双極性障害そうきょくせいしょうがい

双極性障害は、気分が高揚する「躁状態」と落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。症状の波が大きく、日常生活に支障をきたすことがあります。適切な薬物療法と精神療法によって、安定した生活を送ることが可能です。

双極性障害とは?

双極性障害は、以前は「躁うつ病」と呼ばれていた精神疾患で、気分が異常に高揚する「躁状態」と、深く落ち込む「うつ状態」を繰り返す特徴があります。これらの状態は、通常の気分の変動を大きく超えており、仕事や学業、家庭生活、人間関係などに重大な影響を及ぼします。

双極性障害には、「双極I型」と「双極II型」の2つのタイプがあります。双極I型は明らかな躁状態と重度のうつ状態を経験するのに対し、双極II型は軽躁状態と呼ばれる比較的軽い躁状態とうつ状態を繰り返します。

この疾患は若年成人期に発症することが多く、生涯にわたって再発する可能性があるため、継続的な治療と自己管理が必要です。

原因

双極性障害の明確な原因は解明されていませんが、遺伝的要因や脳内の神経伝達物質のバランス異常、環境的ストレスなどが複合的に関与していると考えられています。

遺伝的な素因が強く、家族に気分障害を持つ人がいる場合は発症リスクが高くなることが知られています。また、脳内のセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きが不安定になることで、感情や行動のコントロールが難しくなるとされています。

一方、過度のストレスや不規則な生活リズム、睡眠不足、アルコールや薬物の乱用などが発症のきっかけや再発要因となることもあります。

このように、双極性障害は生物学的要因と環境的要因が複雑に関係して発症する多因子疾患と考えられています。

症状

双極性障害の主な特徴は、躁状態とうつ状態という相反する症状を周期的に繰り返すことです。それぞれの状態で現れる症状は大きく異なります。

躁状態の症状

  • 気分が異常に高揚する、または怒りっぽくなる
  • 自分は能力が高く素晴らしい人間だと感じる
  • 多弁で止まらなくなる
  • 睡眠時間が短くても疲れない
  • 次々とアイデアが出てきて会話がまとまらない(観念奔逸)

うつ状態の症状

  • 気分が著しく落ち込む
  • 興味や喜びを感じなくなる
  • 疲れやすく、活動意欲が低下する
  • 食欲や睡眠の変化
  • 自分を責める思考(罪悪感)
  • 死にたい気持ち

気分が安定している「寛解期」もありますが、再発を繰り返す傾向が強く、早期の対応が重要です。

診断方法と治療方法

診断

診断は精神科医による詳細な問診と観察によって行われます。躁状態やうつ状態のエピソードの有無、持続期間、症状の程度、生活への影響などを総合的に評価します。家族歴や既往歴、現在の生活状況も重要な診断の手がかりとなります。

うつ病との鑑別が難しいことがあり、躁状態のエピソードを見逃すと誤診につながる可能性があります。そのため、家族や周囲の人からの情報も参考にされることがあります。

治療

  • 気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなど):再発予防と気分の安定化に使用されます
  • 抗精神病薬(クエチアピン、オランザピンなど):躁状態や混合状態に対して有効です
  • 抗うつ薬:うつ状態に対して処方されることもありますが、単独使用は躁転リスクがあるため慎重に行われます
  • 心理社会的治療(認知行動療法、家族療法、生活リズム指導など)

薬物治療と精神療法を併用しながら、再発予防を目指すのが基本方針です。

予後

双極性障害は慢性的な経過をたどる病気ですが、適切な治療と生活管理によって、安定した状態を長く維持することが可能です。ただし、再発のリスクは高く、特に治療の中断や自己判断による服薬の中止は危険です。

再発を防ぐためには、症状が軽快している時期でも治療を継続し、生活リズムを整えることが重要です。睡眠不足やストレスは再発の引き金になるため、日々のセルフケアが予後の鍵を握ります。

また、早期に適切な診断と治療を受けることが、症状の悪化や社会生活への影響を抑えるうえで重要です。特に双極II型はうつ状態が主体で気づかれにくいため、注意深い経過観察が求められます。

再発を繰り返すごとに病状が悪化しやすいため、主治医との信頼関係を築き、長期的に安定した治療を続けることが大切です。

予防

双極性障害は完全に予防することは難しいものの、再発予防や悪化防止に向けた対策を講じることは可能です。生活習慣の改善とストレス管理が最も重要なポイントです。

予防のために大切なのは、まず規則正しい生活リズムを維持することです。特に睡眠時間の確保は重要で、徹夜や時差のある生活は躁状態やうつ状態を引き起こすリスクがあります。

ストレスが増えたときは早めに医師に相談し、必要に応じて薬の調整を行うことが再発の防止に役立ちます。アルコールや違法薬物の使用も再発リスクを高めるため、避ける必要があります。

また、本人だけでなく家族も病気に対する理解を深め、サポート体制を整えることが予防につながります。自分の初期症状に気づき、早めに対処することも再発を防ぐ重要な方法です。

関連する病気や合併症

双極性障害は他の精神疾患や身体疾患と合併することが少なくありません。特にうつ状態が長引く場合や、再発を繰り返す場合には、他の疾患の可能性も念頭に置いて診療が行われます。

精神的合併症

  • 不安障害(パニック障害、社交不安など):うつ状態との併発が多く見られます
  • ADHD(注意欠如・多動性障害)ASD(自閉スペクトラム症):若年発症の場合に合併しやすいとされています
  • 薬物依存やアルコール依存:気分変動を自己調整しようとした結果、依存が生じやすくなります
  • 境界性パーソナリティ障害:気分の不安定さや衝動性が似ており、鑑別が必要です

身体的合併症

  • 糖尿病や高血圧:気分安定薬や抗精神病薬の副作用によるものです
  • 肥満や代謝症候群:薬の影響や活動量の低下が関与します
  • 心疾患や睡眠時無呼吸症候群:生活習慣や薬剤性の影響が考えられます

これらの合併症に注意しながら、総合的な医療管理が求められます。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

心療内科・精神科の診療を受ける

クラウドドクターは24時間365日対応。 ストレスなどで日常生活に支障が出る前に。

現在の待ち時間

3

クラウドドクターの
オンライン診療

クラウドドクターのオンライン診療

クラウドドクターでは、問診内容を元に全国から適したドクターがマッチングされ、あなたの診療を行います。診療からお薬の処方までビデオ通話で受けられるため、お忙しい方にもおすすめです。

  • 24時間365日
    いつでも診療OK
  • 保険診療が
    ご利用可能
  • お近くの薬局やご自宅で
    お薬の受取り可能

■ 参考・出典

日本精神神経学会「双極性障害診療ガイドライン」(https://www.jspn.or.jp/)

日本うつ病学会「双極性障害の治療指針」(https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/)

国立精神・神経医療研究センター(https://www.ncnp.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

関根 要子医師 デイリースキンクリニック

帝京大学 医学部 卒

帝京大学医学部卒業後、精神科の常勤医師として日本医科大学と根岸病院にて従事。患者様のこころに寄り添いながら適切な医療を提供。その後、医療スキンケアという、日々の気持ちを左右する美容医療の分野へ転身。痩身専門クリニックや、美容のクリニックでの勤務を経て、DAILYSKINCLINICの医師を担当。

精神科医の専門医であることから、患者様の気持ちに寄り添う診療を心がけております。
ご体調のことや、不安なことがあればなんでもご相談ください。

  • 公開日:2025/07/22
  • 更新日:2025/07/22

即時、あなたに適した
ドクターをマッチング

現在の待ち時間

3