うつ病うつびょう

うつ病は、気分が著しく落ち込む精神疾患で、日常生活に重大な支障をきたします。原因はストレス、体質、脳内化学物質の変化など多因子が関与し、症状は心身に広がります。治療は薬物療法や心理療法、休養を組み合わせて行います。

うつ病とは?

うつ病(うつ状態を含む)は、憂うつな気分が続くとともに、意欲の低下や興味の喪失、身体症状を伴う精神疾患であり、「気分障害」の一種に分類されます。数日間の気分の落ち込みとは異なり、長期間にわたり症状が持続し、日常生活や社会生活に著しい支障をもたらします。

うつ病では、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の働きが低下していると考えられており、心理的・社会的なストレスや遺伝的素因、体質的な要因などが複雑に関係しています。

発症年齢は20代〜50代が多いものの、近年は小中学生から高齢者まで、全年齢層で増加傾向にあります。女性は男性の約2倍かかりやすいとされており、ホルモンバランスの変化や社会的役割の違いも影響しています。

軽症から重症まで症状の幅があり、自殺リスクとも深く関連しているため、早期発見と治療が極めて重要です。薬物療法と心理社会的アプローチの両輪で、症状の改善と再発予防を目指します。

原因

うつ病の原因はひとつではなく、生物学的要因、心理的要因、社会的要因が複雑に絡み合っています。これを「生物-心理-社会モデル」として理解するのが一般的です。

生物学的要因

  • 脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)のバランス異常
  • 脳の機能異常(前頭前野や扁桃体など)
  • ホルモンの変動(更年期、甲状腺機能異常、月経周期など)
  • 遺伝的要素:家族にうつ病患者がいると発症リスクがやや高くなる傾向

心理的要因

  • 完璧主義、自己評価の低さ、過度な責任感
  • 幼少期のトラウマや愛着障害
  • ストレス耐性の低下

社会的要因

  • 職場・学校での過度なストレスや人間関係の問題
  • 失業、離婚、死別などの喪失体験
  • 育児や介護による負担
  • 孤独、経済的困窮

これらの要因が単独または複数重なって、発症の引き金となります。また、同じようなストレス状況にあっても発症する人としない人がいることから、個人の性格や脳の感受性の違いも関与していると考えられます。

症状

うつ病の症状は、心理的・認知的なものと、身体的なものに大別されます。典型的なうつ病では以下のような症状が見られます。

精神症状(気分・思考に関連する症状)

  • 抑うつ気分(気分が沈み続ける、気持ちが重い)
  • 興味や喜びの喪失(趣味や好きだったことに無関心)
  • 意欲の低下(何もしたくない、動くのが億劫)
  • 集中力や判断力の低下(考えがまとまらない、決断ができない)
  • 自責感や罪悪感(「自分が悪い」と感じる)
  • 将来への悲観的な見通し(「どうせうまくいかない」と思う)
  • 死にたい気持ち、自殺念慮

身体症状(身体に現れる異常)

  • 不眠(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)
  • 食欲の低下または過食
  • 体重の減少または増加
  • 疲労感、全身倦怠感(朝が特に辛い)
  • 動悸、息苦しさ、胸の圧迫感
  • 便秘、胃の不快感
  • 性欲の低下、月経不順

日内変動

朝に症状が強く、夕方になると軽快することが多い(典型的な「メランコリー型」)

高齢者のうつ病では

「だるい」「眠れない」「食欲がない」といった身体症状が中心となり、本人が気分の落ち込みを訴えないこともあります

子どもや若者のうつ病では

イライラ、不登校、成績低下、家庭内暴力などで気づかれることがあります

うつ病の症状は個人差が大きく、特に初期には風邪や胃腸障害と間違われることもあるため、注意深い観察が必要です。

診断方法と治療方法

診断方法

うつ病の診断は、主に精神科医や心療内科医による問診と診察に基づいて行われます。

1. 問診・面接
症状の内容、持続期間、生活への影響、既往歴、家族歴などを丁寧に聞き取ります

2. DSM-5診断基準(アメリカ精神医学会)に基づき
抑うつ気分または興味・喜びの喪失のいずれかを含む9項目中5つ以上が2週間以上続いていること

3. 他の疾患との鑑別
甲状腺疾患、脳腫瘍、ビタミン欠乏、薬剤性などを除外するため、必要に応じて血液検査や画像検査も行われます

治療方法

1. 薬物療法(抗うつ薬)
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):副作用が比較的少ない
・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):意欲改善に効果
・四環系・三環系抗うつ薬:作用は強いが副作用が多いため慎重に使用
・NaSSA:眠気を伴いやすいが不眠改善に有用
・抗不安薬や睡眠薬:症状に応じて補助的に処方される

