や体調変化によってホルモン分泌に変化が生じる可能性
  • 美容的・精神的影響:見た目の変化によりストレスを感じることもある

いずれも定期的な診察と検査により早期対応が可能です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「甲状腺腫大」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本甲状腺学会「びまん性甲状腺腫の診療」(https://www.japanthyroid.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「甲状腺の病気」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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