※効果が出るまでには2〜4週間を要し、自己判断で中断しないことが大切です

2. 精神療法
・認知行動療法(CBT):思考のゆがみを見直し、行動の変化を促す
・対人関係療法、支持的精神療法など

3. 環境調整・休養
・仕事や学校を一時的に休むことも回復には必要
・家族や職場の理解・支援が治療の一環となります

4. その他の治療
難治例では電気けいれん療法(ECT)や経頭蓋磁気刺激療法(TMS)なども検討されます

治療方針は症状の程度、年齢、生活環境に応じて個別に決定され、医師との継続的な関係性が回復のカギを握ります。

予後

うつ病の予後は個人差が大きいですが、適切な治療を受ければ多くの人が回復します。初発のうつ病では6か月〜1年での寛解が期待され、約7〜8割の人が日常生活に復帰できるとされています。

しかし、以下の点に注意が必要です。

  • 再発率が高い:うつ病の約半数は再発するとされ、再発を繰り返すことで慢性化することがあります
  • 初発で重症だった場合、治療に時間がかかることもある
  • 再発を防ぐためには、症状が改善しても一定期間は治療を継続することが重要(維持療法)

慢性化すると、生活機能の低下、就労の困難、人間関係の悪化などが生じ、社会的な支援も必要になります。高齢者では認知症と誤診されることもあるため、早期の鑑別が大切です。

本人の努力だけでなく、周囲の理解とサポート、職場・学校での配慮が再発防止と社会復帰の支えになります。

予防

うつ病を完全に防ぐことは難しいですが、発症のリスクを下げる生活習慣や早期対応が予防に役立ちます。

日常でできる予防策

  • 規則正しい生活リズムを保つ(早寝早起き、朝日を浴びる)
  • バランスの取れた食事(特にビタミンB群、トリプトファン)
  • 適度な運動(ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど)
  • ストレスマネジメント(趣味、リラクゼーション、呼吸法)
  • 人とのつながりを大切にする(孤立を防ぐ)

早期対応のポイント

  • 「最近元気がない」「話がネガティブ」などの変化に気づいたら早めに専門機関へ
  • 学校・職場のメンタルヘルス対策や相談窓口の活用
  • 家族が変調に気づいた場合、受診を促すことも重要

特に発症経験のある人は、予兆に気づいた時点で医療機関に相談し、早期治療を行うことで再発のリスクを抑えることができます。

関連する病気や合併症

うつ病は単独で発症することもありますが、以下のような疾患と合併することが多く、治療にあたっては包括的な対応が求められます。

精神的な合併症

  • 不安障害(パニック障害、全般性不安障害など)
  • 強迫性障害
  • 摂食障害(過食症、拒食症)
  • アルコール・薬物依存症
  • 双極性障害:初期はうつ状態のみで発症することもある(誤診に注意)

身体的な合併症

  • 慢性疼痛(頭痛、肩こり、線維筋痛症など)
  • 心疾患、脳血管障害(うつ病が発症リスクを高める)
  • 糖尿病、高血圧など生活習慣病のコントロール悪化
  • 月経前症候群(PMS)や更年期障害

社会的影響

休職、退職、家庭内不和、経済的困窮など、社会生活への波及が大きい

うつ病をきっかけに生活の多方面に支障を来すことがあるため、早期診断・治療、周囲の理解と支援体制の構築が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本うつ病学会「うつ病治療ガイドライン」(https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/)

 MSDマニュアル プロフェッショナル版「うつ病」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)

厚生労働省 e-ヘルスネット「うつ病」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

関根 要子医師 デイリースキンクリニック

帝京大学 医学部 卒

帝京大学医学部卒業後、精神科の常勤医師として日本医科大学と根岸病院にて従事。患者様のこころに寄り添いながら適切な医療を提供。その後、医療スキンケアという、日々の気持ちを左右する美容医療の分野へ転身。痩身専門クリニックや、美容のクリニックでの勤務を経て、DAILYSKINCLINICの医師を担当。

精神科医の専門医であることから、患者様の気持ちに寄り添う診療を心がけております。
ご体調のことや、不安なことがあればなんでもご相談ください。

  • 公開日:2025/07/07
  • 更新日:2025/07/07

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